Soundspotから KickBox と VoxBox と、個人的にタイムリーなプラグインがリリースされています。
トライアル版で試してみました。
KickBox
KickBoxのほうは文字通りキックのサウンドを調整するもので、ローをエクステンドさせたり、muddyなゾーンと称されるローミッドをカットしてスッキリさせたり、アタック感をクッキリさせたり、結構いいのでは?と思いました。
アタック感つまりCLICKとされているのはトランジション的にアタックを強めるのではなく帯域を持ち上げるもの。
持ち上げるといえばWARMTHもCLICKもですが、いずれも歪ませずに持ち上げる仕組みは手軽でイイと思います。
ノブが、ノブの姿をしていながらクリックで切り替わるのはどうかと思うけど。
画面収録を貼っておきます (音が片方に寄ってしまってるのは脳内補正いただけると有り難い)。
VoxBox
一方VoxBoxは…。
今年、3声くらいのハモりをクワイヤのように聞かせたいというミックスの注文があって苦戦したのを思い出し、これなら実現できるのでは?と期待してインストールしてみたのですが、結論から言うと単なるシンプルなステレオのショートエコーだったため期待外れ。
そもそも1つのオーディオデータに後付けでバラつきを与えて重ねるっていうのは意外と手間がかかるんですよね。
Vocal Doubler って…要る…?
再生時間を保ったままオーディオデータのピッチを変えるってことが(極めて優秀なMelodyneといえど)劣化加工なので原則行いませんし、コーラスのような周期的な変化にせよアンサンブルのような複雑な変化にせよ、元の声質やアーティキュレーションに揺らぎが加わるわけではないので厚みのシミュレーションにはなりにくく、少なくともデジタル処理ではペラペラの音になってしまいます。
とはいっても、まったく無意味ってわけでもないので下の動画でも使ったiZotopeのNectarのDoublerで散らしました。
音質の劣化こそ避けられませんが、帯域を調整した上でピッチにランダム要素を加えられるものなので多少ダマシになります。
個人作「名称未設定アルバム」に収録した「片側通行」のRYUNKAさんの歌を素材として用いました。
ちなみにこのNectarのウィンドウに見えるPitchとはピッチ補正機能なのだけど、歌の分離をよくするために歌だけ442Hzにチューニングするために使っています。
処理負荷としてはVoxBoxのほうが圧倒的に軽いので簡易的に使うならよさそう。
つまりポップスのボーカル用のツールというよりは、EDMにボーカルサンプルを貼り付けて軽く演出するためのものってとこか。
それにしては、この程度の機能の製品が定価7000円ってのは暴利過ぎ。
かといって、いずれのエフェクトもそうですが、KickBoxだからKickにかける、VoxBoxだから歌にかけるというのは全くつまらないわけで、たとえばDeEsserがドラムのMixにも使えたり、Compressorがディストーションとしても使えたり、超ショートディレイがEQとしても使えたりするように、KickBoxやVoxBoxの本来の目的と異なる有効な使い道を見つけるところからがめくるめく官能の世界の始まりなので、アンインストールしないまでも頭の片隅に入れておいて「そうだ、あれ使ってみよう」って思い立つのをしばらく待ってみてもいいかなと思います。