Spectrasonics “Keyscape”

そのニーズに関しては若干の疑問

Spectrasonicsから新たな音源として Keyscapeがアナウンスされた。

Spectrasonics – Keyscape – Collector Keyboards

「10年掛かりの取り組みだった」と紹介されている。
9/12からの発売で、パッケージ版、ダウンロード版ともに$399、日本円で4万ちょっと。
Omnisphere 2を持っている場合は、OmnisphereのSound Libraryとしても操作可能だが、ホストアプリケーションが64bitで動作している必要があるとのこと。
ホストアプリが必要だということはスタンドアローン動作しないということかな。MainStageみたいな使い方ができないのは少し残念でもある。

それはその音でいいのか、しかし代用がない

この日記でも何度か取り上げたCory Henryをはじめ、Zac Rae, Tony Beliveau, Greg Phillinganesなど新旧の名立たるキーボーディストの試奏し絶賛する動画がアップロードされている。

個人的には、史上最大容量の鍵盤楽器のライブラリーと今日び紹介されても、Native Instrumentsにも結構データサイズがかさむ音源が入ってるしなあと、食指が動くには至らない。今のところ。
特にピアノなんかは丁寧にサンプリングされても、ノイズ混じりの強打音なんかは迫力不足になってしまったりで、几帳面な演奏に限られるならライブにもあまり向かないんでは…と思わされてしまう(ホストアプリが必要ってとこ煩わしくなっちゃう)。
Coryの試奏中、動画だと6:00辺りからサスティンペダルを一度放してもう一度踏んだ際の音が何度か聞こえるのだけど、実際にはああいう鳴り方にならないわけで、やっぱなんか違う…という感じ。

サウンドのリストにあるMKS-20は意外と珍しい。
今までで1度だけMKS-20のソフトウェアサンプラー用データを見かけたことがあるのだが、有志がサンプリングしたもので残念ながらクオリティが低かった。
そうした有志のサンプリング、この1年くらいでがぜん増えた気がするんだけど、正直なとこ使いものにはならない感じで、在野にそういうエンジニアは少ないんだなと思わされた。
あまり稼ぎにならないからしょうがないんだろうな。研究所みたいなのがほしいと思わないこともない。

リッチな音源は単純再生されるほど現実離れしていく

そういや比較的最近ここに書いた記事にて目下の不満を綴ったように、Spectrasonics社製品は基本的に贅沢に音素材を収集してシンプルに再生するサンプラーなわけでね。

Spectrasonics Omnisphere 2のUser Audioがそっけない

それを言うと、ほぼ全てのソフトサンプラーは素材レベルに切り込むまでの加工はできない(いま、僕が思うように音を作れなくてゲンナリしてる理由の一つはそこかもしれない)ので、Spectrasonicsだけをあげつらっても仕方ないのだけど。

…などといくぶんネガティブに考えながら動画を見続けて、1つだけ「そうそう、そういうサウンドが欲しかった」ってのがあり、我に返った。
動画の25:19で聞けるアップライトピアノの音。
ハンマーダルシマーと合わせたような、ハンス・ジマーを思わせるような時代を感じさせる音で、今まさにこういう音で構築したくて仕方ないトラックを作っていた最中だった。

なお、SpectrasonicsのEDU Programはいわゆる値引きではなく(教室内などで)コピーフリーの仕組み。
昨今ダンス教室にお客さんを奪われやすいピアノ教室さんのコスト削減にはいいかもしれない。


結局導入

作成中のアルバムに使用したいただ1つの音色のために購入した。
リリース即日購入したけどインストールコンテンツのDLが終わったのは今朝。
一度、ちょうど半分くらいDLが済んだところでソケットエラーの表示が出て、「すわ、最初からやり直し?」と思ったけど、レジュームできていたようだ。

インストール

インストールが開始するとフルインストールするかライトインストールするか質問されるので都合のいいほうを。
OmnisphereのライブラリがインストールされているSTEAMフォルダに、Omnisphereのライブラリと並列される形でKeyscapeのデータがインストールされる。私の環境では外付けのHDにSTEAMフォルダのシンボリックリンクの本体がある(リンクの設定方法は割愛)。

オーサライズ

インストール完了後は通常のSpectrasonics社製品と同じ手順でオーサライズを進めればOK。
念のため書いておくと、Keyscapeをまずインストゥルメントとして立ち上げ、Challengeコードをコピーし、ウィンドウ中のリンク先に飛ぶ。
Spectrasonics社の製品オーサライズ用ページで必要項目を入力し、コピーしたChallengeコードをペーストして次に進むと、Responseコードが現れるのでこれをコピーする。
Keyscapeのウィンドウに戻ってResponseコードをペーストし、CONTINUEを押したあと、いったんKeyscapeをアンロードして、もう一度挿し直してオーサライズ完了。

