Logic Pro : Melodyne (ARA) 動作について

少しずつ書き足すかも。
Logic Pro 10.4.2からシームレスに Melodyne (ARA) を使えるようになって、試してみて気付いたことがあったんで調べてたら、Logicの標準的動作とからんで少し注意が必要なようです。

Logic Pro | Is There A Problem With ARA In Logic Pro 10.4.2? Reports Of Issues And Possible Lost Work
 Logic Pro | Is There A Problem With ARA In Logic Pro 10.4.2? Reports Of Issues And Possible Lost Work

ざっくりと仕様

Celemonyのとこでも説明(Melodyne in Logic with ARA – what’s different(リンク切れ))がありますが、それも多少引き合いに出しつつザクザク列挙していくと、

  • ただプラグイン挿しただけじゃ解析されないので一度再生すること
    • それでも表示されない場合は、プロジェクトを開き直したり、いったん「参照用のノートを表示」(Melodyneウィンドウ内のトラックリストで2つ並んだボタンの左側)するとよさげ
    • オーディオデータを貼ったトラックにMelodyneを挿すより、Melodyneを挿したトラックにオーディオデータを貼るほうが確実にブロッブ(Blobs;Melodyneの音符)が表示される
  • オーディオリージョンのインスペクタのゲイン値、フェイドイン/アウトは反映される
    • ゲイン値やフェイドイン/アウトを設定したからといってMelodyne内のブロッブの表示は変わらないので、その点に限ってはFlex Pitchのほうが便利かもしれない
    • クロスフェードは反映される場合とされない場合があるが、MelodyneってよりLogic側の仕様によるっぽい
  • コンピング(テイクの選定集約)や代替トラックにきっちり対応
  • オーディオリージョンの移動、コピー、ループ、エイリアスは反映される
    • エイリアスはトラック中で最後に置かれたものだけを反映?
  • オーディオリージョンのFlex、(Flex設定オフ時の)逆再生は反映されないので、一度バウンスすること
  • Logicはテンポ管理が特殊なため、Melodyne使用時のテンポ変更はちょっとややこしいらしい
    • 音楽表現でのテンポの処理には色んなバリエーションがあるのでここでは精査しない(なんか面白い事態が発生したら記事書くかも)
  • サミングスタックには反映できない
    • オーバーサンプリング状態でMelodyneに流し込めないかと、トラックをフリーズさせてサミングスタックに挿してみたがダメだった。YouTubeの製品紹介動画のコメント欄でもオーバーサンプリングについて質問が投げられていたが、「技術班に直接問い合わせてみてくれ」と記されてるだけで回答は無かった。

ノイズ除去は相変わらずピッチ補正の前に行う必要があります。だから、Logic をレコーディング用にも使ってる場合は、RXプラグイン的なものを使ってないなら、いったんLogicを終了してノイズ除去してから再度Logicを立ち上げてピッチ補正する流れになりますかね。

保存されない問題

冒頭で紹介したLogic Pro | Is There A Problem With ARA In Logic Pro 10.4.2? Reports Of Issues And Possible Lost Workによると、以下のような問題が報告されているらしく、環境によるものかどうか判断しきれないものもあるとのこと。

  • 大量のオーディオファイルを流し込む手間は減ったが、多すぎるとエラーを発する場合がある
  • Melodyne画面で編集後、再生せずに終了すると編集結果が保存されない
  • Melodyne画面で大量に編集した後に再生すると、編集内容が全て元に戻る
  • 自動保存がOnの状態のとき、大量に編集して再生せずに自動保存されると編集結果が失われる
  • 間違ったMelodyne画面を開いた場合に、保存してあった編集結果が完全に失われる

どうもLogicの再生や保存動作との兼ね合いで問題が起きやすいようです。
Studio OneでPiapro Studioを使用した場合の動作を思わせる初期化トラップという印象(あれはウィンドウの表示状態が変わってないなら保存しない仕組みらしく、Piapro Studio使用時は通常、Piapro Studio画面内でしか編集を行わないため保存も自動保存もされない、と。なので意図的にStudio Oneの表示を拡大縮小するなりトラック選択状態を変更して表示に変化を与えてから保存する必要がありましたね)。
同じようにARA2プロトコルを使用するレピッチソフトであるRevoice ProのメーカーSynchro Artsが既に問題をAppleに報告済みとのこと。

当面の鉄則として、ARAを使用したプラグインを挿したプロジェクトを起動する場合には、起動後にいったん再生させて、Melodyneに表示されるブロッブを「編集後の状態」と認識させ直してから作業を開始/続行したほうがよさそうです。

ちなみにうちでは直近に、代替プロジェクトで使用したMelodyneの編集結果が、Logicの再起動後に全て初期化されるという問題が起きました。原因は上記でいうと自動保存がらみか、保存のタイミングか、もしくは報告としては未提示ですが代替プロジェクトを使用したこと自体か。
Logicのプロジェクトの管理状態もどんどん複雑化してきているので、完全に安定動作するときまではまだ試用期間が続くのかもしれないと思ってます。

