2getheraudio “Cheeze Machine Pro”

頼まれてもいないレビュー、久しぶりです。
2getheraudioの Cheeze Machine Pro は、その名からは興味のあまり沸かないソフトシンセなのですが、試してみればかなりクオリティ高い代物でした。

cheeze (cheese)とは「安っぽい」「チャチい」を意味し、OmnisphereのPatch Browser等をはじめ様々なソフトシンセで見かけることがあって、本来いい意味では決してありません。
Vaporwave以降ずっと古めな音が好まれてることもあり、かつてcheeze machineを世に出した2getheraudioにとって「俺の出番か」ってとこだったのかもしれません。
古いcheeze machineは、僕もWindowsで制作していた時期に試しましたが、シュッとした音が好まれた時代にこうしたボヤけた煤けた音は出番がなかったんですよね…。

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Omnisphere 2のPatch Browserに見えるCheeseの文字
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昔のCheeze Machineはこんなの
昔のCheeze Machineはこんなの

当時より遥かにコントロールが増え、cheeseなのに高級感の漂う見た目になり、果たしてどんなもんだろうかとデモ版を試してみれば、起動時のデフォルトの音色はSuperSawに似たUnison発音の厚みを持ち、それでいて暑苦しくもなくシルキーなシンセストリングス音で、「ちっ!」て言う準備をしてたのにいい意味で肩透かし。
全然Cheeseじゃないじゃん、いい出来ですよ。

オシレーター(Generator)はWaveとShape、Brightの3つのパラメーターでぐんにょり変化します。変化具合は右上のインジケーター部にも表示されるのでわかりやすい。
これらに対してMixerのWideやDetune、エフェクターのEnsembleやPhaser、Vibrato、Delay、Reverb等で色味を加えるという基本構成。
特にEnsembleは、他のソフトシンセでのChorusのような「音が耳から引っ剥がされる感」が無くてとてもいい。Omnisphere 2に備わってるSolina Ensembleもそれらしいチャリチャリ感があって好きですが、このCheeze Machine ProのEnsembleもかなり秀逸。
とはいえ、これだけじゃまだそんなにいい音にはなりません。
仕組みの異なる2基のLFOや、同じく仕組みの異なる2基のMODを巧みに組み合わせていくことで、他のソフトシンセでは得られない響きが得られます。
もともとが単純な仕組みであるにも関わらず、多彩なプリセット音色リストが提供されていて、なるほどなあと思うことしきり。

オイシイと思ったのがHard Sync機能で、この機能自体は他の多くのソフトシンセも持っているのですが、多くの場合キリキリと耳障りな音を発してしまうのに対し、Filterと組み合わせることで適度なキラキラ感を演出することができるようになってます(SyncでなくFilterが優れてるのかもしれない)。FMピアノっぽいプリセットの音がどうやってキラキラ感を得てるのかなと、少しの間、首を傾げてしまいました。たしかにこういう使い方はアリですね。
もう1つ。ReverbのメニューがHallとPlateとRoomで各10種類ずつ備わっていて、格別いいクオリティとは言えないものの、アルゴリズム的にハードウェアシンセのリバーブ感に似せてあるのか、たまにノスタルジーに酔う場面がありました。選択肢の多さ、質感、面白いです。

シンセとして万能ではないけれども、ストイックに一芸に絞って設計されたものとして個人的には高く評価したい。
逆相が出やすいのが惜しいかな。MixerのWideってノブをLRどちら側にヒネっても逆相気味に鳴るので個人的には(既存の何らかのハードウェアシンセのシミュレーションだとしても)使用禁止にしたい。

Plugin Boutiqueにあるかなあと思って見てみたけど、メーカー自身、Plugin Boutiqueには製品を提供していないようなので(当然アフィ対象にもならない)、メーカーのHPでデモ版や購入の手続きなどしていただければと思います。

Cheeze Machine PRO | 2getheraudio | Music Production Software
Cheeze Machine PRO | 2getheraudio | Music Production Software

なお、書くの忘れてましたが、通常価格が$69、学生など懐に余裕がない人は$49で購入できる他、pay-what-you-want(好みに応じて)システムで最低$10で入手できます。
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