Ishkur’s Guideについて
過去の遺物となりつつあった Ishkur’s Electronic Music Guideが Ishkur’s Guide to Electronic Musicの名でひさびさのリニューアルらしいです。
あの辛口(ものによっては罵倒)な説明がまた新しく拝めるようで。
旧バージョンはこうでした。

各種一覧サイト
似た部類のものには、以前紹介したEvery Noise at OnceやMusicmap(ともに下記)などがありますが、音も同時に確認できるものとなると限られてきます。
Spotifyでのタグ付けを元にしたものらしく、かなり膨大なリストになっています。辿った先でアーティスト名をクリックすると試聴できたりします。
こちらも、拡大していくと細かなジャンル分類が見られます。各ジャンルの影響も図示されていますが、見るのは相当しんどい。
後ほど追記にも記してますが、デザインポスターとして描かれたものと見られます。
こちらもデザインポスター的な位置付け。
元は動画(Flashかな?)をベースにしたものらしい。
明らかにおかしかったのか、それともジャンルにこだわりの強い人からクレームが出てしまったのかわかりませんが、今は件の動画が見られなくなっていたはず…。
こういうインフォグラフィックもあるよね的なもの。
こうした流れを汲んでか、PCに保管されている効果音やドラム等のオーディオファイルをそのファイル名または音響要素で分析し、いざ使用するときに探しやすくするといったプラグインが開発されたように思います。
cf. Algonaut “ATLAS”, ADSR Sound “ADSR Sample Manager”, XLN Audio “XO”
追記:その他いろいろ
インフォグラフィックの流行が下火になってしまったこともあり、上記のグラフにもリンク切れが見られるようになってきています。

だいぶ見づらいのですが、大まかなジャンル分けをしたうえで、どの地域、どういった人種がどんなジャンルをよく聞くかを文化人類学っぽくまとめたものでしょうかね。
こちらはRedditのスレでまとめられたもので、比較的Ishkurのものと互換性がある印象。JungleとDrum’n’Bassが分かれているところにこだわりがありそう。
こちらもReddit。
系統樹とは異なり、ポピュラー度を氷山になぞらえて図示したもの。
ちなみにHardcoreってのは一般には「ハードな(激しい)もの」と理解されてますが、本来は字面通り「超正統派」、言い換えれば邪念をかなぐり捨てて野心を丸出しにしたものってニュアンスです。
2000年前半をElectronicoreと力強くまとめてしまってはいるものの、珍しく2020年辺りまでカバーしたもの。
Future Funkはこんなに大きい要素かな?って感もありますが、ぱっと見、右に行くほど内向的なジャンルって印象もあるので強ち間違ってないのかも。
あと、1970年に見えるElectroはElectro House(≒Bass House)と違って、Hip Hop寄りの電子音楽。
ビジュアライズ、インフォグラフィックの話の一環として取り上げますが、電子回路風にデザインされたアーティストの影響関係みたいな図。
エレクトロニカ系のアーティストのみのようです。

英国Amazonで扱われている、ジャズ・ミュージシャンの系統樹。
上の電子回路風もそうですが、こうしたビジュアライズ、インフォグラフィックをオシャレポスターとして飾るのが一時期流行っていて(今もか)、音楽理論をまとめた図などもありました。
日本だとLOFTやヴィレヴァンに同様のものがありますが、どちらかというとネタ臭が強い。まあ自分もそのほうが好きなんですが。
こちらもポスターの一種と思われ、拡大図が残念ながら見られません。BPMの速い遅いで分類したものらしい。
一方、特に2010年以降の情報に不完全さも感じなくはありません。たとえば、Beatportに2018年頃に現れて物議を醸したMelodic House & Technoや、その後さらに追加されたOrganic House / DownTempoというカテゴリーがぱっと見で見当たりませんし。
Beatport Adds A New Genre; Shouldn’t Music All Be Crowd-Tagged?
蛇足になりますが、ある程度コンセンサスの取れたジャンル名もあれば、ジャンル名が共通しているのに認識が異なるもの(たとえばElectro [Hip&Hop系とEDM系とで別]やCrossover [Drum&Bass系とJazz系])や、限られたコミュニティもしくは個人で宣言されたもの(たとえばHandbag、SloMo Drum&Bassなど)、いったん界隈で大流行したが今はほぼ聞かれなくなったもの(たとえばDrop Kick, Hi-NRG, Makinaなど)もあります。
また抽象的なせいでジャンル名とは言いにくいがそれとわかるもの、たとえばAtmospheric Drum & Bassなどのほかに、国ごとのテイストで区別されたItalo HouseやGerman Techno、Dutch Tranceなどもジャンルかと問えば少々疑問なとこがあります。後者は、J-Rockみたいな呼称が等価かというとこれまた少々怪しいと個人的には思っていて、判断するにあたって悩ましい。
一定数の類例でもってジャンルがマジョリティに認知されるより先に少数の類例の時点でジャンル名を宣言してしまう(これは学派や武道の流派を想像するとわかりやすいかと)戦略、もしくは上に挙げたEvery Noise at OnceやかつてのLast.fmがそうであったように、あくまでリスナーが自身の所有するアーカイブを分類するために便宜上宣言したものが結果的にWebで共有されたものも、そりゃあるだろうと自分は考えていて、ゆくゆくそれが多数の認知に至らなかった場合にどうするか。その作家が戦った記録として残しておいてあげるか、それとも所詮亜流ととらえてその親ジャンルに括り込むか、単に取るに足りぬと切り捨てるか、扱う側のポリシーによっても差が出るのは当然と思います。
いずれにせよ、複数のジャンルを混ぜたエクレクティックなものがのべつ幕なしに生み出されるのがこの世界である以上、あらゆる音楽が的確に分類できるとは考えないのが妥当なスタンスかと思われます。
仮にIshkur’s Guideが一強だったとしてもそのサイトの情報だけ鵜呑みにするのはバイアスしか生まないんで、バランス取りつつ情報を拾っていくのが妥当かなと思いました。
Every Noise at Onceが面白い
ショップ
ちなみに、ジャンルをざくっと見渡したいときには海外の販売サイトを見たり、特定の曲が何のジャンルか参考にする手もあります。最近は自分もあまりチェックしていませんが、BeatportやJunoを見てみるのもよいかと。
この場合に頭の片隅に置いておいたほうがいいこととして、再度記します。
- まだ存在しないジャンル(アーティストや特定の一派、レーベルあるいは自主的に提唱するジャンルや通称など)は、ショップだと別のジャンルに入れられる。
- アーティスト名にせよ特定の楽曲にせよ、各ショップで同じジャンルに括られるケースは多くない、むしろ滅多にないと言ってもいいくらい。
- 同一ジャンル名であっても、新旧でスタイルが大きく変わるもの(Deep House、Tech Houseなど)は特徴をつかみにくい。あるいは特殊な作風のために仮に何らかのジャンルに組み入れたものがちょこちょこあるため、ジャンルの把握材料にしにくい。
「そりゃそやろ」と思う人もいらっしゃれば、「言われてみればそうだ」と思う人もいらっしゃるでしょう。したがって、よほど明らかなものやよほど典型的なもの以外では「この曲はこのジャンルである」と断定しにくいことがわかるはずです。アーティストも、典型的なものを作りたい人や、自分にしかできないスタイルを作りたい人などさまざまなんです。