Sonarworks “SoundID VoiceAI”

Sonarworks “SoundID VoiceAI”

わりと似たようなのがあちらこちらから出ていましたが、SonarworksのSoundID Voice AIがお披露目。
ビジネス化は既にやってるとこあるんでしょうけど、わりと本質的にビジネス化された印象があり。シビアに見りゃまだ宣言やら計画やらヌルいのかもしれませんが、有耶無耶にせず論点整理できてるだけでも評価すべきと自分は思いましたし、競合にとっても(その論点を今後有耶無耶にしづらくなった意味でも)一里塚になったんではと感じた次第。

歌唱の置き換え先については23人、楽器への置き換え先は21種類。
近代DAWのプラグインとしての動作が確立されており、歌唱をデータ化(たぶん)して、クラウドに保存して、変換結果を受け取るという流れかと思われます。常時オンラインである必要はあるもののクラウドへのセキュアな接続(および管理)は保証されていそう。

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たしか有名どこではMusicfyが歌唱の置き換えや楽器への置き換えを行なってたり、たびたび例に挙げるMawfなんてのもありました。
ただまあ、Musicfyだったかな…日本語の歌を放り込むと英語訛りの発音になるような現象も見られるわけで、実用性を問われると少し躊躇してしまうとこはあります。とはいっても、ここからのチューニングはわりあい速いと思われるので、権利面の問題がクリアできれば日本語対応は要望多数ならってとこはあるかもしれない。

自分の声を学習させたいけどね

少し脇道に逸れますが、当初このニュースを見たときには、ついに自分の声を簡単に学習させられるようになったのかと誤読しました。思ってた以上にその手の技術の実現が大変だってのは最近さしもの自分にもわかってきたので、なおさらそこをひとっ飛びかーい!と驚いたもんですが、倫理はさておき方法論と効率的な道筋が見つかるまでまだ少しかかるでしょう。

仮にそれが現実化したとするならボカロは真っ先に不要になります。特にそのライブラリー制作。もっぱら声主自身もしくはその所属事務所側のマターになってくるのと、あと権利面を考えると通常業務部分とAIにデータを食わせる作業のアウトソースがしにくくもなりそう。
新曲をボーカリストが歌う必要も覚える必要もなくなりますし、楽器の演奏に置き換えられるのであれば(口頭での表現にセンスさえあれば)ちまちまとダイナミクスを表現するための作り込みを行う必要すらなくなってきます。けっこう大部分で職を失ったり、あるいは音楽で表現することを夢見る人にも影響大でしょうね。

と、その一方でLogic Proの次期バージョン(おそらく国内では5/15辺りからアップデータのDLが開始…ただ、十中八九その日のうちにDLは終わらないだろうから、もう2,3日見る必要があるでしょう)に大々的にAIが盛り込まれると報道がありました。
箱を開けるまではどんなもんだかわからないので、現段階では憶測も憶測に過ぎませんが、少なくとも、𝕏にポストしたようにLogicの純正音源において20年来ピアノやら基本的な楽器のサンプルに大きな変化がないことを考えると、もしもそれらがリニューアルされるならば歓迎しなくてはいけません。
何にせよ、箱を開けるまでは何を言っても憶測の域を出ない。


ちなみにCM云々言われてますが、自分は「えっ」と思ったくらいで嫌悪感までは抱かなかったかな。CGだろうというのもあるし、何年も前に音効制作でリアリティ求めてピアノ破壊する話を聞いてたせいか、貴重なものを破壊することに対して、ある程度免疫があるのかもしれない。あるいはあんなこんなで大事なものを大事なときに失った(失わされた)経験で感覚が鈍くなってる可能性も。
自分の場合、雨ざらしで楽器演奏してるMVのほうがゲッと思います。もちろんモックないし3Dプリントしたものを弾いたり叩いたりしてるんでしょうけど、それでもゲッとなります。風邪引く心配も少し。


𝕏で色んな人のポスト(もっぱらイイネ順と思われるが)を読んでいくと、CMの表現が漠然と気に食わないとか、CGとはいえ楽器や機械をもっと大事にしろといった、近年よく「お気持ち」と評される領域での言及がある程度見られるようです。
それを見ていたせいで「う〜ん…?」となっちゃったんですが、具体性を言葉にできる人のポストを見かけてやっと、どうやら問題はそこじゃないっぽいと把握できました。
つまり、字面ママの引用は避けますが「クリエイターの創造行為自体を(婉曲的に)毀損している」と。これも深読みといや深読みなのだろうけど、実際にクリエイターとして仕事をしている人の目にそう映るのは妥当に思えます。批評としてはかくあるべきで、腑に落ちました。