Tonsturmというメーカーから FRQ Shift 、まんまFrequency Shifterのエフェクトプラグインがややお高めの$129(ただしイントロ価格 $89)でリリースされました。
Frequency Shifterはそこまで一般的なエフェクターではないものの、Logic純正のRingShifter、Ableton Liveの純正Frequency Shifterのほか、Native InstrumentsのAbsynthやMassiveにも備わっていますね。
効果としては文字通り、鳴っている音色の周波数を変えちゃうもの。
Pitch Shiftが周波数に対する掛け算であるのに対してFrequency Shifterは足し算で、対数の世界である音楽とは正直あまり相性がよくない。
見やすくなるように和音をサイン波で鳴らしてみました。Pitch Shiftだと和音は和音としてオクターブ上がっていってくれますが、Frequency Shiftはオクターブ上げるごとに和音内の音程感覚が狭まっていきます。
楽器の音や声も倍音ってものを持ってて、ここに示した和音と似たような解釈ができるわけで、Pitch Shiftだと倍音列が維持されたまま音程が変わってくれるため音の特徴が維持されるのですが、Frequency Shiftだと倍音列が伸縮されて変質してしまいます。早い話、この世のものではない楽器の音や声になってしまうということ。
が、スネアのピッチを変えたり、ふつうのシンセのシーケンスをMinimal Technoチックなループに変換したり、左右でわずかに値を変えてステレオ感を出したり、金属的な打撃音の軽重を調整したり、ふつうに喋る声をエイリアンっぽくしたり、と出番がないわけでもない。
Tritik “Moodal”(Tritik “Moodal” – makou’s peephole)やSoundspot製品(Soundspot “KickBox”, “VoxBox” – makou’s peephole)のような見た目をしているせいで損をしていますが、実際はBYOME(Unfiltered Audio “BYOME” – makou’s peephole)のようなガチな製品。ただ、あそこまで自由すぎではありません。Frequency Shifterであるという縛りがあるお蔭でだいぶ使いやすい。
基本機能の時点で使う場を選びがちなFrequency Shifterのその機能を掘り下げてどうすんだ、ってのが最初の印象だったんですが、実際にデモで各機能をいじっていくと、FlangerやPhaser等では近年忌避されがちなFeedbackをむしろ半ば必須要素としつつ、それぞれなるほど活用/冒険しどころのある機能を厳選して提供してくれている印象を受けます。
いじればいじるほど、ぶっ壊れた方向にも持っていければ、ささやかな雰囲気醸成方向にも持っていける、と。
残念ながら製品紹介動画では効果をハッキリ見せるために全体的にエグい音がフィーチャーされちゃってますが、絶妙な設定にこそ旨味があると僕は考えます。
この手のうねり系エフェクトが逆相を生まないかって点ですけど、完全にシャットアウトすることは難しいものの他のエフェクターに比べると逆相は出にくい部類なんで、適正な設定値を探りつつ使うのが妥当かと思います。
一点要望があるとすれば、ダブルクリックやShift+クリック、Option+クリックによる値のリセットが利くようにしてほしいってこと(追記:当初の動作チェックでは何度試してもリセットが利かなかったのですが、Gustavが本記事に「利くよ!」とコメントを残してくれました。現在、ダブルクリックでパラメーターリセットが利くことを確認できています)。