Spectrasonics Omnisphere 2のUser Audioがそっけない

Omnisphere 2で新たに、ユーザー自身が用意したオーディオファイルを読み込めるようになっていて、まだ使ったことないので試してみます。

Omnisphere 2がそもそもよくわからない人向けの説明

Omnisphereの構造

Omnisphereの構造

Spectrasonics社製品を初めて使ったという方のために記しておくと、Omnisphere 2は2つまでのサウンドをレイヤーで重ねられるセットを8つまで作ることができ、上段のMULTIボタンで表示されるMIXERを通じて、各セットにMIDIチャンネルと出力先とを設定できるようになっています。
ゆえに、セット同士を同じMIDIチャンネルにすれば最大16レイヤーを都合鳴らせることになります。

各セットを見ると…というか、それが起動して最初に現れる画面ですが、OMNISPHEREのロゴすぐ下にあるのがPATCH名で、ここをクリックするとPATCH BROWSER画面が表示されます。
プリセット音色はここから選ぶことになります。
その下にあるAとBがレイヤーで、それぞれOSCILLATORからSAMPLEかSYNTHのどちらかを選びます。
SAMPLE選択時は中央インジケーターをクリックするとSOUNDSOURCE BROWSERの画面になり、SYNTH選択時は中央インジケーターをクリックすると音色リストのプルダウンが現れます。

PATCH BROWSERとSOUNDSOURCE BROWSERは見た目がほとんど変わらない点に注意が必要。
以前からそうなのですが、下手をするとレイヤー音色をエディットしてるつもりでPATCHごと切り替えちゃったりするので、集中して作業しているときほどかえって危険。
Compareで戻すにも限度があるので、せめて背景色だけでも変えて余計な心配をユーザーから拭うべき。設計不良といいたい。

USER AUDIOの仕組みはとてもそっけない

さて、USER AUDIOについて実はSpectrasonicsのサポートページに次のように記されています。

Why isn’t Omnisphere playing my loop crossfades? They play fine in my sampler.
(なぜOmnisphereは私が取り込んだオーディオファイルをクロスフェードループの形で再生してくれないのか。私のサンプラーではきちんと再生されているのに!)

Omnisphere does not read sampler settings. Loop crossfades must be rendered to audio before importing.
(Omnisphereはサンプラー側のセッティングまでをも読み込むことはできません。ループのクロスフェードは実ファイルに反映されている必要があります)

たとえばLogicでのEXS24、LiveのSamplerだと下図のように事後処理用(俗にいう”非破壊編集“)のクロスフェード設定があって、実際のファイルを書き換えることなく’ループ箇所でグリッチが乗らないように’することができます(むろん逆にクロスフェードの値を0にして故意にループでグリッチさせる方法もあります;が、ループポイントを思い通りにオートメーションさせられるようなソフトサンプラーはきわめて少なく、あまり効率のいい手法とは言い難い)。
つまりEXS24やSampler自身が担ってくれる処理であり、サポートページでいう「サンプラー側のセッティング」にあたります。
USER AUDIOにそんな親切機能はありません。クロスフェードをかけたいなら、オーディオファイル自身にクロスフェードをかけてループマーカーを設定したものを読み込んでください」というのがここで述べられている内容です。

実際、USER AUDIOの機能をざっと試してみるとわかりますが、クロスフェードどころか、ここに放り込んだファイルがどこに保存されるのかも明示されず、あるいはオーディオファイルの頭に無音部分があれば実直に無音部分から再生開始してくれたり、と。
この気の利かなさはAUSampler(下図)を思い出さずにいられません。

とはいえ、僕のような昔気質の人間にとって、こういう気の利かなさは逆に懐かしくもあります。
ヘッダだけまともで中身がグリッチでグチャグチャなオーディオファイルをぶっ込んでやろうなどと、よからぬ思いで血が滾るのです。

クロスフェードループをオーディオファイルに設定するなら

結局Omnisphere 2上でオーディオファイルのエディットはできないので、何らかの波形編集ソフトを使います。

ここではDSP-Quattroを使います(なぜかMac買い換え後、Sound Forge for Macが起動しなくなってしまった;ググってもクラックの方法ばかり引っ掛かるが知りたいのは正規の方法だ!)。
と、USER AUDIOはどうもマルチサンプリングつまりキースプリット(Key Split)とかベロシティスプリット(Velocity Split)に対応している気配がないので、そもそもなるべく低い音程でかなりデュレーション長めのファイルを取り込んだほうが再生時のサウンドクオリティがよさそう。
ちなみにサンプリング周波数を192kHz辺りにして劣化を最小限に抑えるというのは、理屈としてはアリですが、サンプリング対象がそのサンプリング周波数より精細なデータであるときに効果を発揮するのであって、クオリティの低い音を対象にした場合だとより忠実に‘クオリティの低い音’として記録されるだけであまり意味がありません。下手な演奏をハイレートでレコーディングしても上手く聞こえるわけじゃないのと同じ。
というか、Key Noteより低い音程で鳴らすハメになったとしてもAlchemyほどカスカスになるような劣化は起きない印象があるので(何らかの特殊な補間処理が行われてるのかしらんですが)、音程については極端に心配する必要がないかもしれません。

その昔は、Auto-tuneで有名なAntaresにInfinityというループ専用の非常に秀逸な波形編集ソフトがあったのですが、もはや過去のものでしかないので、クロスフェードの美しさへのこだわりはもう捨てたほうがよさそう。

基本的には、EXSやKontaktなど既にどなたか偉い方が作られたオーディオファイルを放り込んであげれば、最初からループマーカーが設定され、美しいクロスフェードが施されていますんで、つつがなく活用できるはずです。
ただ、近年はサンプラー用のオーディオファイルとしてスプライト方式(Consolidate)のオーディオファイルが非常に増えてきてますんで、一筋縄には行かない場合も。
そうした場合、わざわざサンプリング用に改めてMIDIで打ち込んでバウンスして、いま書いたようにループを設定するという昔カタギな方法を取る他ありません。

ちなみに、この先、Pitchedな音色のループについて日記で触れることもないと思うので、この機会にPitchedな音色のショートループについてロストテクノロジー的に記しておくと、1,2,4,8…と2のn乗(n≧0)の周期でループポイントを設定するのが吉。
何故かというと万が一ループポイントでグリッチが乗っても、そのノイズが音程の一部になってグリッチが目立たなくなるから。

と、こんな形でUSER AUDIOに放り込んであげれば…、今のところInharmonicな上ファイル名も抽象的なためにどうしても一か八かの使い方をせざるを得ないOmnisphereの実用性をもう少し向上させることができるかなと。