Alchemyの Granular を使ったドラムサンプルの加工

Alchemyの Granular を使ったドラムサンプルの加工

必要に駆られてドラムサンプルをAlchemyのGranularで加工するのを試してみたら、思ったより面白かったので、そのメモ。

下準備

まずAlchemyをデフォルトで呼び出しやすいようにチャンネルストリップ設定として保存。

空のチャンネルストリップにAlchemyを挿したらInitialize Presetしとく
空のチャンネルストリップにAlchemyを挿したらInitialize Presetしとく
そのチャンネルストリップを別名で保存しておく(うちでは#AlchemyDefaultとした)
そのチャンネルストリップを別名で保存しておく(うちでは#AlchemyDefaultとした)

DrumMachineDesignerを立ち上げる

DrumMachineDesignerにAlchemyを読み込むという少々強引な手法を取ります。

EmptyKitでも読み込んじゃいましょう
EmptyKitでも読み込んじゃいましょう
EmptyKitを読み込んだら、ひとまず本来のスネアのキーであるD1でも選んでおく
EmptyKitを読み込んだら、ひとまず本来のスネアのキーであるD1でも選んでおく
本来ドラム音色が並ぶけど左にスクロールして、先ほど保存したAlchemyのチャンネルストリップを指定する
本来ドラム音色が並ぶけど左にスクロールして、先ほど保存したAlchemyのチャンネルストリップを指定する
するとこんな見た目になる
するとこんな見た目になる

折り畳みを展開してAlchemyにリーチ

これでわかるんだろうか…?
これでわかるんだろうか…?

DrumMachineDesignerのD1にだけAlchemyが挿入された形ですが、DrumMachineDesignerはもともとTrack Stackとして表面上機能するものなので、折り畳みを開くとAlchemyのチャンネルストリップがペロンと現れる形。
Alchemyのチャンネルストリップ名がDrumMachineDesignerのパッドの表示名になります。

DrumMachineDesignerのパッドは、表示名部分つまりパッドの右側部分を右クリックすると機能メニューが開くのですが、アイコン部分を右クリックするとアイコン一覧が開きます。だけど、DrumMachineDesignerでよく見る青いアイコンはどこにも見当たりません(仕様の未徹底)。
どうしてもあの青いアイコンがいいって人は、この辺り(Logic Pro X Custom Track Icons – Page 2 – Logic Pro Help)に配布されている方がおられるのでゲットしとくといいかも。

Alchemyにドラムのサンプルを放り込む

スネアのサンプルを取り込んで、GRANULARで鳴らすことにします。
ファイルをドラッグしてきてGranularに放り込み、頭に無音があったのでEditモードに入って画面下部の波形表示でSマークを移動しました。

ちなみにD1でスネアを鳴らすことにしたので、サンプルのピッチも調整が必要。
SOURCEのCoarseを+34してもいいし、Editモードの左下の「Key」をD1にしてもいい。

Granularで遊ぶ

元のままの音を先に載せておきます。Emulator IIのスネアの音かな。

デフォルト設定は要微調整

AlchemyのGranularのデフォルト設定だとガッサガサな音になるのはRTimeが微妙な値になってるせい。
言うまでもなく、RTimeのRはRandomのR。つまりGrainのスタート位置をどの程度ランダムにチョイスするかというもので、本来はある程度ランダムなほうがいいのだけど、元の音次第で適正な値が異なってきます。
Sizeを26ms、Densityを2、RTimeを0%に設定するとこんな音になります。

もともと実はそのままビローンとタイムストレッチかけたかった。だけど芳しくなかったのでややランダム要素を加えて多少自然な感じでタイムストレッチかけよう、と。そこで…

ディケイを伸ばすため再生速度を落とす

次にSOURCE側のSpeedを20%、GRANULARのRTimeを16%、そしてAHDSRのReleaseを2sにすると軍隊の太鼓みたいな音に(フレーズのせいか?)。

MODULATIONとの連動

MODULATIONと絡めるともう少し色んなことが可能になります。
SOURCEのSpeedにAHDSR2をDepth 30%で追加設定し(AHDSR1は音量操作用に使っちゃってるので新しく別に作る)、Attack 0.01s、Decay 0.2s、Sustain 0に設定、このAHDSR2をGRANULARのSizeに-20%で設定、Sizeの初期値を60msに調整、GRANULARのRTimeを7%に設定します。

で、ここからGranularは関係ないんですが、元が古いサンプラーの音色であるため全体的に音がピリッとしてない。
じゃあバイタライズ(Vitalize)しましょう。これ、人それぞれ好きなやり方もあると思うんで一例として。

SOURCE内のFILTER1をTube(Amount 60%、Mix 36%、PreGrain 0)に設定、同じくFILTER2をHP 6dB Sharp(Cutoff 30Hz、Rez 0、Drive 0)に設定、トータルのEFFECTSにVintage Compressor(Attack 0.06s、Release 0.1s、Threshold -12dB、Ratio 1.4、Input Gain -2dB、Makeup Gain 2dB)で設定。
好みに応じてチャンネルストリップのほうにインサートエフェクトを挿したりして調整するとよいかと。

設計次第で変な音にも

設計ってほどのもんでもありませんが、使う頻度の低いパラメーターをあえて使うなどして、へんちくりんな音を生み出すこともできるでしょう。

Alchemyが好都合な部分

別段Alchemy押しではないのですが、ドラムのサンプルって特に昨今の音楽においては減衰の速い/遅いやリリースの長い/短い、アタックの強い/弱いで微妙に惜しかったときに調整手段が乏しいんですよね。
だからちょうどいいのを探すのが大っ変。
Ableton Liveを使っている人にとってはDrum Rackの中にガンガン色んなエフェクトを後から足せるし、デフォでオーディオのタイムストレッチに自由度があるのでいいんですが、LogicのDrumMachineDesignerはそうした調整を行うために結構遠回りしないといけない。
またGranularじゃなくても構わないのだけどEGを細かに調整したり、思いつきでMIDI連動のエフェクトを施そうと思ったときに構造が無茶苦茶になりやすい。
お世辞にもAlchemyの結線状態がわかりやすいとも言えないのだけど、でもAlchemyを利用して雛形のようなものを用意してしまえば汎用性も出てきます(と書いておきながら、今回必要に駆られてやっただけで、今後も自分がこの手法を使うとは思えない)。
DrumMachineDesigner代わりのソフトでドラムサンプルを入れ替えたときに作り込んだ設定が初期化されちゃうなんてことも一応は避けられるし、手法の選択肢としてはあってもいいのかななんて思いました。