DSAudioSoftware “Thorn”

Dmitry Sches Audio Softwareというメーカーからソフトシンセ系プラグインThornがリリースされ、スッとした見た目と音の鋭さ、それと「軽量」という言葉に惹かれたのでデモ版を落として少しいじってみました。

<a href="http://dmitrysches.com/products/thorn" srcset=

Thorn” width=”320″ height=”200″> Thorn

ボタンのデザインやUIはきわめて旧Alchemyに近く、地の色合いはWiggleを思わせます。
どこをいじれば何が起きるのかわかりやすいので、ある程度ソフトシンセに慣れている人なら入手即日使いこなせそう。

アナログシンセを基調としながらも今のEDMに対して最適化したいわゆるハイブリッドシンセで、Massiveよりは音の厚み薄みに幅があり、Serumよりは仕組みがシンプルで、Spireよりは思い通りの音になります。手っ取り早いですね(むろん、シンセで打ち込むよりオーディオ貼っつける作り方する人にとってはあってもなくても変わらんのですけど)。

倍音分布をいじれる画面(Thorn)

倍音分布をいじれる画面(Thorn)

独特な機能、Glitch SEQ(Thorn)

独特な機能、Glitch SEQ(Thorn)

プリセットでいちばん音色の多いLeadのバンク(Thorn)

プリセットでいちばん音色の多いLeadのバンク(Thorn)

順序を変えれるEffect群だが、EQの2度がけなどはできない(Thorn)

順序を変えれるEffect群だが、EQの2度がけなどはできない(Thorn)

フィルターの種類(Thorn)

フィルターの種類(Thorn)

そこそこ大量に備わった基本波形とその音質について、恒例の確認ポイント、低い音域を鳴らして聞いてみると、けっこう音質が落ちてます
が、Wavetableの仕組みを備えているためPOS(=Index)で調整できることや、中央の独特なHarmonic Filterによって倍音が分布する帯域を調整できること、またなかなか派手にかかるディストーション、その他基本波形自体に対するさまざまな加工手法が備わっていることなど、誤魔化すというレベルではなく再合成しているくらいのクオリティなのでがっかりすることはほぼないといえます。
それから思ったよりも低域、中域、高域とも、音量のわりに音が潰れたりせずある程度細かい粒立ちで聞こえるため、96kHz32bit環境でアンビエントトラックを作る場合でも美しい響きを期待できそう。

色んなソフトシンセのUNISON機能

色んなソフトシンセのUNISON機能

最近改めて多くのソフトシンセで定番になってきているオシレーターのUNISON機能は、Thornにおいてはいかなるオシレーター波形に対しても自在にかかり、もちろん他の加工機能とかち合うこともなく、それなりに少負荷で機能しているようです。
なのでProgressive Houseなどで幾つものトラックに重厚なシンセを用いたいってときでも気兼ねなく使えそう。
ただまあ、POS操作時にグリッチとまではいかないまでもカリカリと音が出やすいので、滑らかに美しく音をモーフィングさせていくのは難しいかもしれません。
※こういう場合、オートメーションでなくLFOやモジュレーションからルーティングさせて先読みさせることにより改善する場合があります。

エフェクトは先ほどのスクショでも見えるように9種類の順番を変えることができて利きもいい。特にPhaserの質感がいい。
パラメーターは極端に多いわけではありませんが必要最低限備わっている印象。

キモと言えそうなディストーションエフェクトは、中域が荒れ気味で、雑に聞こえるのが気になりますね…。
文字通り「歪み」だから、ディストーションをかけることによって新しい帯域に成分やノイズが派生してしまうのは仕方ないにしても、ちょっとこの歪み方はフリーソフトっぽいというか、もう少々ケアがあってもいいんじゃないかなと思いました。
KORG Wavestationの音色で多くの人が気に入ったzzzLeadっぽいハーモニクスかかり気味なシンセリードの音はなかなかポイント高いです。

追記:その後Thornを購入していじってみたんですが、ディストーションに関してはフリケンシーレスポンスやそれに近い仕組みを一切有していない、いわゆる旧来のWaveshaperっぽいです。
このデメリットは体感の音圧と実際の音圧の間に差が生まれやすいこと。つまり、波形を見るとエラく歪んでるのに大きな音に聞こえないって風になりがち。
オシレーターの低域の音質劣化を濁すためにディストーションでどうにかしようとするのが定石の特定ジャンルにおいては、音圧上げの邪魔になってしまうので、その特定ジャンルにおいては利用価値がないかもしれません。

MOD MATRIXは今どきのシンセにしては手法が古いか。
LinPlugのSpectral(レビュー)を思わせる”あの頃の仕組み”。
とはいってもSylenth 1や今のTone2製品、RevealSound Spireもそんな感じですね…。
つまりモジュレーションソースとパラメーターノブをパッチケーブルライクにドラッグで結びつけるところまではいいのだけど、変化の幅の指定は表中の数字をドラッグで上下させて決めなきゃならない。
そこで「変化の幅をパラメーターノブ上に展開することでわかりやすく確認できるようにしましたぁ〜」というのが、Massive以降のソフトシンセで見かけるユーザーケアなんですよね。

まとめとしては…、軽く、音がいじりやすく、比較的音がいい、これ魅力。
ただ残念ながら現状ではプリセット音色にSpireやMassiveの音色の代用が備わっている印象しかなく、個人的には正規価格$119(現在は$69)にギリギリ見合わないと判断しました。
導入して損をすることはないと思いますが、このシンセを使って曲を販売して元を取るってことを考えると、そこまで代え難いものでもないかなという気がしました。

操作性 ★★★★☆
レスポンス ★★★★☆
音質 ★★★★☆