この間マルチバンド・プロセッシングのことを書いたすぐあとくらいに、musicradarサイトが特集記事を上げました。

定番のMultiband Compressor(以下’マルチコンプ’)を中心に下記14種類がまとめられています。
※(メーカーサイト)と記したもの以外はmusicradarサイト内のレビュー記事へのリンク
- iZotope Ozone
- UAD Precision Multiband(メーカーサイト)
- Blue Cat Audio MB-7 Mixer 2
- Joey Sturgis Tones Transify
- Softube Transient Shaper
- iZotope Alloy 2
- FabFilter Pro-MB
- FXpansion Maul
- MeldaProduction MMultiBandRhythmizer(メーカーサイト)
- PSP Audioware VintageWarmer 2
- MeldaProduction MMultiBandGranular
- Sonnox Envolution(メーカーサイト)
- FabFilter Saturn
- Softube Drawmer 1973
知ってるものも知らないものもあれば、持っておきたいものも自分には100年早いってものもあります。
帯域別処理のこと
まず、帯域別に処理を加えることをマルチバンド・プロセッシングといって、定番がマルチコンプ。つまりマルチコンプだけがマルチバンド・プロセッシングというわけではありません。
実際、FabfilterのSaturnやFXpansionのMaulのようなマルチバンド・ディストーション等がリストアップされてますしね。
ちなみにOhmforceのOhmicide(アーカイブ)もなかなか凶悪な音を生むマルチバンドディストーションですが、知名度や安定性、あとアナログ機器のシミュレーション度合いが低かったり、メーカー自体が生きてるのか死んでるのかよくわからん、って理由で選外になったと思われます。
ポイントは帯域を分けること、分ける帯域(スプリットポイント)が操作できること。
くだんのGaffelは帯域を分けた上で連動するもので、マルチバンド・プロセッシング用のユーティリティ・プラグインに過ぎないから、musicradarのリストのコンセプトからすると選外といえるでしょう。
エフェクトチェーンのこと
マルチコンプをはじめとしたマルチバンド・プロセッシングって、全部1つのプラグインの中で処理しちゃいますよね。なぜなら、それが便利だから…。
「それがマルチバンド処理の定石」と妄信させられてたようだと気付かせたくれたのがGaffelで、ガーンという気分のまま綴ったのが先の記事。
iZotope OzoneやAlloy、あとリストにないものでいうとNectar、これらは特に内部でエフェクトチェーンを組んでチェーンの順序も変えられる、いわばギター用のマルチエフェクターみたいなもので、非常に便利。
便利であるがクリエイティブとは言い難い。
本質としては、Neutronもそうだけど、便利になるぶん妥協を強いられてるとも言えます。
Nectarはボーカル処理用プラグインで、個人的にはDeEsserの機能が不満で、Nectar → LogicのDeEsser → Nectarとつなぐことがあります。
最近Melodyneがアップデートされて素晴らしく性能が上がりましたが、音を流し込んだあとにNectar内で少し重めの処理を追加するとMelodyneの同期がズレるなど、DAWとプラグインとの兼ね合いで「ん?」って現象が起きることもあります。
つまりエフェクトチェーンできるプラグインは、便利だけど信用しきれるものではないし、クリエイティブ性を問われると二の句が継げない。
プラグインチェーンを別処理するためのメタプラグインがあってもいいと思います。
ギター用マルチエフェクターで、たとえばコンプ、フェイザー、アンプシミュとチェーンを組んだけど本当はフェイザーは誰が作ったかもわからん謎の自作エフェクターのほうが好きで困ったな、と思わされる感覚に近いかもしれない。
もっとも一時そういう、インサートI/Oのついたマルチエフェクターがあれば…と思ったもんだけど、最近のはついてるみたいね。あんま興味沸かなくてチェックしてませんでしたが。
それを踏まえて
Gaffelをバスごとに挿すのはいいとして、そのGaffelのうちたとえば1つだけGaffelより前のスロットに別の何かエフェクトを差し込むことも出来るんだと思いました。それもOKと考えると妄想は膨らみます。
そういや、ディレイに付属するローパスとハイパスのパラメーターをいじると極端にフィードバックの長さが変わっちゃうから、フィードバックを保つためにDelayの前や後にEQを挟むことで妥協する、なんてのも発想の感覚としては近いかもしれません。
Gaffelに対してもう1点、高く評価したことがあって、これは直接な話じゃないのだけど、ここ2,3年くらいで急速にDTMの概念が廃れてガチ勢が抜き出てきた、このタイミングで登場したこと。
Neutronやワンノブ系のある種ワンタッチでインテリジェントなツールにシフトしていきそうな空気の中、猛烈にシンプルな発想のツールとして出てきたことに驚きました。
それも、年配の苦言混じりとは違って、超ナチュラルに出してきよったんですよねえ。