#VFJams LIVE – Benny Greb…とクリックの話

VicFirthのYouTubeチャンネルで公開される VFJams は、今をときめくドラマーたちを次々に迎えてジャム演奏するシリーズもの。

演奏陣はRobert “Sput” Searightが率いて、SputがSnarky Puppyでともに活動していたMark Lettieri、それからCory HenryのFunk Apostlesでサイドキーボーディストを務めるNicholas Semradなど心強い面々がサイドを固めます。
Sputはご存知の通りドラマーで、彼の収録は来月の10/2に予定されているのですが、気づいた人もいるでしょう、Benny Grebの回ではキーボードを担当。つくづく、あちらの方はマルチインストゥルメンタリストに対して歓迎的ですね。
そもそも猛烈に上手いから他の楽器に手を出す余裕があるって背景もありそうですが、昨日の日記にも少し関係して、バンドでの演奏で他の楽器との絡みを考えるにあたってまさに自分が弾けるようになることは実はかなり大きな強みになるんですよ。
日本だと「プレイヤーを減らしてギャラの分配を上げる」目的でしかマルチプレイヤー歓迎されなさそう…。

さてクリエイティブなドラマーとして知名度の高いBenny Grebの回を見ていて、もちろん上手いのだけどなんかタイミングがバラけて聞こえるのが気になりました。

後ノリ

いきなり余談。
DrumeoというシリーズでMichael Jacksonのドラマーとして紹介されているJonathan Moffett。
彼の演奏は、ずいぶんスネアが後ろに聞こえます。
特に0:40手前くらい、ハイハットで細かく刻んだ後のスネアのタイミングがヤバいくらい「後ろ」。
気になってDAWに読み込んでみると、Smooth Criminalの動画では、オケに聞こえるベースフレーズのタイミングをジャストとして揃えたら、スネアだけが128分音符1個分くらい後ろのタイミングで鳴ってます。

BPM121で、128分音符1個くらいスネアが後ろで鳴ってる

BPM121で、128分音符1個くらいスネアが後ろで鳴ってる

いわゆる後ノリ(もたり)。重く聞こえさせるために意図的にスネアを後ろにずらして演奏する技法です。
128分音符1個程度のズレは時間でいうと0.02秒で、「そんなん、ちょびっとじゃん」と思うかしれませんが、たとえば自分でギターや鍵盤を弾いてレコーディングする際にヘッドフォンモニターに返ってくる音が128分音符1個遅れたらおよそ弾けません。くたばれ、レイテンシー!ってやつですね。
20年ほど前にNHKの番組で、自分の歌を少し遅らせてヘッドフォンに返したら歌が下手になるっていう実験をしてたのを見た覚えがあります(探したけど動画見つからなかった)。
音楽は陸上短距離並みにコンマ数秒の世界で、極めてわずかなズレが違和感を作ります。
現に128分音符1個程度ズレると本来121であるテンポは116まで落ちてしまいます。
歌に関しちゃもっとシビアで、音符1個をたった0.00ン秒ずらしただけで流れが不自然になったりします。人間の耳ってホントはすごく繊細。

Benny Grebはゆるいのか、否

Benny Grebの話に戻ります。まず動画がこちら。

採譜されたものも載せときます。

BPMが極端に安定しているため、十中八九クリックを聞いて演奏していると思われます。そしておそらく元凶はそこ。

終盤までテンポが一定。

終盤までテンポが一定。

結論からすると、Benny Grebのドラミングに致命的なタイミングのバラけはありません。ラテン訛りを故意に出してる箇所はあるけど、それはそれ。
一点だけ個人的な好みの範疇での指摘をさせていただくならば、最近よく耳にする、細かい音符で最後を埋めるパターン、あれって打ち込みのオケもしくは上手いバックバンドでやる場合は能力誇示にいいのだけど、充分じゃないバンドでやると崩れますので、真似するのをお勧めしません。
往々にして、こうした危なっかしいフレーズのあとは、そこを抜けた次の拍でシンバルを鳴らすことで、崩れて聞こえる各パートの音を覆い隠したりクサビを打ち直すことが多いですね。
手癖のようにフィルのあと1拍2拍と連続してクラッシュ打つドラマーもいますが、必要な箇所と不必要な箇所で線引きしないと曲全体がダルくなるので、個人的には配慮がほしいとこ。

フィル抜けた次の次の箇所に(バンドメンバーが目で見て確認可能な)クサビ、ここではシンバルを打つ。こうするとズレた場合立ち直しやすい。

フィル抜けた次の次の箇所に(バンドメンバーが目で見て確認可能な)クサビ、ここではシンバルを打つ。こうするとズレた場合立ち直しやすい。

意外とリスキーなクリック

それで、このクリックってのは安心なようでいて実はリスキーって話。

簡単にいうと、クリックを使うとクリックと演奏との間に主従関係ができてしまい、奏者のテンションが抑えられがちになります。
テンポだけに抑制が働けばいいのに、テンションにも抑制がかかってしまうわけです。そうならないように慣れればいいのだけど、それがまたしんどい。
主従関係ができると、ズレが発生したときに最初に気付くドラマーがズレを直そうとします。そうすると、このタイミングで他メンバーとドラマーとでズレが生じる、結果、気持ち悪いグルーブが生まれてしまいます。
たぶん今回のBenny Grebのデモンストレーションでは、曲がややこしいことも手伝って、バンドのバラつきを持ち直すタイミングでかえって目立っちゃったんだろうなあと思いました。
バックバンドは全然下手じゃない(ここ大事)けど、正確な演奏と気持ちいい揺れとの間にはわずかな溝があって、それをクリックでカバーしようってのはちょっと無理があったかも。

以前紹介したSnarky PuppyのLingus(参照:【採譜】Snarky Puppy “Lingus”)、あちらも同じように全員ヘッドフォンで演奏していますが、テンポが揺れているのでクリック無しと思われます。

テンポ60の曲で、4分音符のクリックは少々リスキーだし、かといって8分音符のクリックにするとドラマーやボーカルのノリが変わってしまったり、なーんて話がありますよね。
結局のところ、慣れてしまえばそんなに大した問題じゃなかったりするんですが、既述の通り慣れるまでがしんどいんで、(今のところは)回を重ねてクリックとお友達になるしかないんだろうなと思います。

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