MusicSamplingの Adventure Brass。
映像、ゲーム等の音源制作者向けというコンセプトで、「手早く音を読み込み、手数少なく音を出せ、シームレスな強弱表現を可能にしている」とのことで、ひとしきり音を鳴らしてみて「言われてみればたしかに」と思いました。
定価$279。
最初に大事そうなポイントを書かせていただくと、グリッサンドやレガート、リップなどの奏法は入っておらず、いわば譜面通りの音。素早くそれっぽく作るためのものという位置付けだから妥当かな。
よって以下、音がいいか、実際に使いやすいかという点で記します。
いま気づいたけど、うち、まだKontakt 6にしてませんでした。
機能
キースイッチ(今さらかもですが、赤いとこの鍵盤で音色を切り替える仕組み)と、抑揚を制御するモジュレーションホイールという定番の方式を踏襲していて、音の響きは近距離とルームアンビエンス、およびそれがミックスされたもの(CLOSEとROOMの2つが同時に鳴らされるのでなく、混ぜ合わされた1つの音色)の計3種類、楽器はトランペット、トロンボーン、フレンチホルン、チューバの4種類となってます。
チューバ以外はユニットでの音色。ソロ音色の収録はありません。
カバーされている奏法は、メニュー上には色々あるけど実質、サスティンとスタッカートのみと言っていいと思います。
To Silenceスイッチは、モジュレーションホイールを絞っていくことで強弱が付くか、それともただ音量が小さくなっていくかの切り替え用。
意外とありがたいけど、Expressionで制御すりゃよくね?
基本、際立ってイイ音って感じでもないんですが、この短い残響のオーケストラ音色ライブラリーって意外と無いことに気付きました。
リバーブに引っ張られて何でもかんでもゴージャスにアレンジしちゃう悪癖が僕はあるので、その歯止めになるかな。
読み込みが速く、すぐ鳴らせるメリットも有り難い。
競合と比べて
競合製品とどうかって点。特にコストの面で。
たとえばKontaktのFactory Libraryに入っているLegacy VSL InstrumentsはものによっちゃAdventure Brassと同様にモジュレーションホイールで抑揚を付けられ(スクショで最上段に入れた)、僕は重宝してます。
バリエーションも豊富で残響もなし、奏法のカバー率も高い上にサイズも小さいってこと考えると、これ持ってるならAdventure Brassに手を出す必要ないと思います。
ただし、Kontaktのそれはモジュレーションホイールを中途の値で固定すると強い音と弱い音と両方鳴ってやたら分厚く聞こえてしまう瞬間があり、Adventure Brassは「そうならないように調整した」と言うだけあって自然に聞こえます。
また最近はSoundironのSymphony SeriesがKontaktに付いてきますが、これは無闇にゴージャスなサウンドが売りではありますが残響のコントロールがネックで、競合という観点でいえば競合しないと思います。水田と果実畑くらい違う。
ほか、Red Room AudioのPalette – Primary Colorsという、ストリングス、ブラス、木管をカバーしたフリーの便利な音源が出てますが、これはストリングスもブラスも木管もそれぞれ一括りになっているので、パート分けする前提で使うならAdventure Brassに敵うもんではないでしょう。
価格帯的に近くて競合しうるとしたら、僕の知ってる範囲でいうと、Versilian Studios製品かな。
Ensembliaもですが、かつてフリーだったものが音源増強に伴ってそれなりの価格になったりしてますね。
オーケストラものに”挑戦してみようかな”って人にはなかなか手を出しにくくなってる昨今かもしれません。
その辺りの製品を単に僕がガバガバ見逃してる可能性もありますが。
木管は? 打楽器は?
今回セールになってるのはAdventure Brassのみ。
Musical Samplingサイトを見るとAdventure Stringsは見当たりますが、木管(Woodwinds)と打楽器(Percussion)が見当たりません。
Adventure Bundleを見ても、果てはOrchestral Bundleを見てもBrassとStringsのみで、木管と打楽器はラインナップに加わる見込みがなさそうに見受けられます(ちなみに、うちでも木管の音源でちょうどいいのがなく、結果、木管はアレンジから外す傾向があります)。
そうなると、木管および打楽器音源が手軽に調達できるか否かでAdventure Brassの価値/魅力が変動するのではないかなと思います。