OmnisphereでもKeyscapeは見えるが

OmnisphereでもKeyscapeは見えるが

なお、オーサライズ前にKeyscapeを立ち上げずOmnisphereを立ち上げると、「Keyscapeのデータが見つかったのでオーサライズしてくれ」と表示される。これをDismissすると何事もなかったかのようにOmnisphereの画面でKeyscapeのデータに辿り着くことはできるが、音はロードできない(が、どうもOmnisphereをアップデートしていなかったことが原因である可能性もある)。

画面構成

Omnisphereよりも楽器の画像が大きく表示され、各設定項目は下にだいぶ小さめに表示されている。楽器のお勉強にもいくぶん役立つ感じ。

他のSpectrasonics社製品つまりStylus RMXやTrilian、Omnisphereとの大きな違いはMulti(=Multitimbre)のモードがないこと(だけどマルチ出力音源として認識されているので音色の中のどれかはマルチ出力可能なのではないかと思われる)、およびエンベロープやフィルタ、アルペジエイターなどといった作り込み要素がないこと。
なので、よりいっそう”再生専用”の趣が強い。

もちろんOmnisphereでKeyscapeのライブラリを読み込むことはできるので、作り込みを深めたい場合にはOmnisphere一択でインストゥルメントを立ち上げるのが賢明と思われる。
なお、Keyscapeのリリースと同時にどうやらOmnisphereもアップデートされているようなので、まずはこのオーサライズもしておきたい。

注意しておきたいのが1点。Logic Pro純正音源や準純正音源は、たとえばAlchemyなどのように、同系、正確には内部的に同一な音源を差し替えた瞬間に音色内容を保持して互換性を維持する親切設計になっているのだが、OmnisphereやKeyscapeなどサードパーティ製音源はその限りでない。
ただ、Keyscapeでプラグインパラメーターを「コピー」しておけばOmnisphereに「ペースト」できるようではあるし、Keyscapeの設定をプラグイン設定ファイルである.aupresetとして保存しておいて、それをOmnisphereで開くこともできる。

Up to Date

Check for Updates.

Check for Updates.

データの整合性はアップデートチェックで行いたい。ウィンドウ内右上のSpectrasoncisのロゴをクリックするとソフトウェアのバージョン等が記されたアバウト画面に遷移し、CHECK FOR UPDATESのボタンをクリックすると、Spectrasonics社のページに飛ぶ。
URL見ると単純にバージョンが引数として渡されているだけなのだが、大した個人情報でもないので気に病む必要もないだろう。

サウンド

各音色のサウンド感だが、まれにアタックに歪みっぽさが感じられるものの、おおむね毒気のないピュアな音という感じ。
ベロシティレイヤーもかなり細かく、そのぶんMIDIキーボードとの相性いわゆる不気味の谷現象的な意味合いで問題になりそうだけれども、まずはすごくよく出来ている印象。

ピアノの音に関しては、先のデモでも感じた通りメゾフォルテくらいの強さで早く弾いたときやフォルテシモで和音をガッと弾いたときにリアリティががぜん無くなり、少しデジピに近い響きになる。
とはいえ、他のオケに混じったらそんなに気にならない。
またメモリ効率面では中の上くらいだけど、これだけの質感が出るなら、必要に応じてKeyscapeをチョイスする方針で使えばいいんじゃないかなと。

白眉はやはりDuo音色で、ピアノ+エレピって音色はたいがいのソフトウェア音源で「80s’ Fusion Piano」や「LA Pop」といった古臭いくくりで収録されていたりするのだけれど(Keyscapeでもそんな名前になってはいるものの)、音がクリアなだけにそんなに古臭くは響かない。
そしてやはり先のデモで感銘を受けたプリペアド・ピアノっぽい音色もとてもよく響き、まあさすがに何度も使うと「またこれかよ」って言われちゃいそうなので一発屋として使わざるを得ないけれど、ここぞって時に使うといいかなあというところ。

たぶんいちばん都合のいい使い方は、Cinematicな楽曲やPiano Ambientに用いるケースだろう。あとは汎用な感じでファンクバンドでクラビを鳴らしたりってとこかな。でもPAが”わかってる人”じゃないと、キーボードなんかは片手間にすぐ痩せた音として作られてしまうので、私の地元じゃ出番ないなと思う。

操作性 ★★★☆☆
レスポンス ★★★★☆
音質 ★★★★★