雑記帳(という名の振り返り) 231230

あら、一週間も更新してなかったみたい。
そんなに忙しかったか? あ、忙しかったな。

音楽ソフト、楽器界隈の振り返り

雑記
雑記

今年はMoog、Harrison Console、Presnous、Slate Digital、Denise Audioと買収や吸収合併が幾つかありましたね。Gobblerなどサービスを縮小したり、2nd Sense Audioのように消えたっぽいとこもあります。

今年リリースされた製品、後ほどまた書きますが個人的には地味だった印象です。
自分としては、WavesfactoryのEqualizer、Minimal AudioのCurrent、SoundBetterのButterfly Effect、Reason StudioのObjekt、Sonic ChargeのSynplant 2の5つが果敢なチャレンジや新たな提案をしていて、高ポイントを差し上げたい。

あと番外としてAuto-Bounceも、今後どのバージョンまでキャッチアップするかわからないけど、こちらもその積極的な姿勢を称えたい。

もちろん新製品やバージョンアップが多くあり、世間の評価がとてもよいものもありましたが、ここでの評価はこれらに絞られる、ってことです。

プライベート的な振り返り

以下、興味なければ読む必要なし。また後半について多分に私見に基づくものであることを強く念押ししておきます

私生活面

表向き代わり映えのない中で、私生活的には色々あったなと。実家のこともありつつ。
夏以降は右肩から先がやたら不調で、マッサージに行ったら「仕事し過ぎ…いや、首にヘルニアありそう」との話。ここんとこ右手に痺れが出てますが、だましだましやっていく他ないね。年明けたら病院行きます。

制作面

活動としては、仕事以外での制作は相変わらずモチベーションが上がらずほぼ手つかず。
上記私生活面だけが理由ではなく、漠然とDAWに触るという、それまでの日常(強迫観念かも)にも身が入らない。面倒だなって思いが強く、このハードルを下げられるようなイノベーションを求めるとこがあったけど釣果がありませんでした。むろん合う/合わないの話であって、正誤の話ではない
下手に一般化すべきではないんでしょうけど、制作姿勢が制作環境とうまく合わないってのは、いわば自分ならではの制作スタイルがあるって意味で本来歓迎すべきで、このしんどい部分を何らかの形で乗り越えたりやり過ごしたりするのがバイタリティなんだろうと考えてます。
どんなに疲れてても酔っ払っててもPCでDAWに触れずに安眠できるはずもなく、なんて時期は残念ながら過ぎてしまったようです。
ただ、こういうのは周期的なものかもしれないから、数年程度そうした状況になったからと何らかの結論を急がんでもいいでしょうね。周りがそれを許してくれない本業の方々は大変でしょうけど。

仕事での音源制作、楽曲制作は今年それなりに多かった。半数は名前も含めて表に出ないものでしたが。
で、驚くことにこちらは短納期でもガツガツ作れましたね。割り切れてるんでしょうし、言い換えればふだんがよほど割り切ってないってことでもあるんでしょう。
仕事での制作では大概「〇〇みたいな」という発注内容になるんで、暗中模索のしんどさと無縁で(丸パクリは絶対しないけど)ラクはラクなんでしょう。作る醍醐味が暗中模索のほうにあるのは言うまでもない。

一方、プロジェクトの進行の甘さに今年は随分振り回されました。それまで細かい進捗管理のもとで開発作業に携わっていたせいもあるかしれませんが、マイルストーン切らんのかいとか、レスポンス返すのに一週間も待たすんかいとか、物量をリストアップせんのかいとか、計画変更の情報を共有せんのかいとか、信じ難いことが多々ありました。
流動性も大事だとは思うんですが、プロジェクトはその大小に関わらず情報共有とセットでないと、ワンマンと変わりない

今年面白いものはあったか

何を差し置いても今年はAIや機械学習の年でした。
本格的に業務に導入できるものもあったけれど、成果を流通に乗せるにあたって検収が必要って段階はまだ完全には脱せていない。一方で音楽制作の中でのミックスやマスタリングに導入されるAIは非常に完成度が高く、そのように用途を明確に絞ったほうが信用度の高い成果を出力するってのは、たったいま上に書いた「割り切り」の理合いと呼応するかもしれない。AIといえど世の理に縛られるといえます。
結局はプロンプト同様、適切に絞らなければ的中率が下がるのであって、さもなくばギャンブルの域を出ない、と。よく言われるように指示側(企画提案する人間、学習指針を示す人間、プロンプトデザイナーを含む)の能力次第ってことなんでしょう。
研究もガンガン進んでるから、これ以上踏み込んだこと書く必要はないか。

