Linux, Mac, Winといった多くのOS下で動作し、ソースコードも公開されているプラグインソフトシンセ Helm Free (Matt Tytel)が、なかなかユニークなサウンドで良いです。
少しモタりを感じるのでシビアに作りたいって人にはもどかしさがあると思います。
音質
なかなかいい歪み方をしてくれます。古き良き、みたいな。
近年のソフトウェアミックスは、Filterやその他の設定値に起因する出力過多をDAW側(またはサードパーティプラグイン)で制御するのですが、これだとまとまり過ぎてつまらなくなっちゃうなと最近感じてたので、ソフト内で歪んでくれる(ひさびさの)この性質が刺激的に感じられます。
オシレーターとLFOの登録波形(LFOのほうにはSampling & HoldとSampling & Glideが加わってる)に組み込まれた中で3step, 4step, 8stepの鋸歯波、3pyramid, 5pyramid, 9pyramidの三角波はかなり味わいがあります。事後処理的にreduxするエセ8bitサウンドとはまるで違う実に素直な音ですね。
実用性はもう少し試してみないと判断し難いのですが、面白いとこに目をつけたなあという印象。
いずれも歪みを招くものなので、ピュアな音を好む人には向かないかもしれません。
その他
パッチルーティングは、ヘルメットアイコンを点灯させてノブを動かすことで設定します。
FXpansionのSynthSquadみたいなUIですが、これは説明がないとわかりにくい(マニュアル未整備っぽい)。
Delayタイム変更したときにDelay音がキュンキュン鳴ったりボワボワ鳴ったりするいわゆるドップラー効果の速度。程よい速さがどんだけだかわかりませんが、これはバグといっていいくらい猛烈に遅い。
ただ、独特の味わいとしてはこれ以上ないキャラクターだと思うので、できれば改善してほしくないですね。
オシレーターの下にあるUNISONエリアの右上、何の説明もなく「H」とありますが、設定ファイルなりソースコードなり見るとわかるようにHarmonize(倍音)ですね。倍音の周波数での発音が加えられるという、DiscoDSPのVertigoみたいなもんです(cf.Vertigo vs Harmor vs Alchemy – YouTube)。
ただ、ユニゾン機能って思いのほかCPUを食うのが実情で、さも軽量快適のように見えるNI Massiveでも8ユニゾンくらいから実用にキツくなったりします。一方、Lennar DigitalのSylenth1やTone2のElectraXみたいにサウンドの雰囲気を充分に保ちながらサクサク動くものもあって、厚みを出すのに負荷のかからないシンセ選びは個人的にも近年頭悩ますポイントだったりします。
なお、残念ながら現バージョンではオシレーターの発振位相が固定なので厚めのUNISONをしようとするとフランジング効果が得られるだけのようです。
Audio UnitsのValidationにFailする場合は、こちらをご参考に。
ということで、モタりと発振位相の問題が僕的には難所で、この2つさえクリアされれば次の制作にすぐ使ってもいいかなあという感じでした。Freeにしては充分よくできてますね。
改造にあたってはこちらを。