IK Multimedia “MODO BASS”

IK Multimedia MODO BASS を導入しました。

Spectrasonics Trillianの音色群
Spectrasonics Trillianの音色群

Trilianの不満点解消なるか

さて、Spectrasonics Trilian、そもそも不満がないわけではありませんでした。

  • サンプリングなのでメモリ食う、ロード時間が長い
  • サンプリングなのでピックアップバランスの調整が利かない(アンプとDIのバランスは取れる)
  • 音が古臭いわりに、打ち込むと古臭さが出ない(長所でもある)
  • アタックに数msecのノイズを持っている音色は、ノートのタイミング調整がたいへん
  • レガートのコントロールがしにくい

一縷の望みをかけて…というほど大袈裟な話でもないのですが、こうしたデメリットがMODO BASSのような物理モデリング音源だと劇的に改善されるのか試したくなりました。
当然の話ですが、物理モデリング音源だとメモリを節約できる代わりにPCの処理能力が必要になってきます。とはいうものの、一部の音源のように処理能力を貪りながら出音がガッカリってケースもあって…結局のところ試してみるしかない。

MODO BASS 、軽量なり

基本、IK MultimediaやGEMなどイタリア製のサウンド製品は音切れがだらしない印象を持っていてあまり好きではありません。
その分、レビューにあたっては低い期待値からのスタートとなります。

サイトがわかりにくい…。
何の説明もなくDOWNLOADと書いてあるのがデモ版のダウンロード先。
閲覧者にはサイト上のSoundcloudウィジェットやYouTube動画等で音を確認してもらうのが主流と思っていたが、IKのサイトにはそれもありません。

いちおう、どんな感じの音か打ち込んでみたので貼っておきます(©Tower of Power 1972)。

MODO BASSでモデリングされているベース群
MODO BASSでモデリングされているベース群

インストール後、デフォルト画面で指板をクリックして鳴るプレビューを聞く限り、なるほどよくできています。
特に押弦時に弦が指板にあたるギッて音はわざとらしさがなく非常によい
Pitchbend時にフレットが鳴るのもリアリティがありますね。
物理モデリングらしく設定可能な項目も多いのだけど、マニアックにはならないレベルなので、そこそこ楽器のことをわかってるDTMerなら楽勝。

  • ベースのモデルは12種類
  • プレイスタイルが3種類:指弾き、ピック弾き、スラップ
  • 弦のタイプ、ゲージや劣化度
  • ピックや指弾きでのピッキング位置
  • ピックアップのタイプや位置
  • サーキットタイプ
  • アンプ(2種類)とDIの各設定、ミックスレベル
  • 各種ペダルボード
  • 奏法切り替え用のキースイッチの設定

で肝心の音のリリースについては、予想通り音のリリースが少々だらしなく、調整できるパラメーターも(今のところ)見当たらない(MUTEはその用途ではない)。
指弾きは絶品、ピック弾きは及第点として、スラップのサムピングのパンチ力が「ん?」という感じで、たとえばMusic Manのモデルだとあの鼻腔を突くような響きまでは再現されているのに、Music Manらしいハジけるようなバチンというスラップサウンドにならないので、スラップでのカッコいいパワー系グルーヴを作るのはまず無理かなと思いました。

使い分けになるかも

Trillianとの比較で言うと、あくまでMODO BASSはエレキベースの音源であるため、アップライトやフレットレスの音は作れません。いわんやシンセベースをや。
Trillianでもそこまで多くのバリエーションは入っていないのですが、スライドエフェクトもMIDIで打ち込むほかないので、結局はMIDIでの打ち込み技術頼みになってしまうかなと思います。

ところで、Kontaktで動作するさまざまなサンプラープログラムをはじめとして、キースイッチの仕組みは便利といえば便利なのだけど、緻密に打ち込もうとすればするほどほぼ常時レファレンスの画面が必要になったり、制御も煩わしいので、ぼちぼち革命起きないと(我々に輪をかけて面倒くさがりな)新規のユーザーさんを囲い込めないんじゃないかなと思います。
Logic Pro XはそこでアーティキュレーションIDという仕組みをこっそり打ち出し、安直ながら「大きなテコ入れを避けて今の仕組みを拡張する形で考えるとそれしかないわな」と思わされたのですが、視認性への配慮はないに等しいのでおそらく他メーカーにまで浸透することはないと思いました。