Spitfire Audio “Fractured Strings”
Spitfire Audio から新作 Fractured Strings がリリース。最近けっこうガツガツと新しいのを出してきますね。
Fractureとは割れ目や裂け目のことを指すので、グラニュラー的なストリングステクスチャー音源かと思ったのですが、そうではなく、単音ずつのMIDIノートをキースイッチでうまくコントロールして旋律を紡ぎ上げていく従来の方法と違って、小さなフレーズ塊を作って繋いでいくことによって、指揮棒を振るかのような感覚で流れるようにフレーズを組み立てていく、そんな新手法を搭載したものらしい。
インターバル(音程差)はベロシティで、抑揚はソフト内のスライダー(モジュレーションホイールに相当?)でコントロールする、一種のコロンブスの卵的な発想。
フレーズ塊ってことはバリエーションの収録サイズがとんでもないことになるのではと思ったら、トータルでも88GB程度と、おそらくソフト的にかなりテクニカルな仕組みのようです。Kontaktではなく、Spitfire Audioのソフトで動作するからこそできたんでしょう。
アルコによる連続フレーズだけでなく、スウェル、ピチカート・ストラムなど、特有と言える表現が詰まった魅力的な内容。
BBCドキュメンタリーで真正面から向き合ったサウンド
そもそもがBBCの自然ドキュメンタリー、Frozen Planet II(日本では見られないっぽい)を機に開発されたもの。前作では極地の生態系が、IIでは加えて極地の住生活に忍び寄る気候変動が取材対象となった映像作品と記されています。
その映像用の音楽として、Hans Zimmer率いる作曲集団は、雪の結晶のように音の構造体が凍ってつながる(細胞がつながって組織となる、ある種、地球を一個の生命体と考える思想ともつながるのかも;私自身は’思想はあくまで思想’というスタンスです)音楽を思い描き、それが本製品のコンセプトにつながり実際に映像に用いられているとのこと。現代音楽的表現手法であり、表現と映像とを連結する発想法としても秀逸。