Trap Set なる90年前のドラムセット

たまたまYouTubeでサジェストされ、興味本位で Vintage 1928 Ludwig Black Beauty という動画を見たら奥が深かった。
Ludwig Super-Professional Drum Outfitsというドラムセットで、「おじいちゃんの時代に使われたもの」と説明されています。下のほうにまとめますが、今でいうドラムセットはその頃 Trap Set と呼ばれていたらしいですよ。

90年前といったら僕どころかうちの親ですら生まれてないじゃないですかぁ、いやだぁ〜。戦前。ド戦前ですね。
現代のドラムセットとは異なるTrap Setの数々のパーツが次々と現れます。流行なのか、何らかの時代背景があるのか、全体的にオリエンタルです。

開封の儀

バスドラはいいとして、木魚(wooden fish)の入った箱、「MAKE IN CHINA」と書かれた堂鼓(tanggu)の入った横開きの箱と開封を進めていきます。
古い旅行かばんのようなケースを開けると当時の演奏のセットリストらしきものに続いて、謎の電源ケーブル、ウッドブロック(tubular woodblock)、スラップスティック、トング状のもので片手で演奏可能にした鐃鈸(にょうばち、naobo)らしきもの(調べ切れなかった)、鐃鈸同様に柄の先両端に装着されたハンドル・カスタネット、今のスリッドドラムの一種にあたる鼓板(guban)、チューニングキーやタムホルダーらしき金具類、ベルツリー状に組み立てられ懐かしきピンポンパンポーンの音階に揃えられたカウベル、バスドラのペダル、シンバルスタンド、サスペンデッド・シンバルとジングル付きのスウィッシュ・シンバル、トライアングル…はスルーされて、最後にスネアドラムと。
このスネアドラム。何かこう時代を引き戻されるような重厚で美しい意匠に嘆息が漏れます。スチーム・パンクの漫画か映画に出てきそうな、アール・ヌーヴォーちょっと手前くらいのある意味めんどくさいデザイン。
で、何してんねんってツッコみたくなる、スネアの発光システムがオチと。動画はそのあとも少し続きます。

じっくりと目と手で確かめながら、一つ一つに感心していく主人。
気がついたら僕も食い入るように見てました。最初は興味本位で見てたのに。

参考

Trap Set とは、黎明期のドラムセットを指す

1200px-Dance_band_drummer_at_Mark_Foy's_Empress_Ballroom_from_The_Powerhouse_Museum.jpg | Gaze of time , Dance band drummer at Mark Foy's Empress Ballroom from The Powerhouse Museum - Drum kit - Wikipedia (Public Domain)
1200px-Dance_band_drummer_at_Mark_Foy’s_Empress_Ballroom_from_The_Powerhouse_Museum.jpg | Gaze of time(http://www.gazeoftime.com/images/1200px-dance-band-drummer-at-mark-foys-empress-ballroom-from-the-powerhouse-museumjpg) , Dance band drummer at Mark Foy’s Empress Ballroom from The Powerhouse Museum – Drum kit – Wikipedia (Public Domain)

実は製品の年代からさらに30年ほど遡った頃、やっとバスドラムとスネアドラムを一人で演奏するダブル・ドラミングって手法が成立したそうなのです。
1900〜1930年頃はその応用で色んな部品をバスドラムに取り付けるムーブメントがあり、今でいうドラムセットをトラップ・セット、演奏者をトラップ・ドラマーと呼んでいたとのこと。
このトラップ(trap)っていうのは、Redditによれば得体の知れないカラクリの仕組みを表す”contraption”の略語らしく、いまドラムセットのパーツを収納するケースをトラップ・ケースと呼ぶのもこれが由来らしいです。
したがって”Trap Set”でググると、右のようなイカツいドラムセットの画像がたくさん引っかかります。

このトラップ・セットのメーカーであるLudwigは1909年に設立されていて、初めてバスドラムをフットペダルで鳴らすシステムを成功に導いた会社。
その後Gretschとのシノギの末、元来地味だったセットが今みたいな派手なセットに仕上がっていった、とそういう歴史があります(Drum kit – Wikipedia)。
だから先のYouTubeの映像でフィーチャーされているドラム・セットは、ドラム・セットとしては最も初期の頃の貴重な品と見ることができます。
動画の最後に近い場面で引き出しから当時のLudwigの製品パンフレットを取り出して情報を確認しているわけですが、証拠となる記録をしっかり保存しているところに流石だぁとまた嘆息が漏れます。
LudwigとGretschはいずれも老舗のメーカーとして今も多くの愛用者がいますね。