Toontrack “The Jazz Session SDX”

Toontrack “The Jazz Session SDX”

ToontrackからSuperior Drummer 3向けのジャズドラムライブラリー、The Jazz Session SDXがリリースされています。
いつもNFRをいただけているのですが、今回は連絡ミスでまだ入手できていません。早ければ週明けくらい?
入手でき次第、操作感などもろもろチェックした上で追記していこうと思います。

リリースされてすぐに「どんなもんか」と動画を確認したところ、𝕏のほうにも書いた通り、今までジャズと冠したライブラリー(Logic純正、Battery、BFD、Addictive Drums、先代Superior Drummer 2のエクスパンション)をチェックしてきた中で、やっと本当にジャズの音をしたものが出てきた!と感じました。
Battery 3のold jazzだかがこれまでは一番近かった(活用度は低かったけど。Battery 4になって、まともにBattery 3のパッチを使えなくなって以降使ってない)、あとNative Instrumentsの’50sがもう少し全体的にハイピッチであればいいなとは思いました。ブラシに関してはほぼ全滅で、Logic純正で初めてテンポ同期しそうなスワールが加わったくらい(それでも、ラテン訛りもそうだけど、単純にテンポ同期すれば済むグルーブじゃないのは、自分も色々試してきて痛感している)。
もちろん、そうしたもろもろ、実際に操作感と合わせて考えないと、ベタ打ちに毛が生えたくらいでもそれっぽく響くのか、MIDIグルーブを活用すればそれっぽく響くのか、よほど盛り盛りのメモリにガチガチの打ち込みをして始めてあの音になるのか判断しきれない、あるいは完全にジャズドラムの音でファンクやソウルを叩かせてもイイ具合に響くのかってのも判断できない。そこをNFRに賭けてましてですね。

情報

  • 要Superior Drummer 3
  • 定価€179

サウンドと、前もっての印象

レコーディングのエンジニアはJames Farber。
レジェンダリーなエンジニアとの棲み分けを考え、ジャズに特化して経験を積まれた方だそうで、ゆえに古くは’20代のいわゆるトラップセットから新しくは’00以降のスタイルまで、高品位でバリエーション豊かなドラムセットの収録を達成できています。
ジャズからクロスオーバーやフュージョンにも対応しているとはいえ、その類いのドラムだけで7セットと。
それだけやりゃあ確かにこの価格にもなるでしょう。高ェって声をあちこちで見ますが、こう、僕自身の一応の守備範囲で判断すると、高いなりにやっぱりしっかりした内容だなとは思いますね。

基本的なドラミングはもちろんとして、全てのドラムセットに対してではありませんが、ブラシ、ロッド、マレット、手で叩いたものが収録されています。おぉ!とは思ったものの、シズルつきシンバルが残念ながら収録されていないようです。オイシイのになあ…。シズルつきはそれこそBattery 3のサンプル内と、他どこかでも見かけたかな。
とはいえ、それぞれのドラムセットのデモ音源を聴く限りでは、ほぼ本当のドラミングと遜色ないように聞こえます。「ほぼ」というのは、(意図的な叩き損ねなんかも含めて)もっと変な音出せるよねって部分。なので、オーソドックスなジャズを作る場合には充分だとして、少しチャレンジングなもの作ろうとすると結局本物のドラマーが必要になります。まあ書くまでもないのだけれど。

多くのToontrackのライブラリーにおいて、(自分の好みと比べればですが)ミュートし過ぎな感じがあるんですが、さすがにこのライブラリーではそうでもない。なので、通常のセットの中にこのライブラリーのスネアを差し込んだりレイヤーしたり、そういった使い方はありかなと思います。

何にせよ、まずはNFRを待ちたい。今のところそんな心境であります。


手元でのサウンドチェック後

Toontrack製品(SDX, EZX)は、製品名がアプリケーション内のプリセットメニューの最も浅い層にあって、そこから掘り進んでいく仕組みが常となっていましたが、ここ最近は浅い層で既に幾つかのメニューに分かれてることが多くなりました。EZ Keys(EKX)にも若干その傾向が出てきています。
これ、別に設計が雑になったとか製品がオムニバスじみてきたとかいうわけではなく、言っちゃえば偶々で、結果的には他の製品と辻褄を合わせるとこうなるがアプリケーション上こう表示せざるを得ない(というか当初の設計どおり)んだと思います。
ユーザー側としては、自分が何を所有しているか次第ではありますが使用時に一瞬迷いが生じますね。

サウンドは非常に正直な音で、印象が大変よい。
ミキサープリセットは、ほかの製品と比べると種類こそ別段劣らないものの、ジャンル柄、サウンドバリエーションとしてはそこまで幅がない。なんならEQも使わずパラレルコンプのみで、リバーブにしたって内蔵エフェクトではなく、おそらく現場のリバーブからキャプチャしたものを収録しているよう。予想外。
ほかのライブラリーと比べると、各ドラムセットにおける各ドラムの取っ替え候補が極端に少ないのですが、SD3の柔軟性を活用すればどうってことはないでしょう。

打音のディケイは、適度にミュートされたものもありますが、いい具合に長い。
ローピッチのフロアタムが1,2種類ありますが、キックも含め、概ねハイピッチでまとまりがいい。いや、ジャズドラムのサウンドだとそういうイメージを持ってきたのだけど、そういうサウンドの製品がこれまでほぼなかったので、やっとか…という思い。
シンバルに関しては、リベット付きが1種類あったものの、シズル付きは1枚もなし(手持ちのToontrack製EZX, SDX内にも1枚もなかった)。これだとジャズバラードは厳しいかな。
ブラシ奏法に関して、各MIDIグルーブはブラシを活かしたイイ内容ではある(ブラシを使用したドラムセットに切り替えるのをお忘れなく)のだけど、いわゆる甘いノリのブラシスワールって感じではなく、今までと変わらずユーザー側で有耶無耶に誤魔化しつつ、当面MIDIグルーブからそれらしきものを工面せざるを得ないでしょう。スワールの仕様も正直ぱっと見じゃよくわからない。この辺りはLogicの純正のブラシDrummerのほうが(音はともかく)仕様がハッキリ見えて好ましい。
ともあれ、何せ不思議な奏法が日々生まれるジャンルなので、あらゆる奏法をカバーしたライブラリーを設計したり作ったりするのには、やはり無理があるとユーザー側も捉えるべきなんでしょう。

トータルの印象として、非常に面白い製品であり所有する価値を自分は感じたのですが、生半可にジャズに手を出したい程度の人に勧めるとなるとToontrack自体の印象を悪くしてしまいそう。
要は、ガチはガチだけどジャズバラードまでは手を出さない、なおかつToontrack製品の構造をわかってるって人相手であればお勧めできます。マニア向けってほどでもないのだけど、オールオブジャズをカバーできるほどでもない、ってことです。