Toontrack “EZmix 3”

Toontrack “EZmix 3”

5月ごろに予告されていたToontrackのEZmixのバージョンアップ版、EZmix 3が、昨夜遅くにリリースされました。

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TOONTRACK社製 プラグイン・エフェクト 「EZ MIX 3」の製品詳細情報ページです。
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Mixを支援するソフトはこれまでiZotopeやSonibleなどあちこちからリリースされていて、個人的な印象としてEZmixは上位を争うほどの存在感でもありません。
はたして今回のアップデートで、他製品と競うようなものになったかというと、他製品と趣が少し異なるせいもあって、そう単純には比較できまいって感じ。一部にカブるフィーチャーがあるとはいえ、大まかなビジョンが明らかに違いますもんね。
余談ですけどiZotopeがしばらく静かで、粛々と新バージョンの開発を進めているのか、それとも…みたいなことを思っています。仮にそうして万が一にiZotope製品が使えなくなってしまった頃に、じゃあその跡継ぎとして使えるミックスユーティリティ系ソフトは何がいいかというと、システマチックにまとまっているのはEZmixかなと思います。ただ…って話はまた後ほど記します。

オーバービュー

新機能のダイジェスト的な内容の動画ですね。

ちなみに前バージョンに収録されていたプリセットもすべて搭載されています(拡張パックについてはさすがにカバーされてないと思われます)。

各機能

各機能について動画が作成されているので、いったん羅列します。

以下、上の動画からの半ば切り出しのような、個々の機能についての解説。

とかくAI隆盛の現在、EZmix 3においてもAIによる補助機能ばかり注目されかねませんが、最大の見どころはむしろこのMain ViewのPreset Spaceだろうと思います。
これはXLN AudioのXO等と同じように、各プリセットの類似度をもとに可視化したもので、テキストフィルタやタグと併用することで絞り込むこともでき、「イメージに近いんだけど何か違う。かといって、エフェクトチェーンの中に踏み込んでイジれるほど知識もないので、漠然と”もう少し何かが違うもの”を推してもらいたい」ニーズに応えるものといえます。
もう少し言っちゃえば、きちんと「こういう方向性の音に仕上げたい」っていう言葉にしにくいユーザーの意思を反映できる余地があるってことでもあります。用語の意味を把握しきれない(まま使えちゃう)iZotopeやSonible製品とはその辺で大きく違いますね。

旧バージョンを知らないのですが、エフェクトラック(エフェクトチェーン)に空間系エフェクトを追加したりOn/Offしたりの機能が加わっているもよう。

それと、単独の動画にはなっていませんが、海外の方が5月くらいにアップした動画ではマクロノブの追加を大歓迎していました。それによれば、前バージョンのマクロは2つしかなく、今回10まで増えたことで、曲中での調整がずいぶんラクになるとのこと。

最後にAIがピックアップされてますが、これはLogicのMastering Assistantと同様、マスタリングFXチェーンのパラメーター(および何らかのアルゴリズムの選定にも関わってる可能性がある)を補正するもの。つまりブラックボックスに突っ込んで得体のしれない操作をされて音が良くなるというものではない。むろん、マスターバスでなく個々のチャンネルやミックスバス上であっても、適宜7秒程度の試聴をさせれば、ユーザーの好むサウンドになるようにパラメーターを適正に設定してくれるといえます。

もう一つ、アンプシミュレーターにもAIが導入されていて、どうしても一対一の結果に縛られがちなIR方式の欠点を補うとされています。アンプやエフェクト分野でのAIの活用もしくはダイナミックIRについては、正直それを専門とする他社製品の自由度に追いつかないんじゃないかと個人的には思っているのですが、リアリティはさておき好みのサウンドに辿り着けるのであればEZmix 3を用いようが他社製を用いようが別段問題はないでしょう。

私見

機能としては整っているのですが、機能向上のトレードオフとして初心者向けにとって少し煩雑になっちゃったかなというのと、ガチな人にはもっともっと自由度が欲しいかもな、というのが個人的な感想です。
iZotope製品は少々楽曲の瑞々しさが損なわれがち、Sonible製品はプラスアルファの別製品と取り合わせることで底力を発揮、という印象を持っている自分としては、それでもEZmixにおけるこのワークフローの改善はユーザーにとって相当デカいと思います。

音楽制作に慣れてきて、もっとガシガシ作って放流したいと考える人にとっては、競合製品よりスピーディーに仕上げを行えるんじゃないでしょうか。
自分らしいサウンドを求める人にとっては、自分なりの利用メソッドを構築する必要性がありそうですが、いったんメソッドを作り上げてしまえば、しばらくは使い倒せるんじゃないかな、ってところです。

操作感

NFRを頂戴したので、操作しつつ感触を確かめたところ、すごく正直に言うと、今までミックスに苦労していた人や英語インターフェースが平気な人には大きな恩恵がもたらされると思うのですが、そうでない人にはだいぶ厳しい気がします。むろんまったく無意味ってこともないのですが。

必要とするのが完成形の具体的なイメージと、それを表す英語の修飾辞。この時点でだいぶ人を選ぶ気がしますね。

すごく当たり前なのに近年少々蔑ろにされがちな「入力レベルによって効果の良し悪しは変動するよ」という基本ノウハウ、ひいては「好みは千差万別でよくて、それを探るのが仕上げの醍醐味だよ」という前提部分が、EZ MIX 3では大事なところを占めているのですが、近年、唯一解を求める傾向が強いので、そこには投げ込めないかなと。
またマニュアルはチュートリアル動画を軸としており、その動画は英語でしか現状提供されていません。
逆に言えば、適切な日本語解説の動画をどなたかが作れば状況は一変する可能性もあります。