HOFA “IQ-Series Transient”とマルチコンプ徒然

HOFA “IQ-Series Transient”

HOFAが、より自由なトランジェント加工を可能にするIQ-Series Transientを7/18にリリース予定。
IQと名乗ってるのでAI絡みかと思っちゃいますが、そうではなく、より現実的側面を考慮したパラメータを導入した「賢い仕組み」を意味します。
ひと目見てわかるように帯域をカーブによって指定してトランジェント部とサスティン部を調整、またヒステリシスではなくMagic Boostなる一種のスレッショルド指定によって、加工を行う部分と行わない部分を分離し、ややこしい設定やルーティングを行わなくても理想に近い音を作れるようになっています。
似たものとしてはSonibleのProximity: EQ+ってのがありましたが、リリース以降、機能向上など特段構われてる気配もなく、有効なものに乗り換えるならちょうどいい選択肢になるのかなと。

The eq plug-in that repositions audio sources in post-production. Whether music or speech – proximity:EQ+ lets you edit sound spaces as never before.
SONIBLE社製 プラグイン・エフェクト 「PROXIMITY:EQ+」の製品詳細情報ページです。
情報

  • Windows, macOS
  • 6/30現在、フォーマット不明(おそらくVST, AU, AAX)
  • 定価€129,90、プレオーダー価格€79,90

折しも、マルチコンプに関するガイド記事が

「折しも」と書いておきながらIQ-Series Transientはマルチコンプではないのですが、個人的にも現状のマルチコンプに見られるマルチバンド方式よりもIQ-Series Transientのようにカーブを描画して帯域ごとの効果を調整する仕組みがとても良いと感じたところなのでして、それにちなんで取り上げることにしました。

マルチコンプは理解が難しい装置の一つだと思っていて、長らく自分も理解に苦しんだものです。現状、OTTやそれに類する製品(およびシンセに内蔵された機能として)で一気に浸透してしまったためか、激しい音にする装置と理解されがちですが、これは少々すっ飛ばし過ぎ。積極的な使い方は歓迎されるべきなので口が裂けても間違いだと言えないけれど、その使い方しかしていないなら”もったいない”。
ごく雑に書くと、特定の帯域縛りでコンプをかけたい場面で、それを行なったせいで音量バランスが崩れそうなら、それに備えた調整機能を持っている、というようなもの。
自分の場合、この「特定の帯域」ってのがまるでわからず、バランスの良し悪しもわからず、……それが長らく苦しんだ理由。マルチコンプが必要になる前に、EQやコンプでバランスを整えたんじゃないの? じゃあ必要ないのでは?と15年ほど前までずっと思ってました。そうして仕上げたものに、なお調整が必要なときに有用なのだと気づくまで。ということはつまりミックスバス(およびそれに準ずるインストゥルメントトラック)やマスターインサートとして威力を発揮するものであり、チャンネルストリップ単体においては積極的用法以外でそこまで必要になることもないかなと。おっと、アコギのキュッて音を抑えるのに使ったりするか。

で、上の記事で扱われているDevious Machinesのマルチコンプのように6バンドまで必要かと言うと、必要な場面がないとは言わないにしても、個人的には少し行き過ぎな気がします(自動で設定される機能が搭載されているので、実際にバンド数は気にならないのだけど)。
冒頭の話に戻って、それなら複数の制御点を持ったカーブで効果を調整できたほうがもしや使いやすくないかなと。各制御点でコンプのパラメーターを調整できれば、”見た目が違うだけで本質的に同じ”なんてこともないと思います。この概念だとFabfilterのPro-Qに近いのかな。まあ、でも各制御点でのコンプの設定は横並びで見られたほうが状態の把握はしやすいのか、うーん…。

それはそれとして、マルチバンドコンプの用途など改めて知ろうという方には良記事かと思います。