編集内容が元に戻る問題について

23/07/04追記

危なっかしくて使ってないのが正直なとこですが、5年経つ間に何かしら進展あったかしらと、少し動作を確認してみたメモです。

まず、1曲分のボーカルデータ(一本化されたもの)をプロジェクトに貼り、Melodyne(ARA)に読み込ませ、先にレピッチ(ピッチ補正)を行なってから様々な処置を行なってみました。

  • Logicで無音で分割
    • 表示域が変化するだけで、問題は起こらず
  • プロジェクト内、そのトラック上でリージョンの位置をずらす
    • 表示域が変化するだけで、問題は起こらず
  • 無音で分割されたリージョンを「新規オーディオファイルに変換」
    • 問題は起こらず(ほほぉ…)
  • 新規オーディオファイルに変換してプロジェクトを保存し、Logic終了後にこれらのオーディオファイルを削除し、同プロジェクトを再起動後、当初の一本化されたボーカルデータをプロジェクトに貼る
    • 途中部分まで復帰、途中以降は初期状態に
  • 上記処置のあと、改めて無音で分割する
    • すべて初期状態に戻る
  • オーディオプール内で、ボーカルデータ(32bit float)のビット深度を24bitに変更
    • 問題は起こらず(ほほぉ…)
  • オーディオプール内で、ボーカルデータのファイル名称を変更する
    • 問題は起こらず
  • プロジェクトを開いてないときに、ボーカルデータに変更を加える
    • すべて初期状態に戻る
  • プロジェクトを開いてないときに、ファイル名を変更してからプロジェクトを開く
    • プロジェクトを開くときにファイルを指定
      • 問題は起こらず
    • プロジェクトを開いたあとオーディオプールでファイルを指定
      • すべて初期状態に戻る
  • 新規トラック(≠新規プロジェクト)を作成し、一本化されたボーカルデータを改めて貼り付けてMelodyne(ARA)に読み込み
    • 表示域が変化するだけで、問題は起こらず
  • 上記処置のあと、
    • Logicで無音で分割
      • 表示域が変化するだけで、問題は起こらず
    • 人力でリージョンを分割する
      • 表示域が変化するだけで、問題は起こらず(ただし、たまに調整結果が異なる場合がある)

ということで、ものによってはさらに誤差がありそうですが、現状やっぱりよくわからない。ただ、一本化されたボーカルデータをリージョンで分けた状態でMelodyneに読み込ませるのは、いくぶん省力に期待できる面もありつつも同時にいくぶんリスキーな印象を受けます。何故かというと、意図せずフラグが立って編集結果を損なってしまう場合、1曲まるごと編集結果を喪う可能性が高く、複数のボーカルファイルでトラックが成立している場合は1部分のみ編集結果を喪う程度で済むかもしれないから。とはいっても、これは想像レベルの話であって確実さはまるでない。
ただ、非ARAのMelodyneを使用したほうが格段にリスクが少ないのは明らか。次の理由も含みます。

  • 解析結果のファイルがARA版では明示されず、新しい楽曲でMelodyneを使用するたびにキャッシュが肥大化しがち(非ARAだと、解析ファイルがソフト内に明示されているため、二度と使わないファイルを自分の手で処分できる)

個人的には、「その動作をすると編集結果が初期化されてしまいますが、いいですか?」のダイアログが表示されてこそARA統合の意味合いがあると思っていて、それがない現状ではちょっと中途半端では?との不満が払拭できない。
とはいえ、ARAの挙動さえハッキリすればこの辺りはいずれクリアされるかもしれません。

自動保存に関して

Melodyne ARA Edits Not Saving in Logic 10.4.3 – Logic Pro Helpには、クラッシュ時の自動保存が、Melodyneでの編集状態を無視した仕組みになっている可能性を指摘する声もあり。
たしかに、さんざんシンセ音色を作り込んで保存した後に何らかの別の原因でクラッシュして、やむなくLogicを再起動したとき「自動保存版と手動保存版のどちらを開くか」尋ねるダイアログが現れ、自動保存版を選んだらシンセ音色の内容が完全に初期化されてることがあります。ソフト音源やインサートエフェクトのチャンネルをモノラルからステレオに変えただけで設定がすっ飛ぶこともあって、いわゆるテンポラリーの領域をうまく使えてない可能性はありますね。
なるべくなら「手動保存版」を選択するのが望ましい。
また、状況次第では(Logicのプロジェクトファイル自体の)保存バージョンを1つ前に戻すのもありかもしれません。

余談

プラグインマネージャの「デフォルト設定に戻す」して表示されるダイアログのボタンを押さずに、プラグインマネージャーの赤いボタンをクリックすると、赤いボタンを押せないはずなのにウィンドウが閉じ、Logicを操作できなくなります。バグ報告済み。