VSTのみ、SPC PluginsのArcSyn Synthesizer。
懐かしさ漂う地味な見た目で£69.00と若干お高めで「えー…?」と思いましたが、やりこみ要素たるや奥深げ。
かつて席巻したSynthEditを思わせる風体なのですが、機能のコアはオシレーターの波形と変形、シーケンスLFOの配列の部分。いずれもメニューを掘り進めることなく目的のものに辿り着けるよう浅い層にまとめられています。
全体的にChiptune寄りか、Chiptune的なギミックサウンドを生成するのに向いた作りではありますが、そんなに作り込まなくても例えばShapeノブだけで奇抜な音や定番の音色をすぐ出せます。これは大きな魅力と言えます。
プリセットはけっこう豊富で音色の幅も広い。つまり守備範囲が広いということ。
オシレーターは波形の登録数こそ控えめに見えますがShapeノブでPD, WaveTableライクにサウンドがガバガバ変わります。
残念ながらオシレーターに対するいわゆるBend機能(Bend+/-やFoldなど)はありません。
音色でいうとSuper Sawは素直な音、Super Triangleは珍しい、Saw Chords, Square Chordsの概念は潔い。あとNoiseの種類もやたら多い。
シーケンスLFOの配列部分はMassiveやSpireを使う人にとって馴染み深い仕組み。
あれらはそんなに作り込めないため流行ったのも最初のうちだけでしたが、オシレーター波形同様にこのシーケンスの1つ1つの波形もPD, WaveTableライクに変形できます。
よくある波形の変形時のグリッチ感はほとんどなし。ただし、いかんせんこういう仕組みなので変形最中にドップラー効果的に音程が変化することはあります。
FilterやEffectはそれらに比べるとだいぶ品揃え的に地味ですが、意外とよくできてます。
手持ちのもので非常に近い位置づけのものとしてIcarusが挙げられますが、ArcSynに比べると専門性が高めなせいもあってメニュー項目が多いので、わからずに使っていると音色が破綻しやすい。つまり作り込めば作り込むほどいい音になるかと思いきや逆でどれも似通ったサチりサウンドになりやすい(シンセの宿命)。
奥深さは奥深さとして持ちながら、行き過ぎを防ぐべくガードレールが備えられたPD, Wavetableシンセと考えれば用途をイメージしやすいと思います。