Ishkur’s Guideについて
過去の遺物となりつつあった Ishkur’s Electronic Music Guideが Ishkur’s Guide to Electronic Musicの名でひさびさのリニューアルらしいです。
あの辛口(ものによっては罵倒)な説明がまた新しく拝めるようで。
旧バージョンはこうでした。

各種一覧サイト
似た部類のものには、以前紹介したEvery Noise at OnceやMusicmap(ともに下記)などがありますが、音も同時に確認できるものとなると限られてきます。
Beatport Adds A New Genre; Shouldn’t Music All Be Crowd-Tagged?
一方、特に2010年以降の情報に不完全さも感じなくはありません。たとえば、Beatportに2018年頃に現れて物議を醸したMelodic House & Technoや、その後さらに追加されたOrganic House / DownTempoというカテゴリーがぱっと見で見当たりませんし。
蛇足になりますが、ある程度コンセンサスの取れたジャンル名もあれば、ジャンル名が共通しているのに認識が異なるもの(たとえばElectro [Hip&Hop系とEDM系とで別]やCrossover [Drum&Bass系とJazz系])や、限られたコミュニティもしくは個人で宣言されたもの(たとえばHandbag、SloMo Drum&Bassなど)、いったん界隈で大流行したが今はほぼ聞かれなくなったもの(たとえばDrop Kick, Hi-NRG, Makinaなど)もあります。
また抽象的なせいでジャンル名とは言いにくいがそれとわかるもの、たとえばAtmospheric Drum & Bassなどのほかに、国ごとのテイストで区別されたItalo HouseやGerman Techno、Dutch Tranceなどもジャンルかと問えば少々疑問なとこがあります。後者は、J-Rockみたいな呼称が等価かというとこれまた少々怪しいと個人的には思っていて、判断するにあたって悩ましい。
一定数の類例でもってジャンルがマジョリティに認知されるより先に少数の類例の時点でジャンル名を宣言してしまう(これは学派や武道の流派を想像するとわかりやすいかと)戦略、もしくは上に挙げたEvery Noise at OnceやかつてのLast.fmがそうであったように、あくまでリスナーが自身の所有するアーカイブを分類するために便宜上宣言したものが結果的にWebで共有されたものも、そりゃあるだろうと自分は考えていて、ゆくゆくそれが多数の認知に至らなかった場合にどうするか。その作家が戦った記録として残しておいてあげるか、それとも所詮亜流ととらえてその親ジャンルに括り込むか、単に取るに足りぬと切り捨てるか、扱う側のポリシーによっても差が出るのは当然と思います。
いずれにせよ、複数のジャンルを混ぜたエクレクティックなものがのべつ幕なしに生み出されるのがこの世界である以上、あらゆる音楽が的確に分類できるとは考えないのが妥当なスタンスかと思われます。
仮にIshkur’s Guideが一強だったとしてもそのサイトの情報だけ鵜呑みにするのはバイアスしか生まないんで、バランス取りつつ情報を拾っていくのが妥当かなと思いました。
Every Noise at Onceが面白い
ショップ
ちなみに、ジャンルをざくっと見渡したいときには海外の販売サイトを見たり、特定の曲が何のジャンルか参考にする手もあります。最近は自分もあまりチェックしていませんが、BeatportやJunoを見てみるのもよいかと。
この場合に頭の片隅に置いておいたほうがいいこととして、再度記します。
- まだ存在しないジャンル(アーティストや特定の一派、レーベルあるいは自主的に提唱するジャンルや通称など)は、ショップだと別のジャンルに入れられる。
- アーティスト名にせよ特定の楽曲にせよ、各ショップで同じジャンルに括られるケースは多くない、むしろ滅多にないと言ってもいいくらい。
- 同一ジャンル名であっても、新旧でスタイルが大きく変わるもの(Deep House、Tech Houseなど)は特徴をつかみにくい。あるいは特殊な作風のために仮に何らかのジャンルに組み入れたものがちょこちょこあるため、ジャンルの把握材料にしにくい。
「そりゃそやろ」と思う人もいらっしゃれば、「言われてみればそうだ」と思う人もいらっしゃるでしょう。したがって、よほど明らかなものやよほど典型的なもの以外では「この曲はこのジャンルである」と断定しにくいことがわかるはずです。アーティストも、典型的なものを作りたい人や、自分にしかできないスタイルを作りたい人などさまざまなんです。