先日、とある案件で使いやすいPan Flute音色を求めて手元を探したら案外なくて、AASのChromaphone 2でパイプ音色を作ってLogicのEXS24インストゥルメントにするってことをやりました。
結局はその音色を使わなかったんですが、作業手順をお見せしても面白いかなと思ったんで記します。
物理モデリングの音源があるのにそれを使わずサンプリングし直す意味について触れておくと、
- DAWの処理負荷軽減
- 出音の安定性を確保
- 制御効率の向上
➠ その音源に特定の機能がないなら別の機構用に音色を移植するのが得策
ってとこ。
今回は上記1,2はもちろんのこと、昔のアナログシンセのように、レガートしなくてもポルタメントが利く音色にしたかったのでサンプリングし直したのだけど、考えてみたらこれに対応するサンプラーソフトが自分のとこにはなさそう(Kontaktでできたかな…?)。
とりあえずEXSに音を突っ込んで鳴らしてみることにします。
目次
Chromaphone 2でパイプ音色を作る
ChromaphoneはAbleton LiveにCollisionの名でも備わっているわけだけども、いずれにせよピッチがあまりよくありません。
そこで自由度は減ったものの音程楽器としては扱いやすくなったChromaphone 2を素材とします。
設定はスクショの通りで、Noiseにチェックを入れてClosed Tubeを並列にしました。
ビール瓶を吹いた音に近いのでPan FluteというよりBottle Blowですけどもね。
ちなみにLogicのSculptureでついでにモデリングを試してみたらオカリナっぽい音になりました。
Chromaphoneと同じメーカーのTassmanは発売当初は先鋭的なモジュラーシンセで、Flute Typeというのが非常によくできているものなのですが、2017年の今となっては全体的にくすんだサウンドに聞こえてしまうので選外。
サンプリング用にノートを書いてスライス
こういうときわりとよくやるのが、3半音のインターバルで並べていく方法。
EXS化する3つの方法
新規サンプラートラックに変換
アレンジメントウィンドウ上でリージョン群を選択して「新規サンプラートラックに変換」すると、EXSのインストゥルメントが生成されます。
利点
- インストゥルメント化するまでの手順がラク
- 単一のオーディオファイルで読み込まれる(スプライト)
欠点
- 今回のようなサンプリングを目的とした場合、音程とサンプリングのゾーンをアサインし直さないといけない(後述)
注意点
- トランジェントマーカーを使用したスライスは素のオーディオファイルに対して行われるため、flexが利いた状態のオーディオデータに対しては間違ったオーディオスライスを生成してしまう
回避するにはflexが利いたオーディオデータを「新規オーディオに変換」してから行う
要するにフレーズサンプリングされたものをスライスするのに向いているものの、音程楽器にとっては都合がよくない。
新規オーディオに変換後、新規サンプラートラックに変換
上の方法と次に挙げる方法の中間。欠点も利点も上の方法と特に変わりはない。
新規オーディオに変換後、外部ソフトでいったんバッチ処理してインストゥルメント作成
各ゾーンで音量に差が出てしまったのをバッチ処理で均一化したかったので、各オーディオファイルを外部ソフト(うちではAudioFinder)のバッチプログラムでノーマライズしました。
いったんLogicのプロジェクトを閉じる必要があるものの、曲をトラックダウンする際にいちばん不安のない形式になります。
またオーディオファイルをアサインするときには新規サンプラートラックでは選べなかった「ゾーンの幅」を設定できるのでラクです。
ゾーンのリアサイン手順
既述の通り、「新規サンプラートラックに変換」という近道を通ると半音ずつのキーゾーンにアサインされてしまいます。
これをアサインし直す(リアサイン)のは地道な作業で気が滅入ります。
そこで、僕がやってるラクな方法をお伝えします。何手で山を移動するかっていうパズルみたいなもんです。
- 半音ずつになってるキーゾーン全てを選択し、その□の端にポインタを持っていくとドラッグで範囲を変更できるようになるので、ここでは□の右端にポインタを合わせ右方向にドラッグしてキーゾーンを4半音に広げる。
キーゾーンが重なることによって4段重ねで表示されるようになる。 - 右側の(この場合)キーゾーンを複数選択して、いずれかの□の中央にポインタを持っていき、Optionを押しながら右方向にドラッグして、オクターブごとに4つキーゾーンが属するように移動する。
Optionを押しながらドラッグすることでルートノートも一緒に値が変化。 - いちばん上の段に乗った4つを、Optionを押しながら右方向にドラッグして、キーゾーンとルートノートを適切な値に設定。
このタイミングで、キーゾーンを4半音から3半音に修正すると、次の段の4ゾーンを正しく選択できるようになる。 - 上の段に乗った4つを、また右方向にドラッグしてキーゾーンとノートを修正。
これで手っ取り早くキーゾーンとルートノートのリアサインが完了するはず。
3半音で設定した場合の例なので、2全音でサンプリングする場合は上の段取りをそれぞれ調整してください。
ループの設定など
以前のEXS24は設計が生煮えだったためできなかったのですが、複数のゾーンを選択した場合の数値入力がまとめて反映されるようになっています(以前は複数選択していても、数値を入力したゾーンにしか反映されなかった)。
ドラムなどの打楽器のようにNoteOffが不要な音色に対してくらいしか使わない項目「ワンショット」のチェックを外します。
ループ範囲は、オーディオデータの両端にするわけにいかないので(きれいなループにならない)、頭から1/4くらいの箇所とお尻から1/4くらいの場所に設定してイコールパワーをonにすれば、ナチュラルなループサウンドとして鳴るようになります。
以下3記事を既にご覧いただいているならその理由はご理解いただけるはず。
一応、ここまでの操作をざざっとキャプチャしました。
画面収録中はマウスの反応がワンテンポ遅れるっぽいので時たま操作ミスしてますがご容赦ください。
Kontaktでのキーゾーン設定
以前も記しましたが、Kontaktにドラッグ(これもプロジェクトオーディオから直接ドラッグできる)する際にKontaktのMapping Editorの上のほうにドラッグするか下の方にドラッグするかでゾーンの広さが変わります。
書き忘れてましたが、プロジェクトオーディオからドラッグしてくるときは、おそらく選択されているものを律義に上から順番に配列してくれると思うので、プロジェクトオーディオのウィンドウも几帳面にファイル名で並べ替えておいたほうがいいと思います。
いつしか、プロジェクトオーディオのウィンドウでも、桁の異なる連番を正しく並べてくれるようになったのでちまちま桁を揃える必要もなくなりました。
ついでに。
事後に連番化するにあたって3個おきの飛び番にするようなソフトは記憶にないので(スクリプト書けばいいんだろうけど)、単純に人力で行うなら、たとえば、
- Finderでそれぞれのファイルを故意に複製し、それぞれ3つずつにする
- その上で連番にリネームする
- ウィンドウを3列のアイコン表示にして右2列を削除する
すると、3つ置きの連番になるはずです。