envatotuts+に、Mastering for Vinyl つまりレコード(バイナル)でのマスタリングについてのHowto記事が載っています。
![Mastering for Vinyl](https://i0.wp.com/www.makou.com/wp-content/uploads/2017/12/17120201.jpg?resize=840%2C514&ssl=1)
記事中のRecord sales: vinyl hits 25-year high | Music | The Guardian、それからThis North American Indie Record Store Chain Grew From 8 To 82 Stores In 2017 – hypebotのようにバイナルでのリリースは海外でだいぶ浸透してきているご様子。
たしかに日本で暮らしてる分にはまるで実感がないし、いっときの流行と言えないこともないのだけど、いざとなってから「日本で一般的じゃなかったので知らないんですよね〜ぇ」と言い訳して呆れさせるわけにもいきません。
ざっくりと訳しておきます。
バイナルのマスタリングなんつってもCDと一緒でしょう?なんて声もあるが、万能なマスタリングなんてものはない。
The Guardianの記事を読んでも、バイナル用のマスタリングを考慮せざるを得ないとこまで来ているのは否定し難いだろう。
ここではフィルター、ディエッサー処理、リミッター、ステレオ感、サンプルレートとビットレート、曲データの長さの点でバイナル用のマスタリングのことを述べたい。
Low-Passフィルター
16〜18kHz辺りから上をバターワース式(訳注:LogicだとAUNBandEQで目に入る用語だが、要はリップルが出なければいいので、Flatなどと記されたものを用いるとよいかと。なおGUIに示されるEQのカーブは必ずしも正確でないのでアテにしないほうがいい)のフィルターを使い18dB/Octでカットする。これより高い周波数はノイズになってしまう。
Hi-Passフィルター
20〜30Hz辺りから下を18dB/Octでカットする。再生時に針が飛んでしまわないように。
ディエッサー
![RIAA equalization - Wikipedia](https://i0.wp.com/www.makou.com/wp-content/uploads/2017/12/17120204.png?resize=600%2C362&ssl=1)
ボーカルの摩擦音やハイハットの音は最低限に抑える。だいたい5〜6kHz辺り。
バイナルをカットするときに摩擦音が猛烈にブーストされてしまうためだ。
RIAAカーブ(訳注:右図)を参考にするとよいだろう。
![](https://i0.wp.com/www.makou.com/wp-content/uploads/pz-linkcard/cache/c6de2de8a43ae7e4231bcb4592fba45db6b362a9069fe341c16095ef3f87c167.jpeg?resize=100%2C108)
リミッター
RMS値でいえばそのピークは-12dBを超えるべきではない。レコード針はダイナミックレンジが極端に小さい場合のラウドネスの変化に対応しきれないのだ。
いっそリミッターを使わないことも。
ステレオ感
100Hz辺りまでをモノラルにする。100〜500Hzのステレオ感もモノラルに近づけたほうがよいだろう。
Correlationメーターでグリーンのゾーンを示すことを確認したうえで、低域のステレオ感が失われるようであればモノラルにしてしまう。
多くの場合レコードになるとステレオ感が増してしまい、位相の関係で音の太さが失われてしまう。
サンプルレートとビットレート
いじる必要はない
曲データの長さ
![Mastering for Vinyl](https://i0.wp.com/www.makou.com/wp-content/uploads/2017/12/17120205.png?resize=840%2C388&ssl=1)
片面につき、右表に示した通り。
低域の周波数やラウドネスレベル、低域のステレオ感およびその帯域が収録可能な曲の長さに影響する。
既に述べたようなLow-Passフィルター、ステレオ感、リミッター を検討材料とすることで収録時間を伸ばすことが可能だ。
よく言われる通り、曲が短いほど良い音が期待できる。
まとめ
以上が全てだが、バイナルをカットする仕組みやそのエンジニアの力量による部分もある。
デジタル用のマスターとバイナル用のマスター両方を送ってみるのもいいだろう。経験しないことには始まらない。