Audiomodern “Playbeat 3.2”

レビューやチュートリアルをよく見かける Audiomodern の Playbeat 3.2 。
あまり関心なく、当初スルーしていたのですが、気づけばバージョン3と。
トントンとバージョンアップが進んだのには巷の反響がそれなりにあったものと見えます。

‎*** "There’s simply no other plugin out there with this exact functionality - Playbeat is the most powerful tool for rhythmic pattern creation and opened up a world of new possibilities for producers, composers and musicians" *** - Musicradar, Nov. 2021 -Playbeat is a creative groove randomizer…

この見た目からするとアルペジエイター的なものを思い描いてしまいますが、実際はほぼ純粋にリズム用のパターン・ジェネレーター。Audiomodernのサンプルパック製品を見るとわかるように、このデベロッパーはテクノやエレクトロニカ系がお好みで、それゆえ4つ打ちに対する固執がありません。しかし扱うサンプル素材は軒並みシュッとし(たぶんサンプルごとに、ノイズ成分の有無が極端に分かれているせいかと思われます)、このソフトに内蔵されたものも例に漏れずで、要するに(使えば)ミックスに音楽の方向性が出やすい。

機能の中核はランダマイゼーション。平たくいえばノイズ。
これを有機的な音楽に盛り込むにあたって、ソフトにどんな制御が備わっていればいいか、その考え方と技術が機能体系に表れています。

基本的にはプリセットのキットを読み込んで、鳴らして、気に食わなければ中央上部のランダマイズボタンを押す使い方。いじりたければ音符位置(STEPS)、連打(DENSITY)、ピッチ、FLAM(フラム;これは2連の音符間隔を制御する)、ボリューム、パンの6つのパラメーターそれぞれを調整し、パターンのささいなバリエーションが必要ならRemix Padsなどを使っていくことになります。
気に入ったもの、もしくは一度MIDIまたはオーディオに変更して調整したいものは、ソフトからDAWにドラッグすればいいわけですね。
そういった、とりあえず鳴らして材料にする以外に備わっているのが、先ほど「制御」と書いた部分で、ランダマイズの反映率や、任意でランダマイズ対象から外したり、成果をストックしておいたり、一時的にバリエーションを呼び出したりと、人によっては覚えるのが面倒だから使わないだろう(もしくはマニュアルを読むのが嫌いで結局習得に至らない)部分が非常に凝ってます。多くのこうしたジェネレーターが揮発的、刹那的でパターンごと保存するしかなくてライブユースに向かないのと比べると、自分なりの戦略に組み込める優位性を持っていると言えるんじゃないでしょうか。わりと鳴かず飛ばずのまま来てしまっているXLN AudioのXOについても同様のイメージを持っています。もっと評価されるべき。

情報

  • Windows, macOS対応
  • AU, VST, VST3, AAX対応、スタンドアローン、iPad対応
  • 定価€69、アップグレード€19。iPad版 $9.99

とまあ別段こうして讃えられるべきものを讃えたところで懐が暖まるわけでもないのですが、ジェネレーターの一つの到達点として重要視しておきたい製品だと思いました。

ちなみにマニュアルには、Remix PadsとSample Trigger機能の説明が抜けています。動画解説をチェックしてないので、そちらには言及があるかもしれません。Attack Magazineのチュートリアル記事が、これらの機能について触れています。

Dynamic 2-Step Beats With Audiomodern Playbeat 3

好ましくないところも書かないとフェアじゃないか…。
機能が機能名でなくアイコンで示され、またアイコンがわかりづらく、ツールチップも表示されないため、行き詰まるとマニュアルを開いてその説明らしきページをしばらく探さないといけない。慣れればいいんでしょうけど、慣れるまでの苦痛が少々大きすぎます。
また同社の他製品がだいたいそうなんですが、◀▶がついているせいでトグルスイッチに見えるけど実はボタン、ラベルのように見えるけど実はボタンってのがあちこちにあり、やはり導入してすぐ使えるとは言い難い。
フリーウェアとしてソフトが3つリリースされているのはラッキーで、これらに使い慣れておけば、独特なUIにわりあい速く慣れられるのではないかと思います。