EQカットにまつわるエトセトラ

「カット」の功罪

最近、ミックス時のEQの設定を検索して来られる方が多いようなので、自分の見解をちょこっとだけ。
雑記なので、ざっくばらんに書きます。

一般に「EQはブーストせずにカットするもの」とよく耳にします。若い頃は「なんじゃいそれ、好きにさせろやー」と思ったもんですが、今はほぼ同意。
先日、とある海外のミックスエンジニアの方が、

一般にローカットを何の疑いもなく全てのトラックに設定しようとするが、たとえばキックを打面と胴内との2トラック分レコーディングする場合にはむやみにローカットを設定すると位相がズレちゃって、2つ同時に鳴らすとかえって痩せた音になることがある。
ローカットするなら逐一位相を確認すべき。

的なことを言っていました。
たしかに位相を気にせず無警戒にEQを設定してよいものではないなと思います。
もっとも、そもそも耳で聞いていじってるので、滅多におかしなことも起きんだろうとも思いますが(そこいくと、つい数日前風邪を引いて鼻をかみ過ぎたせいで耳がイカれてた間は作業しんどかった)。
ともあれ無警戒ってのはミックス以外のわりとあらゆる局面で望ましくない。

Loudness Warはなりを潜めたかもしれないという噂を2,3度この日記にも記した記憶がありますけど、本当のこと言うと、僕の身の回りではむしろ激化してる印象があります。
これは、フェーダーを上げるだけで歪むことなく音量が上がるツールが簡単に手に入るようになったせいもあるかしれません。
この辺りについて特に主義主張はないのだけど、好むと好まざるとに関わらず、そのツールで実際何が行われているか憶測でも持っておかないと仕事にならんのは事実(たとえば思わしくないトラックがそのツールで猛烈にマキシマイズされたものをマスタリングで調整しなきゃいけない時などは、そのツールが’力技’でマキシマイズしてるかどうかでマスタリング時の調整方法を変えないといけない)で、手を変え品を変えマキシマイザー的なものがポンポン現れる最近はわりと追いかけるので精一杯だったりします。
そういやマスタリングって話で思い出しましたが、ミックス時にローカット、ハイカットで削られた状態で混ぜ込まれちゃった音色は原則、修復できないわけで、自分に立ち返って考えてみても、過度なカットはなるべく避けねばと思いました。今後はキツ目のシェルビングで代用するかな…。

HowToはいずれ古くなる

EQのhowtoに関して、ネットでこれまでに自分が見かけた情報としては(ここまでのト書きより検索流入された方がほしい情報はこれかもしれない)、たしか飛澤さんのインタビュー記事だったと思いますが、歪んだギターは2.1kHz前後を狭いQでカットするとスッキリしてよいとか、あと出所不明の情報としてボーカルは570Hzをやはり狭いQでカットすると湿度が取り除けてよいとか。キックは200Hz辺りをやや広めのQでカットすると存在感を保ちながら重さを演出できてよいっていうのもありますね。
最近だとオケの2ミックスを作ってからEQでボーカルの帯域を削って、それから歌録りしてミックス、ってやり方が定着していそう。
削っても大差ない帯域を思いっくそ削って情報量に余裕を持たすことを第一のチェックポイントと考えていいんじゃないかなと。
色んなサウンドの特定の帯域をカットして音の変化を確認する訓練などしてみてもいいかもしれません。
それと、EQのオートメーションは煩雑にはなっちゃうので僕自身も滅多にやりませんが、効果的と思われるならもちろん吝かではない。
ただ何より、これらの手法が効果的に機能するためには無加工のもともとの音が充分な情報量を持っていることが大事だろうと思います。身も蓋もなさそうですが、最近切実に感じています。

※この日記もいつまでWebに残るかわからないので、ウザいかもしれないけど書き添えておくと、かつて載せたEQの使い方の記事なんかまさにそうで、いずれ「当時はそうだったけど今はどうかねえ」となる可能性はあります。

EQの使い方