スペクトログラム ほんのりガイド

直近ではExcite AudioのVISION 4Xって軽量なソフトが海外のトラックメーカーの間では評判で、VISION 4XにせよiZotopeのRXやInsightにせよ、あるいはStudio OneのプロジェクトモードでのSonoにせよ、それをどう役立てればよいかは、意外なことにあまり説明されてないっぽい。

Studio OneのプロジェクトでのSono表示
Studio OneのプロジェクトでのSono表示
Screenshot of www.pluginboutique.com

Excite Audio “VISION 4X”(Plugin Boutique)

見方

あらゆる音は純音(倍音のない音;サイン波)の集合として分析されます。きれいな姿で分析されるものもあれば、ごちゃごちゃした姿に分析されるものもあります。

ソロ演奏であろうが合奏であろうが、周波数時間に音は分析され、おもに、縦方向に周波数、横方向に時間で表されます。成分の強いところが濃い色で、弱いところが薄い色、お留守のところは黒で示されるのが一般的。カラーリングはソフトによって変えられ、VISION 4Xなんかだと階調にカーブをかけられます。
音を流しながら、そのまま流れていくのを眺めてても別にかまわないんですが、拡大縮小を活用して「良からぬ場所」を見つけて、適切な方法で撃退する、そんな使い方が多い。

要は、耳で聞いても判断しきれないものを目で見つける目的で使われる、と。

iZotope RXでの画面
iZotope RXでの画面

解像度

何にせよその傾向がありますが、解像度を高めると、わかりやすくなる代わりに重くなります。
どの値の解像度が適正かは状況によって異なりますが、4096くらいが順当で、それより小さい値だとタイミングの精度が上がり、それより大きい値だと周波数の分解精度が上がると考えていいです。RXだと画面の拡大率によってなるべく見やすいように切り替わっていそう。不自由を感じたことはありません。

サンプリング周波数が高い場合は、分析または表示における周波数上限を決めたほうが使用時の効率がいい。ただしレストレーション等の処理を行うなら設定値やツールと表示内容との齟齬が起きないよう確認したほうがいい。

用法

見方については上述の通りで、通常は、実際に音を聞きつつノイズや不自然な箇所を感じ取ったら波形かスペクトログラムか(あるいはコリレーション(Correlation)、ゴニオ(Goniometer)、オシロスコープ(Oscilloscope)など他にも使う)で目視で確認する使い方になるかと思います。つまりは各アナライザーを相補的なツールと見なして原因を突き止めて対処する、てな感じでしょう。

これらは、ひとまず分析の方法であって問題解決に直接結びつくものじゃありません(RXは解決手法を提供してくれますが)。

たとえば

ノイズの確認

耳で聞いていてノイズと思しきものに出くわした時、波形を見てもわからん場合にスペクトログラムだとわかりやすい。典型的なものとして、ブチッてノイズは亀裂のように見えるのでわかりやすい。ボーカルで発生しやすい、摩擦音中にツバが弾けるような音が入ってしまったものなんかは一発で特定でき、対処がラクになります。

ちなみに歪んでいる音はスペクトログラムだとわかりづらく、波形のほうがわかりやすい。
あと位相の問題はわかりづらい。

いがらっぽい声なんかだと、声の倍音の隙間に別の成分が見事に混ざり込んでるのを確認できます。

混ざり込みや特性

これもノイズっちゃノイズですが、たとえば紙のめくれる音や、足踏みの音、拍子を取る手の音、身につけたアクセサリーの音も一目瞭然です。
非常に高い周波数で人間の耳だと聞こえにくいもの、あと慣れちゃって目立たなくなるハム音の類いも一目瞭然です。
同様に、マイクや経路、環境あるいはエフェクターに変な癖がついているものも、特定の周波数だけ妙に強く出たり、欠けていたりして、耳慣れちゃった場合でもわかりやすくなります。

Learn how a spectrogram works, how to use one to examine an audio file, and how to fine-tune the type and amount of information presented in the RX spectrogram.

大まかな見方として

じゃあ実際どう眺めるといいのか。起きうる問題は多岐にわたるので、「こう見るのが正解」とは言い難く、正直経験で得るほかありません。とはいえ、その経験値取得を効率化することはできます
(ちなみに経験だのマニュアルだのと二者択一論がいまだに盛んですが、これも相補的に活用するのが賢明だと思います)。

画面がスクロールして表示されるタイプのものや、再生位置を表示するプレイヘッドがスクロールするタイプのものなど、表示スタイルには色々ありますが、いずれにせよ音を聞きながら「ん?」と思った箇所で表示を確認してください。縦か横か斜めか、亀裂または妙な塊、あるいは空洞がいるのを目視できるはず。色んな曲でそれを確かめると、良からぬこと(多岐にわたる)がどのように表示されるのかわかるはずです。
注意するべきは、良からぬことが耳に聞こえても必ずしも目に見える形で現れると限りません。じゃあ意味ない? そんなことありません。既に書いたように、さらに他のツールに切り替えて問題を把握するのが得策です。


書いてきたのは、一例であり、他の見解や用法も多々あるでしょう。上に記したiZotopeのチュートリアルも読んでみるといいと思います。