PA, BX創設者Dirk UlrichがNIを離脱

PA, BX創設者Dirk UlrichがNIを離脱

Brainworx(BX)、Plugin Alliance(PA)の創設者であり、Native Instruments(NI)移行後はNIに積極的な投資をしつつアドバイザリーを務めていたDirk UlrichがそのNIを離脱しました。
PAサイト上に見える経歴とFacebookでのステートメントとを合わせて読むと、もともと勉強熱心でエンジニアリングに並ならぬ情熱を傾けてきた彼にとって、意見を求められる程度の役割を担わされるのは満足できなかったようで、思い切って心機一転を図ったと思われます。最大(?)の株主であることは変わらないよう。

Driven by his passion for music and sound, Dirk uses the experience of two decades of Rock´n´Roll productions to develop some of the best loved plugins on the planet with Brainworx …

ステートメント内ではドイツの諺(英語で記されていますが)が持ち出されています。

In the end all will be great. And if it’s not really great yet… then it’s probably just not the end yet.

重鎮であった彼の目から見てもNI周辺の現状がよくない…そう読めなくもない。

NIとBrainworx, Plugin Alliance, iZotopeが一致団結してSoundwideをぶち上げ、各社で宣言ページが用意され、さぞかし大変革がもたらされるのではと宣言を読んだところでイマイチ何がしたいか判然とせず、首を傾げている間に404 not foundとなり、最終的には何事もなかったかのようにNIに統合されたのでした。
あれをきっかけに、周囲のひそひそ話の音量が一段階上がったのを覚えています。

NIの今を推し量れる情報量ではないものの…

Synth AnatomyはAbsynthへの執着が強めですが、個人的にはMassive Xのコレジャナイ感が致命的だったかなと。
似たような感覚の人も少なくないんじゃないですかね。Reaktor 6もその一つかな。

Massive X自体は決して手抜きなものじゃなく、UIもプリセットも優れているし、技術的にも面白さがぎゅうぎゅう詰めだったのですが、Wavetableの大流行を招いた「Massive」を掲げた名称でユーザーが期待していたゴリゴリなサウンドとは、路線があまりに違いすぎました。
最高のタイミングで、なぜ販促でエレクトロニカ方面を押してしまったのか…。
こうしたツールを提供する側が、「ミュージックシーンをコントロールしなきゃ」と気負ってしまったのか。

ユーザーにとって納得がいかないことは他のNIの製品においても多々あろうし、NI以外においても同様、なのでここにいくら不平を連ねても愚痴に過ぎませんし、同じようにこれだけの情報でNIを推し量っても憶測に過ぎません。ここまでにしときます。

現状、ジャイアントなワンオブゼム

Kontaktに代わるサンプルプレイヤーがほうぼうで各々自社製品として開発され、完成度の差こそあれ動作している現在、Kontaktはワンアンドオンリーではなく、(シェアはあっても)事実上ワンオブゼムです。

サンプルプレイヤー以外に至っては、いっそう百家争鳴の状態であり、NI側の売り手市場では到底ありません。そんなNIの代わりにiZotopeがめっちゃ頑張っていて、その信頼度も高い(?)ですけどね。

状況が決してよくない以上、レイオフが行われたり、重要人物が流出するのも必然。
この苦境に対して耐え忍ぶのが得策なのか攻めるのが得策なのかを考える場面で、後者を選択してコケてる印象が強いんですよね。

It has been apparent for several years now that Native Instruments is a slowly sinking ship in the music tech business.

もちろん明日明後日に白旗揚げるとは全く思わない。
ただ、上に少し書いたような「ミュージックシーンをコントロール」をもしも掲げているとしたら、いかにクリエイターに支持される製品を多く扱う大企業が号令飛ばしたとしても、クリエイターってのはそんな簡単になびかない生き物だってことを知っておくべき。
彼らは仮に生殺与奪を握られても足先で鼠の絵を描く生き物なんです。

大きくなった企業ゆえの苦闘なんだろうとつくづく思った次第。