D16 “Nepheton 2”

D16 “Nepheton 2”

Silicon対応が伸び伸びになっていたD16 Group製品の一部、Nephetonがバージョン2として心機一転アップデートされたようです。
同社製品としてはDrumazonもありますが、違いは?というと、それぞれ808と909のシミュレーションてことになります。
この部類のソフト音源はけっこう種類がありますが、音質はもちろんとして、実機に備わっていたTweak部分の再現機能が備わっている点がD16の売りかなと。Audiorityのストンプボックス系製品も改造型を実はカバーしていたりと、見た目は地味なのにunder the hoodをこだわりで満たすデベロッパーが一定数あるようで、そういうデベロッパーこそ音楽にバリエーションをもたらしてくれるので、大事にしないといけないなと思いました。


以下、追記

そういや、D16のDrumazon 2とNepheton 2についてはちょっと触れただけだったと思ったので追記がてら。

↓バンドル版もあるようなので、リンク辿っていただければと。

それぞれ909と808のシミュレーション音源みたいなもので、どうも自分が909より808を好むせいか今回のNephetonのリリースまでスルーしてましたね。

Siliconへの対応は遅れたが、体力不足ってのではなかった

時間もないのでザクザクと書いていきますが、ご存知のとおりD16製品でもMac Silicon対応が遅れていたソフト群ですね。現在の対応状況と、2021年時点での対応状況(Wayback Machine)のリンクを置いておきます。

PhoscyonとLuSHの対応、続いてDrumazon, Nephetonと。Drumazonが909dayに間に合ったんだったか記憶にないのですが、Nephetonは808dayと無関係なタイミングでリリースとなりましたね。
PhoscyonもLuSHもSiliconへの対応はまずまずでありました。そういう理由もあってDrumazonが対応したって話もふぅ〜ん程度で流しちゃったのかもしれませんが、今回Nephetonのデモ版(NFRではない)をチェックして案外大規模なアップデートだったとわかり、それで慌てて、簡単でも記事をしたためようと思った次第です。

競合と一線を画す、「わかってる」アップデート

Drumazonの時点で気づいていればよかったのですが、この種類のソフトにしては随分凝っています。
この種類の、っていうのは、要は同じ音が鳴ればいいんでしょ的なシミュレーション音源って多々あって、独自色を狙ったものも中にはあるんだけど、基本的にはPCMサンプルを鳴らすのと大差なかったり、ごくごく一般的なエフェクトをかけられたり、そういうやつ。

Nepheton 2で「考えられてるなあ」と思わされる箇所は幾つかあったのだけど、最も唸らされたのは、この、エフェクトの部分。
各ドラム音がテクノやヒップホップ等で映えるためにエフェクトにどういうパラメータが備わっていればよいかが考えられてるようで、「わざわざそんなパラメータを搭載しましたか」と思っちゃいます。その上で、2系統のバスセンド内でのエフェクトの並べ替えが、2つのバス間でも行えたり、あるいは各ドラム音をバスエフェクトのシグナルパスの途中にセンドできたりと、凝らない人にとってはどうでもいいんだろうけど、凝る人にとってもどかしい部分にUIとしてしっかり手が入ってます。

各ドラム音のソース信号自体はそこまであれこれいじれるわけではなく、その点ではたとえばLogic純正のDrum Synthなんかが面白いのだろうけど、結局、ガチに楽曲の中で映えるサウンドにしようとしたら、いじれるべきパラメータはそこじゃなく、Nephetonが積んでいるパラメータのほうだよね、と。
言い過ぎ感があるけど考えが改まったのは事実です。イメージとしてはReasonのReDrumのほうが近いか、あれはPCMに対してのパラメータだけれども。

と、漠然としつつも、書きたかった感心ポイントはここまでであらかた終わり。
シーケンサー部でいわゆるノート分割(ステップを最大4分割)ができ、またその分割ORフラムに対してクレッシェンドやデクレッシェンドのようなことができるのも芸が細かいし、できたフレーズをDAWにドラッグエクスポートできるのも現代的でよい。

とはいえ、わかってる人向け止まりの製品動画…

で、Nepheton 2の製品紹介動画はリリース前からちょこちょこ上がってて、ただリズムループが幾つか流れてるだけ。
シンセやループサンプルをDAWでいじって動画やデモ音源でそれっぽく仕立て上げてるけど実際に購入して使ってみたら「ちゃうやん」ってのを何度か経験してる身としては、この紹介動画じゃ「どうせいじってるんでしょ?」って印象しかこれまで湧かなかった。
ざっと一通りデモ版をいじってみた結果、この動画内容はたしかに偽らざる音だったと思わざるを得ないんですけどね…。
ただまあ、例えばトラップなんかでフィーチャーしようと思ったら、いわゆる808ベースと言われるフレージングが簡単にできるわけでもないので、自分の用途に適合しているかどうかはくれぐれもデモ版を確かめた上で判断してほしい。
808がもともとどの程度の能力を持っていたか、そしてそれをカバーするためにトラックメイカーたちがどういう工夫をしていたかをご存知ない人にとっては、そこまで驚く代物でもないというか、オールドスクールの域を出ないと思いますが、一方でこの音にこういうタイプの柔軟な機能を待ち望んでいた人は確実にいるはず。

と、さんざん褒めちぎって自分は購入して所有するのかというと、欲しいことは欲しいけど、いまの自分の作風的に出番がないので、たとえ年明けまでの特価セールと言われても手は出さないかな、ってとこです。