最近思った色々をまとめちゃったので長い上に取り留めのない自問自答。
Glassy が出ましたという前置き
SamplesonってメーカーがVST, AU対応のエレピ音源、それもFM音源系のキラキラしたサウンドを中心としてまとめた Glassy って音源を出したのです。
価格、一応書いておくと定価$29でイントロ価格が$19。日本じゃあまり需要ないかもしれない。
GEARNEWSが見出しとして書いている(Glassy – spectral modelled electric pianos and pads from the classy 90s – gearnews.com)ように90年代を再現できる代物といえます。
この手のFMのエレピ音色は動画サムネにも見えるDX Tines等の音色名で多くのソフトに収められていて、鳴らそうと思えばすぐ出せる音色。
で、ありながら「もうちょっと…何か…」と思って細かくカスタマイズしようとすると、そもそも音源がFMではないなど手詰まりしやすい。
NIのFM8(用のDX7のファクトリープリセットのパッチがかつてどこかにアップされていた)やDEXED(こっちはデフォでDX7の音色が入ってる)だと、元音はいじれるものの、アウトボード類を用いたようなサウンドメイキングまではカバーし切れません。つまり素の音止まり。
結果、ある程度加工済みのFM音色を収録したPCM音源ライブラリーを曲で使うことになるのです。うちでは。
うねりエフェクト
以前からたまに書いてはいることで、うねり系のエフェクトってプラグインとしては地味に手薄な領域で、サードパーティ製品が少ない。
今の音楽で忌避されがちなうねり系だけど、いざ使うとなるとDAW純正のエフェクトしか選択肢が無くて、パワー不足を感じることは案外多い。
もちろん雰囲気醸成にあたってうねりエフェクトだけが課題ではありません。
自分にとって今どうにかしなきゃ先に進めない目下の課題がうねりエフェクトっつう話。
先日、昔ながらの出で立ちをしたLurker Chorusってのがフリーで配布開始されて、これこそ昔のChorusのかかり方って感じでなかなか良かった。とはいえ、いま仕事でその手の音を求められることは無いのでうちじゃ死蔵。
Virusのフェイザーを真似たAdam SzaboのPhazorを使うこともあります。ちなみに心の中でずっと麻布茶房(麻布茶房 | 株式会社 甘や)と呼んでましたが、アダム・スザボと読むのが正しいようです。
これら以外は純正もサードパーティもデジタル臭が強くていまだに使用に抵抗あります。
ちょうどよく加工で劣化するものをよいソフトとするか、劣化を最小限に食い止めて加工するものをよいソフトとするか、って問題ありますね。これに対する結論を僕は持っていず、その時々でとしか言えません。
今に転写していえば、明らかに歪んだミックスを「だからこそよい」というかどうかって話で、メタチックに考えれば考えるほど結論を出しにくい。
再現を試みる自分、再現を眺める自分
数年前から80〜90年の洋楽AORをカバーするバンドに頻繁に駆り出されるのですが、あの時代ってとにかく音を重ねたり音を加工する時代で、カバーするとなるとキーボードだけでなくギターも何もかも再現にあたって労力(および結果の徒労)がでかい。
で、やっぱりシンセ音色は頑張って今の楽器を細かく設定して弾いても当時の音まんまになりません。近づける努力はもちろんしますし、フレーズのアーティキュレーションも真似ますし、テンションで複雑になった和声もなるべく再現します(自分も作り手なので、考えた結果選んだフレーズを安易に変更されるのは嫌だから、明らかに自由度が高いセッション風の曲でさえなければ再現度をある程度重視する)。
その立ち位置から見てGlassyのクオリティがどうなのかと考えると、わかんねっす。
日本のシティ・ポップは、なぜ世界中のリスナーを虜にしているのか? | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)というレトロ嗜好、”っぽさ”を求めるチュートリアル(Propellerheadによる Vaporwave曲制作のチュートリアル – makou’s peephole)といったトピックや、ブームとまったく別口で90年代っぽい音が好んで使われるゴスペル・ミュージックがあるのを、As it isとして見る以外に言えそうなことは何〜にもないですわ。
最近乏しい素材
FMエレピの音をフィーチャーした音源は幾つかあって、自分の観測範囲で比較的評価高く見えるのはGospel MusiciansのFM TiNESとか?
これらの製品に限った話でなく例えばやっすいデジピでも全く同じこと言えると思うんですが、弾く人が上手ければ少々引っ掛かりのある製品を使っても素敵に聞こえますし、そうでない人が使えばそれなりにしか聞こえません。
この2つ、バージョンやプラットフォームに相違点あれど、仮にそれを統一してもたぶん結果は一緒だろうと思います。1つ目の動画の人のレビューのほうが購買意欲が湧きます(実は同じ人だったりして)。
それで、また別のソフトなんですけど、DopeSONIXってメーカーがPlugin BoutiqueでHip Hop向けのBass音源をセール価格で売ってるってニュースを見たのです。
Hip Hopは僕の守備範囲外で基本的に興味ないのですが、紹介動画を見たら、
少なくともいい音質には聞こえません。
元音が良くないのか、動画の音声圧縮のせいで良くなくなっちゃってるのかわかりませんが(YouTubeのレビュー系動画は大概そう)。
毎日のように乱発気味でリリースされる様々なサンプルパック(いわゆるサンプリング素材)って、いま好まれる音を寄せ集めた結果どれも似た感じになってて(違いがわからないって意味ではない)、お蔭でかえってこの動画で聞けるような比較的オーガニックなドラムサウンドを欲しいと思っちゃいましたよ。
実際のサウンドクオリティはわからないけどね! デモを落として試そうと思ったら「お前、これすげえから買え」としかページに書いてないんですもん。
自分の好みがメインストリームのそれじゃないから仕方ないんだけど、こういうオーガニックな音を使って(Hip Hopではなく)今までと違う何かを作ってみようかなと思っても、リスニングに堪えるレベルの素材がないってのは少し悲しい。ミックスでどうにかできるレベルかどうかはさておき。
売れ行きのいい本しか置いてない田舎の書店に来た気分っていうか、全世界的に田舎になっちゃったのかなっていうか、場末の好事家のつもりではあったがここまで追いやられるもんなんだ…と。
しょうがないからこの間買ったMODO Drumをとんでもない設定にでもして打ち込んで作るか…って、これじゃブレイクビーツのサンプルパック買ったら結局それは打ち込みデータで、グルーブも何もあったもんじゃねえな、ってのとやってること一緒ですわな。