Three-Body Tech “Kirchhoff EQ”

Three-Body Tech “Kirchhoff EQ”

Heavier 7 Stringsで知られるThree Body Technologyの新しい Kirchhoff EQ が評判いいようなので触ってみました(購入してはいない)。
感想としては、軽い、正確。実験的な面は拭えず操作性にも不満はあるものの、求める人の声に応え得ます。音作り用途にも使えるけど、ミックスでの補正用途寄りな印象があって、(AIは抜きにして)現在考えうるあらゆる手法が盛り込まれているといえそうです。

主だった機能はこんなとこでしょうか。

  • 位相へのケア(レイテンシーと引き換え)
  • A/B比較
  • ゲインマッチ
  • スペクトルの累積表示および解像度の調整
  • 最大117bit処理による誤差の軽減
  • ダイナミックEQ用のオーバーサンプリング
  • 標準EQと、名機にインスパイアされたモデリングEQ
  • M/Sバランシング可能
  • スレショを挟んだ両側でコンプ/エクスパンド可能なダイナミックEQ(サイドチェインにも対応)

マニュアルに記されているのですが、117bitはEQ処理による劣化を軽減する手法を一般的なPCで無難に実現する妥協点としての値。ただ、効果の発揮される状況をメーカーも充分把握し切れていないそうで、最後の選択肢とするのが現実的な使い方と見えます。

不満としては、右クリックの活用度が低いため行いたい機能に到達するのに手数が増えがちなのと、時折発生するプルダウンメニューの表示欠損、ダイナミックEQにおけるダブルエンベロープやDetect/Relativeのビジュアライゼーションのわかりにくさなど。おもに表示面。
緻密な設定が可能なだけに、設定状況を一覧で見られず、逐一クリックして確認しなきゃいけないのは気が散るよな、と個人的には思いました。

Fabfilter Q3とはカブる部分や凌ぐ部分が多いけど、Q3とは別の用途で使うかな、自分は(ちなみにWytse Gerichhausenがその動画の中でVolcano3をマスタリングに使いたいと言っていて、確かに今Q3を使うくらいならVolcano3を使うほうが音量調整の手間を省けるかもと思いました)。

ダイナミックEQのダブル・エンベロープとDetect/Relative周り、さらにサイドチェインが絡むと理解が混乱しますね。
まずAbove/Belowは、スレッショルドを超える/超えないを指します。それぞれRangeとRatioを別々に設定でき(これがダブル・エンベロープを称する由縁)、Rangeが負の値を取れるのが混乱の一要因になりそう。それと、その帯域がスレッショルドをどの程度AboveかBelowかが掴めないため適正な設定値を探るには結局耳が頼りになります。
Relativeは全帯域における指定帯域(バンドで指定した値もしくはRelativeの隣のFreeを押して設定した帯域)のパワーを指すもので、パーセンテージを上げるほど全帯域を参照する率が高くなります。
サイドチェインをOnにした場合は、サイドチェイン入力されているトラックの帯域を監視します。Relativeのほうのサイドチェインの帯域指定は、現段階じゃ用途が思いつかんです。