Sugar Bytes “Effectrix 2” , etc.

Sugar Bytes “Effectrix 2”

Sugar Bytesから10年以上ぶりにあたると思われるEffectrixのアップデート、Effectrix 2がリリースされました。EffectrixにはiOS版(https://apps.apple.com/us/app/effectrix/id681772221)もありましたね。

今回のアップデートでは、大まかな面で変わりはありませんが、ビジュアルやUI面、操作性と自由度に大きなテコ入れがなされた様子。

  • シーケンサーのステップ数の倍増
  • モジュレーションシーケンサーのアサインメニュー
  • エフェクトごとのカラーの設定
  • エフェクトの並べ替え
  • ステップごとの細かな設定
  • MIDIプログラムチェンジへの対応

同種のエフェクトプラグインについては、ReaktorのThe FingerやIllformedのGlitch 2など幾つかありますが、この種のエフェクトシーケンス(雑に言うと壊し系)の流行から既に10年以上経ってしまってることもあり、ニーズは大きくないかもしれません。
とはいえ当時と比べてパソコンの性能が上がったお蔭で、よりサクサクとエフェクトが切り替わるのを楽しめると思いますし、単純に(シーケンスでなく)設定可能範囲の広いマルチエフェクターとしてこのソフトを活用するのももちろんアリでしょう。

デモ版操作後のメモ。

  • CLAP非対応。インストーラにはMac版でもアンインストーラが付属。
  • 旧版もそうだったが、Swingに対応(cf. フィルタの動きでグルーブ作るには… – makou’s peephole
  • Stepの音符単位は最大1/2までで、3連符以外に付点音符にも対応。
  • デフォルトが複数ステップの同時編集になっていて、command(Mac)で個々のステップ編集となる。
  • LFOに対応したStep編集モードは、開始位相やデフォで非同期のLFOになっていてとてもよい。ただSpeedの設定値は(説明が面倒なので割愛するが)独特な解釈なので要注意。
  • Dry/Wetがシーケンス可能になったので、旧版のように一瞬だけリバーブをかけるみたいなギミックは少しだけ手順が面倒に。各エフェクトはインサートFXのていではあるけど、動作的にはセンドFXになる感じ。
  • Looper A, Looper Bは同一機能ではなく、前作でのLOOPとSCRATCHLOOPに当たる? Size設定可能範囲は1/256(旧版1/128T)までに変更。Envelope Followerに連動させた場合が面白い。
  • Spectrumは、32分割された各バンドのディレイラインを操作するもので、あまり聞いたことのない効果。ディレイタイムをいじらない限りはボコーダーのように機能する。
  • Filterは仕掛けがだいぶディープになっており、作り込みに凝れるぶん、思い通りの音にたどり着くまでが大変になったと言える。プリセットが備わってはいるものの、機能の割には数が少ないように思えるので、時間を見つけて、Filter専用のプリセットを量産しておくといいかもしれない。
  • Levelは単にレベル操作のみでなく、トレモロパン、ステレオウィズスにも使用可。かつリミッターも内蔵しているので便利。
  • モジュレーションシーケンサーでのコントロール対象が増強されたのはいいのだけど、個々のモジュレーションシーケンスがたぶん常時効きっ放しになってるようで、これは緻密な編集を行おうと思うと少々厳しい。Logicのオートメーションのように、各モジュレーション(エフェクトでなく)にもバイパスボタンが設置されてほしい。ざっとマニュアルを流し読みした限りでは見つからなかった。

何にせよ、こういう機能豊富で複雑なエフェクトプラグインを今のところバグもなく動作可能にしている技術はさすが老舗だと思いました。

Sonic Chagrge “Synplant 2”

半年ほど前に予告のあったSonic ChargeからSynplant 2が遂にリリースされました。

旧バージョンを持っていなかったため、いただいたNFRでの初体験となりますが、まあ摩訶不思議です。
基本的にはFMシンセ的な音が発せられ、キーごと、またはベロシティ、音域ごとに違う音色を鳴らせることになります。が、プリセットを聞いてもどうしてそんな音が発せられるのかがわかりません。おってマニュアルを翻訳しながらじっくり仕組みを見ていくことにします。

醍醐味はGenopatchと称される機能で、動画でも確認できるように、放り込んだ素材を元にして分析が行われ、素材の音色に近づいていく形で音色がニョキニョキと随時形成されていきます。
「どういう素材を放り込めばどういうふうに分析され何が起きるのか」がまだわからないので、使いこなせるようになるには少し時間が必要そう。そのぶん今までに聞いたこともない音色が手に入る可能性も高いので、オリジナリティを重視する方は挑んでみるといいでしょう。

追記

マニュアルやデベロッパーのサイト、あと開発者による動画、Forumでのアナウンス、旧バージョンのマニュアルひっくるめてざっと目を通したところ、表層的な機能として旧バージョンからそこまで大きなアップデートはないものの、MPEへの対応やマイクロチューニングなど、現代の制作環境への適応やパフォーマンスの改善による効果はかなり大きいと感じました。

上に記したGenopatch機能は、手持ちのオーディオファイルを食べさせるとそれに似た音色の再現を最大4つの方法で試みるらしく、この工程を眺めていると何か愛着のような感情がくすぐられます。シンプルなシンセ音の再現は高速に処理され、ちょっとややこしい音になると試行にかなり苦しむ様子が見て取れます。
開発者自身も言っているように、完璧には真似られないそこにこそ、このプログラムの価値があると。これはまさしくその通りだと思います。いや、もちろん試行の末に充分似た音になるんですが、そこに達しちゃうと、こちらはむしろ「だからどうした?」となっちゃうんですよね。音作りの大変さを一度でも味わったことがないと、このAIの動作の面白みはちょっとわからんかも。

で、実際ここから発せられる音が実用的かどうかって点でいうと、(どういう音を期待するかによりますが)メインを張るような音、バッキングを担うような音としては少し弱い。それを求めるならもっと都合のいいシンセがあります。こっそりと、しかしアピールのある音色を作るものとしてはこれを凌ぐものはないでしょう。しいていえば、Max4Liveで音色を自作して鳴らす印象に近い。

MoogはBehringerにも売却の相談をしていた

InMusicへの売却が決まりスタッフの削減に至る前、Moogは友好関係(have had a longstanding friendly relationship)にあったBehringerにも、財務状況含めた情報を共有し売却の相談をしていたらしい。とはいえBehringerは低価格帯にこだわりが、Moogは高価格帯にこだわりがあって、計画は実現しなかったとのこと。
MusicTech誌の記事にEmbedされたFacebookやX(旧Twitter)のポストは見られなくなっていますが、SYNTH ANATOMYの記事のほうには引用があるため、経過がある程度わかるようになっています。