この日記では何度か取り上げてきてる Roth-AIR 。
早い話が、高域に元気が欲しいときに原音の周波数分布に似たノイズをトリガーで鳴らす代物で、基本的には処置用途のもの。
長らく更新されていず、最新のmacOSじゃ動かない(xattr -rc で動きました)ってことで、別に無いと作業できないってほどでもないけど、同じような処理が必要になったときにどうにかできるんじゃろかと思って試してみました。
考え方としては、まずノイズを常時再生させ、エフェクトをかけたいトラックの音量に連動させればよさそう。
以下、手順ではなく、試してみたプロセス。
- インストゥルメントでなくエフェクター扱いのTrack Oscillatorをエフェクトスロットに挿してみる。おや? モノラルオンリーなので潰しが効かないな。
- ES2でノイズ(OSC3でのみ設定可)を設定してトラックにMIDIノートを置き(MIDIを使うのはできれば避けたかった)、サイドチェーンで元トラックの音量を拾ってAmpにEnvelope Followさせようと思ったら、うまくAmpに反映してくれない。
- ES2据え置きのまま、エフェクトスロットにPhat FXを挿し、ノイズの帯域を狭め、エンベロープフォローをさせて操作性の向上を期したが、いかにもトリガーで鳴らしてる感が満載になった。
- 周波数分布の影響(重み付け)を受けたノイズを出させれば「いかにもトリガー感」が薄れるのではってことで、ES2の代わりにEVOC20(上のスクショのでなく、インストゥルメントのほう)を挿してみたら、ノイズのみをオシレーターとして使えなかった。
ということで、欲しい感じになかなかならなかったんですが、この辺が関の山かなと思ったのが上のスクショのやつで、
- ES2でノイズを出し、
- EVOC20(エフェクトのほう)でサイドチェーンからの入力を周波数分布に反映させ(※ボコーダーなので、エンベロープフォローさせる必要はない)、
- このままだと上の帯域が足りないので、ExciterをDry Signalオフの状態で挿してピークを移動する
という仕組みにしてみました。
これを元のトラックとミックスバスで統合して、わずかに効果がわかる程度までバランスを調整すれば、他のトラックではあまり使わない帯域に子音成分が残って聞き取りやすくなるってことですね。
元に存在しない成分を捏造する手法とはいえ、元のままをEQ等で無理やり上げると耳に痛いだけになってしまいますんで、元の音が巧く録れていなかった場合や、サチュレーション的な手法でも上手くいかなかった場合に、そのオルタナティブな方法として用いると考えたほうがいいかもしんない。
ちなみにEVOC20はTrack ModeがCepstrumの状態になっているほうが安定します。
相変わらず、ここに勝手にボーカルトラックを実例として貼れない(本人やレコスタの名誉のため)んですが、結果としてはそこそこ似た感じになりました。
iZotopeのVocalSynth 2だとどうかなと思って似たような組み立てで試してみましたが、なんか違いました。
なお、Exciterが必要になったことからも察せられるように、ネックはEVOCがカバーする帯域が狭いとこ。ハイレゾ上等、Apple Musicの時代にこれはないですね…。10年以上も手が入ってませんし。
Ableton Liveで似たようなことをしようってのであれば、サイドチェーンも要らず、純正のVocoder一つでどうにかできることになります。

CarrierをNoise(デフォ)にして、Rangeを上に寄せつつBWを上げてムラを減らし、あとはDry/Wetでバランスを調整する、と。耳に痛い感じはEnhanceスイッチのOnとRetroモードへの切り替えで軽減できるはず。
同じくらいの性能がLogicのEVOCにも備わってくれたらいいんですけどね。
と、だらだら書いてみましたが、まだうちじゃRoth-AIRを使えるOSなので、ただのチャレンジ記事でした。
仮にOSのアップデートをしたところで他にも高域増強の手法はあるんで、「そっか、Roth-AIR使えなくなったか」で済みそうなスミソニアン博物館。