Logic Pro : インスペクタ 挙動

Logic Pro : インスペクタ 挙動

あれこれ並行進行させていたため頭混乱中。ひさびさの更新(予約投稿)になります。

インスペクタの仕様がけっこうチグハグ。
年明け発売になるLogic本の中でも結構細かく説明したんですが、もう少し辛口テイストでインスペクタ周辺のことを拾っておこうかなと。昔からLogicを使っている方には気にならないところだろうけれど、これから使ってみようという方にとって理解を困難にさせているだろう箇所へのツッコミ。

MIDIリージョンとオーディオリージョンの違いについて

もともとリージョンは、LogicにおいてはMIDIのシーケンスパターンを入力する小箱で、好きな小節や好きなトラックに箱ごと移動できるシロモノでしたが、その後Logicにオーディオ機能が搭載され洗練されて、MIDIの小箱と同様にオーディオも好きな小節や好きなトラックに移動できるようになったんですよね。MIDIのリージョンとオーディオリージョンは同様に扱えるけど、扱いが違う部分もある、まだ経験がそんなに深くない方にとってこれは混乱の元の1つになるんじゃないかと(推測)。
MIDIは音ではない、オーディオは音である、ぶっちゃけそこが大きな違い。メーカーはこの2者を同様に扱えるようにしてくれてはいるものの、まだ経験がそんなに深くない方にかえって混乱を与えてる気が若干します。たとえばApple LoopsのライブラリからMIDI素材をMIDIトラックにドラッグするとMIDIリージョンになる一方でオーディオトラックにドラッグするとオーディオリージョンになる機能、これがありがたいのはMIDIとオーディオの違いがわかるようになってからじゃないでしょうか。

リージョンインスペクタについて

Logic Pro Xのインスペクタのざっくりガイド
Logic Pro Xのインスペクタのざっくりガイド

さて、リージョンインスペクタはざっくりというと、MacのFinder(Windowsでいうエクスプローラ)のファイルやフォルダをOption+Command+Iで開いたときに現れるインスペクタと同等のもので、情報ウィンドウであり、ついでにそのファイルの属性やらファイル名やらをいじれるものと考えておきます。
…と、このリージョンインスペクタのことを書く前に、LPXで新たに搭載されたローカルインスペクタ、これはピアノロールの左側に新たに備わったものなのですが、一見リージョンインスペクタのミニチュア版のように見えて少し違います。機能的には、MIDIリージョン(小箱)の中にある個々のノートに対して操作を加えるもので、情報ウィンドウとして機能しないわけです。クオンタイズなんかは、実行したパラメータがそのままの状態でいつまでもいますし、再度プロジェクトデータを開いたときにはデフォ値に戻ってます。なので、いわばMIDIトランスフォームのウィンドウがインスペクタの位置にスポッと入っちゃったようなものと考えたほうが現実に即しているように思います。もちろん役に立たないことはなく、ノート個別にクオンタイズの強度を変えたいってときにはモッテコイ。どのノートにどういう処理が反映されたか可視化されればモットヨイ(韻を踏んでみた)。

