Melodyne と Auto-Tune の2段構え

1週間ほど前にPro Audio Filesで「 Auto-Tune のクリエイティブな使い方」とする記事が上がってて「今ほとんど使ってないからいいや」とスルーしたんですが、最近よく読むSonicScoopがこの記事に反応していて、もしや何か面白いことでも記されていたのかと振り返って読みました。

Antares Autotune: How to Creatively Use Auto-Tune Vocal Tuning
 Antares Autotune: How to Creatively Use Auto-Tune Vocal Tuning
How to Get Creative with Auto-Tune — SonicScoop
 How to Get Creative with Auto-Tune — SonicScoop

前置き

Pro Audio Filesの記事中で見かける少し紛らわしい単語はどうもこういう意味らしい。

  • abuse : 一歩踏み込んだ使い方をする。
  • delivery : ラップにおける(いわば)調子。
  • print : (僕はStudio Oneの取説で初めて見たのだけど)特定トラックを別トラックに書き出すこと。動的な再生状態を静的な状態に転写すること。
    » how to print to track in pro tools – Gearslutz

ボーカリストの理解度次第

MelodyneかAuto-Tuneかって二択のように扱われやすいけれど択一的である必要はそもそもなく、記事筆者であるMatthew Weissの場合、Melodyneでの補正後の音声をAuto-Tuneにくぐらせるという技法を用いたそう。
といっても、この技法は万能ではなくて、今回はフィーチャーしてるAkon自身がAuto-Tuneの徹底した使い手であることが前提になっているとか。
そして言えらく、達人はAuto-Tuneがどのように動作するかを想定してdelivery(上記)すると。これはわりと大事なポイント。

The chain for both vocals was Melodyne first in graphical mode just getting the notes a bit closer to center, and then Auto-Tune with a pretty fast retune speed to create the effected tone. The only place the Auto-Tune really ever varies tonally is when Akon does his faster note runs. When he does this I prefer to let the Auto-Tune glitch up a little because I like the texture it creates.

(概訳)ボーカル2人とも、Melodyneをチェーンの先頭に挿しピッチセンターに少しだけ近づけ、そしてAuto-Tuneは少し速めの反応速度にしてある。Akonが早いパッセージで歌ったときだけAuto-Tuneが反応することになる。それを踏まえてAuto-Tuneの反応速度をオートメーションで速めてやると例のロボチックな声になる。

記事後半部分も押さえてまとめるとこういう理屈のよう。

ピッチ補正ソフトは日進月歩で進化してるけれども、狙い通りの結果を得るにはまだ人力での修正が必要で、ノート単位でフォルマントを調整しなきゃならない局面もあります。

また僕もふだんから言ってますが、Printしてやっと位相など効果が固定するケースがあって(Auto-Tuneに限らず、ランダム要素を持ったエフェクトなんかは特に)、空間的な配置つまりオケより手前に聞こえたり奥まって聞こえたり、リバーブの掛かり方が変わる点は意識しないといけません。

こうした固定化を活用して、元トラックと混ぜてフランジングやフェイジングといった効果を得ることもできる、と大体ここまでが元記事の内容で、SonicScoopも「そうね」と反応しています。

一般的な手法たりうるのか

Vocal Doublerの無料配布のニュースを見たときに、元の歌がよほど下手じゃない限り、補正前と補正後を重ねればダブラー効果出せるやんという記事書きました。

ただ、ま、MelodyneもAuto-TuneもDry/Wetバランスを持ってるわけじゃないので、重ねるにはいわゆるPrintを行う必要があります。また三重、四重にダブリングを膨らますならやっぱりしんどい(Vocal Doublerは二重以上できるのかな?)。
とりあえず補正前と補正後や、別々の補正ソフト同士の結果をパラレルにして出力するって手法は往々にしてありそう。

ちなみに以前こんな記事もありました(デヴィッド・ボウイの音源は、なぜ音程が外れているのか? | 情熱クロスロード~プロフェッショナルの決断 | ダイヤモンド・オンライン)。
あと、これもついでに(Daft Punkの Autotune 観 – makou’s peephole)。

余談1:Melodyneの操作

僕自身がMelodyneを使いこなせてるんだろうかと疑わしくなって、ふとYouTubeやWeb記事を漁ってみたら、こういう(5 VOCAL TUNING MISTAKES (How to Use Melodyne 4) – YouTube)のが引っかかりました。
比較的大手のチュートリアル動画で、メリスマのような節回しは少しずつピッチを調整してやるのがいいと指南してくださってますが、コメント欄でMelodyneのメーカーであるCelemonyから直接ツッコミが入っているように、こういうのはスライスを追加して処理するのが圧倒的にラクですと。
Melodyneは発音の切れ目(日本語の場合1文字ずつ)でスライスする傾向が強いようで、メリスマみたいに一つの発音を維持して音程が動く節回しは1つのBlobsにまとめられやすいので、後々の編集をラクにする意味でも人力でスライスを追加するのが妥当でしょう。
あと、ついでに、ピッチを微調整するならdetuneの値を上下させるよりBlobsをつかんでOptionキーでドラッグするほうがラク。

補正ソフトをリアルタイムに切り替えられたらなあ

Melodyne最新版を導入した直後くらいの時期に、Blobsの継ぎ目で音程が極端に変化(いわゆるグリッチ)するケースがあるのが気になって、MelodyneとLogicのflexの2段構えで作業してたことがあります。罠が多くて地味に厄介でしたけど。
ソフトごとに得手不得手あること考えると、「ここはMelodyne、ここはAuto-Tuneで」ってふうにスイスイ処理を切り替えられるといいんですがね。現状だと、多少なりともサウンドクオリティが犠牲になってしまうので、おいそれとは出来ません。

あと、そういえば滅多にないことですが、ビブラートを人力で足すときにMelodyneとAuto-Tuneを連結することありますね。
ちなみに既存のビブラートを補正する手法はこの辺り(Logic Pro : flex pitchでビブラートを整える – makou’s peephole)。

僕がやるピッチ補正の2段構えはこの程度がいいとこですわ。

余談2:時間か質か

最後にまた余談。
先月イベントで足を運んだときに、海外と都内でのお仕事経験のあるエンジニアさんの話を聞く機会があって、東京だとスピードと数重視で仕事をこなしていくのでたとえばピッチ補正しなきゃならん場面で音感のないスタッフは一生のし上がれないとか、一方海外だと一工程に数時間かけてまで良さを求めるとか言ってましたね。
早さもクオリティも大事ではあるものの、基本的にはどっちがいいと言い切れないし、ましてどっちか捨てなきゃいけないってもんではないと思いますがね。

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