Vocoder は DeEsser とセットで

Ableton LiveのVocoder(Unvoicedが摩擦音の帯域を拾うパラメーター)

Ableton LiveのVocoder(Unvoicedが摩擦音の帯域を拾うパラメーター)

摩擦音を抽出反映して歌詞を聞き取りやすくする機能を備えたものが多いVocoderに対してDeEsserをあてがうのは本末転倒ではないかと思いそうだが、そうではない。
ここでいうDeEsserはDynamic EQの代用品。Dynamic EQを持っていなければDeEsserでいいじゃん、って話。

あと今どきVocoder?って人も多そうだけど、この5,6年くらい洋楽で使われてるのをちょくちょく見かける(Anderson .Paak & The Free Nationals: NPR Music Tiny Desk Concert – YouTubethe Robert Glasper Experiment – “Cherish the Day” – Live in Chicago – 3/10/2012. – YouTubeSnarky Puppy feat. Jacob Collier & Big Ed Lee – “Don’t You Know” (Family Dinner Volume Two) – YouTube)。
特にライブで、そして妙にNovationのキーボードが好都合っぽい(たまたまか)。
邦楽では、演奏者にもスポットがあたるネオ・ソウル系があまり好まれないせいもあってほぼ見かけない。

DeEsserをDynamic EQの、Vocoderをダブラーの代用として

うちでは歌のダブリングの代りにVocoderをたまに使う。
レコーディング済みのボーカルトラックをVocoderの入力に使い、メロディライン(必要ならハモりも)をサイドチェーンに突っ込むと、本来なら数テイク分のコンピング、ピッチ補正やノイズ除去に費やしていた時間が省略できる。
ある程度キャリア信号を作り込む必要はあるが、ダブリングに近い効果は得られる。

以前もVocoderについては2度ほど日記を書いていて(Vocoder考 2012Vocoder考 2014)、使う際の大きな悩みのタネが1つあった。
たいして聞こえないクセにすぐサチる。つまり歪みやすい。
主旋律成分は弱めに出す設計だといいのにね、とも書いた。
その後すごい勢いでDynamic EQという汎用性の高いものが浸透してきて(参考:Sonnox Oxford Dynamic EQ)、今はVocoderに限らず心強い味方となっている。

うちの場合のそもそものVocoder設定だが、入力する歌の抑揚が大きいときはVocoderへの入力値が大きく変動してエフェクトとしてあまりよろしくないので、先にコンプをかけ、Vocoder内部で高い周波数のほうにチルトさせた(傾斜を与えた)EQをかけ、マルチコンプで低域を抑え…というふうに処理する。歌の抑揚がさほど大きくないときでもだいたい同じ。
ただ、クッキリ聞こえてほしい帯域を持ち上げると結局入力される歌の同帯域の成分も持ち上がるため、帯域内で大渋滞が起きる(馬鹿がつくくらい正直な処理をするLogicでミックスしようとすると、Vocoderのトラックをオンにした瞬間に全体がサチり出すのでどうしたもんかという感じだった)。
DeEsserを摩擦音でなくその帯域に合わせて反応するように設定しておき、渋滞を避けられるようになった。
それだけの話。

コンプの弊害は回避したい

摩擦音の「帯域」…という言い方だと誤解があるな。摩擦音はノイズなので、広い帯域に及ぶ。
たいていは6kHzより上の帯域に反応するようにDeEsserを設定するのだけど、今回のVocoderに対して設定するなら1〜2kHzと、3〜4kHz辺りを対象にするといい感じになった。

またCompressorは「音量を抑える」…という言い方をよくするけど、設定値によっては文字通り「圧縮」してしまう。つまり聞こえ方としては変化がないのにメーターが振れにくくなる。
クリップを防ぐ働きとしては都合よいが、オーディオデータとしては効率のよい状態といえない。
(処理としては重くなるけど)シンプルにフェーダーを下げるEQをしかもダイナミックに使うほうが音の潰れが小さくて済む。

DeEsserを摩擦音以外に使うのは珍しい話でもなくて、もちろんそのDeEsserの設計にもよるが、キックの演奏ムラを軽減したり、ライブでマイクのフィードバック(ハウリング)防止に使う人もいる(単純にEQで処理しちゃうと声質が犠牲になってしまうので賢明だと思った)。
要するにDynamic EQといわれるもので、一般的なDeEsserと同様に単一の帯域に対して機能するものもあるし、iZotope Dynamic EQやoeksound Soothe(当サイト記事)のように幾つかの帯域に対して機能するものもある。
そこそこ負荷がかかるので何でもかんでもインサートさせるわけにはいかないが効果は大きい。

Vocoder自体に標準装備されたらいいなと思う。
ついでにサイドチェーン的に機能するものとしてはSurfer EQ(当サイト記事)も活用に期待できるか。