シンセに関してはビッグプロジェクト的なものが幾つかリリースされましたが、自分にはまったく響かなかった。たぶんDAWレベルで革命が起きない限りもう心が動かないかもしれない。早い話、機能追加はもういい。シュッとしてほしい。
たぶん、ソフトシンセがスタンドアローンで起動して、適当に弾いたものが裏で記録されていて、聞き直せて簡単に編集ができて、書き出し時に勝手にDAWのプロジェクト形式に仕立てられるとかでないと、正直鬱陶しくて今どきのDAWを起動する気にならないと思います。
いまだに作曲時に紙に頼らざるを得ないのはこういうとこが理由です。歌唱や生楽器ならスマホに記録するのもラクなんですがね。

エフェクトに関しても出尽くした感あり。名機シミュレーションについてはまだ改善の余地あり。
言葉は悪いけど「誤魔化し」で何らかを模倣する手法は、誤魔化しじゃなく何らかを模倣する手法にまで達するか、それが可能になるコロンブスの卵的な技法が編み出されないと、どれだけマイナーな機器をシミュレーションするかって域をずっと徘徊するだけになると思っています。
要は、ディザを使わなくても高音質な音のままダウンサンプルできる手法がほしい、みたいな話。ディザは結局転送率の域内でしか仕事を果たせないみたいなもん。

デベロッパはどんどん増えてて技術力も高まってますが、発想に思いのほかバリエーションが少ない印象あり。

じゃあ何が欲しいのか

以前キーボードでどんなのが自分なら欲しいのかって話題を綴ったことがあります。ノリはそれと一緒。

以前書いたものでいうと、作りかけの曲の続きを作ってほしいってのはあります。画像生成系AIだと、ざっくり書いたものをそれなりに仕上げるようなのがあるんで、できなくはない気がします。ちなみに、この出力がMIDIである必要を自分は感じていません。
それと並行してですが、既存の曲をガンガンAIにつっこんでDB化して、自分が作ったものに似てるものが既になかったか検出してほしかったりもします。Shazamがあるっちゃありますが。

シンセとしては、合成方法がもう出尽くしてて、そろそろ別の切り口がほしい。お前が考えろよと言われる前にこの2,3年くらい考えてるけど、特に閃かない。しいていえばアディティブとは違い、かつウェーブテーブルほどハーモニクスに制約のないスペクトル系のシンセを思い描いてはいます。
あとは上に書いたように、スタンドアローンで起動しつつDAWのプロジェクトもどきを書き出せるといい。コード進行として書き出せるのは既にありますが、便利かというと用途が絞られちゃって、そんなに便利ではない。
シンセに限らないけどExport MIDIやドラッグMIDI機能がほぼ定着しているのはいいのだけど、作成できるフレーズが短くて(DAWに投げ込んでから編集できるけど)国内向け楽曲だとイマイチ使いづらいってのはありますね。ノートの長さを変える類いの事後的な「編集」機能がDAWでもう少し充実してくると、Export MIDIとの咬み合わせがもう少しシームレスになってくると思います。イマイチまだ中途半端に思えます。

サンプラーもしくは物理モデリングに関しては、それ同士が二者択一でなくうまく融合してくれるといいかなと思ってます。SWAMやSoundPaintなど、そこらに足を突っ込みつつあるデベロッパーに期待。

エフェクトとしては、コムフィルタ効果を除去できるものがほしいかな。いまだにそういうボーカルデータを受け取ったりして、ミックスがしんどかったりします。

とにかく面白いもの、新しいものを相変わらず欲しています。

今年の懸念

予言までもいかぬ、まったくもって明確な根拠がないのでアテにせんでほしいのですが。忘れそうなのでメモしとくってだけ。

  • 単純に話題が出現するペースと話題性の大きさだけ見ての憶測でしかないが、精度が高く、それだけに問題視されかねない(音楽向け)AIが夏頃に出現するんじゃないかなあと。まあ、わざわざ言わないだけで皆似たようなこと思ってるはず。
    ただ、ここでの問題視とは、人格権を侵害しうるサービスが悪びれもせず出現するってこと。むろんこの利害関係に直接関与しない者にとってはオモロいオモチャに過ぎないのだけど、そうしたオモロいものは往々にして悪用されやすい。
    理想としては事態を予期した何らかの対策を打っておくことだけど、たぶんもう遅いよね。
  • NIとUADの息切れ感がすごいような気がするんだけど、大丈夫かな。
  • 今年も買収劇はほうぼうで起きるんでしょう。特に異業種(≠ファンド)による買収、吸収の可能性を感じてます。