先日学生相手に説明したら驚いてたのでここにも書き残します。わかってる人にとっては蛇足情報。
今や入門者でも名を知るSerumなど、複数のオシレーターにそれぞれ開始位相( phase )を指定できるものがありますね。
そのオシレーターの波形と開始位相同士はどう影響するか。とんとん話を進めるため大雑把に書きます。
同じ波形を同じ位相で鳴らしたとき
複数のオシレーターの開始位相を同時に示せるソフトシンセがElectra2しか手元になかったのでそれ使います。
Electra2は画面中段左側にオシレーターが3つあり、中央部のインジケーター左下に見えるのが開始位相。0〜360度で表示されることが多いんですが、このソフトは0〜100%(とfree)で表示されます。
全く同一のものを2つ重ねて鳴らすので、音量が倍になります。周波数分布は変わらず。
周波数分布というのは、この場合に即して言うと音色(ねいろ)。
同じ波形を180度ズラしたとき
逆相と180度がごっちゃになってる人もいると思いますが、陸上競技のトラックを逆立ちして走るのが逆相で、コース半周分ズレるのが180度です(本当は違う)。
上の例で使ってるSaw Waveの場合、半周ズレたもの同士を重ねると音量が半分になって、なおかつ1オクターブ上がります。
波形によって結果は異なり、Sine波やTriangle波やSquare波だと逆相と180度ズレたものとが同じ形になるので、逆相、180度ズレとも、混ぜれば結果、音が消えます。
同じ波形を90度ズラしたとき
じゃあ90度ズラしたとき、Saw Waveの場合だと2,6,10,…と一定の法則で、もともとあった倍音が弱まります。
これもやはり波形によって結果が異なります。
一般論で
要するに開始位相がズレることで倍音が消える/弱まる場合があるということ。
ここでは2つのオシレーターが同じ波形である場合を例に挙げましたが、異なる波形同士であっても起こることは一緒で、打ち消し合ってしまう成分がいればその成分は消えて/弱まってしまいます。
たとえば一方がSaw Waveでもう一方がSine波で、180度ズラすとSaw Waveの一番低い音程(基音)が弱まります。
一方の成分がもう一方の成分を打ち消すような働きを持ってしまう状況下では、一方の音量を上げるごとに何故か全体の音が小さくなってしまうみたいな奇っ怪なことも極めてまれに起きるわけです。
同様に、Serumなどのように一方の位相パラメーターをわずかに動かすだけでやたら音が太くなったり細くなったりってことも起きます。
図示じゃわかりにくいので、手持ちのもので試してみたほうがいいです。
どう位相をいじればどうなるかは、もちろん数学的に算出できるものなんだろうけど、それより聞いて確かめたほうが早い。
Wavetableの編集画面で特定の成分だけ位相を調整してみる手も無くはないのですが、実際ものすごく時間かかるのでお勧めはしません。
こういう調整をした結果「サブベースむしろ要らんやん」となる場合もあります。
で、シンセ単体で好みの音になったからといって、曲全体の聞こえが整うとは限りません。トラック間でも同じように打ち消し合う成分があるかもしんないわけですし。ただ、がぜん良くなる可能性があるってことは記しておきたい。
余談:位相を動かすとピッチが変わる
特にSquare Waveで顕著になるんですが、LFOやEGでPhaseを動かす設定をした場合にピッチが揺れて聞こえることがあります。
波形が縮んでいくように見えるときにピッチが上がったような現象になり、波形が伸びていくように見えるときにピッチが下がったような現象になる、ドップラー効果みたいなもんでしょうね。
PWMにLFOをかけてSuperSawっぽい音になってるのはこれ。