現状、3つのインスペクタは別々に理解する必要がある

ということで、上述のようにローカルインスペクタは特殊な位置づけのものと理解する必要があります。
リージョンインスペクタは、上に書いたように情報ウィンドウでありファイルの属性やら云々なシロモノなので、下駄と考えておくと伝わりやすいかも。実際のリージョンの中身はこうなのだけど、ベロシティやらトランスポーズやら下駄を履かせることで実際の音を変えてあげられる、と、そういう役割のもの。たとえばAというリージョンのエイリアスA’を作っておいて、このA’だけ転調させたりすることができます。Aの内容を変えてやればA’の内容も変わるけど転調もしといてくれるので、楽ができます。願わくば、オーディオリージョン同様にMIDIリージョンにもアンカー機能(スタート位置の目印)を付けてくれるとリージョンの最初のほうだけフレーズを変えたいってときに楽でいいんですけどね。
さてローカルインスペクタは除外しますが、リージョンインスペクタとトラックインスペクタとをざっくりと対照させて考えると理解がしやすい。図示した通りリージョンインスペクタは個々のリージョンに対するインスペクタ、トラックインスペクタは個々のトラックに対するインスペクタ(当たり前ですが)なんですが、リージョン/トラックを複数選択した場合にリージョンインスペクタとトラックインスペクタとではそれぞれ表示/動作が異なっていて、混乱を招くと思います(個人的にこのUIは初めてLogicに接する方の理解を困難にする大きな問題だと思っています)。複数リージョンを選択したときリージョンインスペクタでは複数リージョンの値を同時に変更でき、特に値決定時にoptionを押しながらreturnを押したり、optionを押しながらマウスドラッグすることで、共通の値に設定することができるのだけど(旧版ではshift+optionだった;別件で後述)、複数トラックを選択したときトラック同士を共通の値に設定することができません。グループ化、もしくはミキサー表示にしてshiftを押しながら(旧版ではcommandを押しながらだった)複数トラック(チャンネルストリップ)を選択することで共通の値に設定することは可能です。LPXより前のLogicユーザーにとってはそういうもんじゃんと思うところですが、学び始め、使い始めの方にとって例外動作はハードルなんですよね。
大きな問題とは書いたものの、おそらくLPXへのアップデートでこれだけ大規模に機能が整理整頓されたことから考えると、上述の辻褄合わせがなされるのも比較的すぐではないかなと思います。

マウスクリック後にモディファイアキーを押す特殊動作

数値の直接入力後にoptionを押しながらreturnまたはenterを叩く動作や、オートメーションまたはMIDIドローの制御点を複数選んでマウスクリックホールドした後にoptionを押してドラッグすることでコピーする動作、つまり操作の合間にモディファイアキー押下を挟む動作って僕はあんまり経験ないです。好き嫌いでいうと好きではない操作ですけど、その手があったかという感じはします。
ちなみにローカルインスペクタでベロシティスライダーを動かすとき、optionを押しながらだと選択中の全てのノートを共通のベロシティー値にした上で変更、結果的にスライダーの端から端まで値を動かすことができるようになります。

個々のリージョンに対するリージョンインスペクタである

大事なポイントはリージョンの中身に対するインスペクタではなく、リージョンに対するインスペクタであるということ。この点を少々理解困難にしているのは、クオンタイズ値をいじったときに実際にリージョンの中のノート位置が実際に移動してしまうこと。このように見えてしまうと、これはビューワでなくエディタの機能として把握されてしまいます。非破壊編集の位置付けなので破壊編集に見えてしまうと具合が悪い。非破壊編集であることを仄めかすには元々のノート位置が半透明で示されているとか、「どういう処理が反映されたか示されるとモットヨイ」(上述)んですけどね。
optionを押して共通値入力の”共通値”が意外とピンと来ないのと、ついでに言えばインスペクタ上の各パラメータにおいて共通値入力の動作に揺れがある、つまりoptionを押さなくても共通値入力になったりするのがまた厄介ではあります。ここでいう共通値とはリージョンの中身の値を一定にすることではなく、リージョンに履かせる下駄を一定にすること。4人兄弟の背丈を同じにするような下駄を履かせるんじゃなくて、4人兄弟に同じ高さの下駄を履かせるということです(比喩)。

余談

Logic Pro X 通常のドラッグ
Logic Pro X 通常のドラッグ
Logic Pro X command+ドラッグ
Logic Pro X command+ドラッグ
Logic Pro X shift(またはoption)+command+ドラッグ
Logic Pro X shift(またはoption)+command+ドラッグ

昨日の明け方にツイートしたんですが、MIDIドローに妙な機能があります。

ノートベロシティのみに関してのようですが、ドラッグ中にcommandキーを押すとScaleと、shift+commandまたはoption+commandキーを押すとScale and Selectと表示されます。Scaleのほうはどうも元々のベロシティのバラつきを保ちつつベロシティを書き換えてくれるっぽいんですが、Scale and Selectは結局何が起きてるわけでもない感じで謎です。マニュアルにも見当たらなかったのと、英語でググったりもしてみたけど情報見つからず。実装途中の機能かもしれません。