Tone2 “Icarus”

Tone2の Icarus の Public Beta 版が公開されていたので、操作感やサウンドなど見てみました。

Icarus VST AU plugin - The best wavetable synthesizer
Icarus VST AU plugin – The best wavetable synthesizer

Wavetable シンセがそろそろ飽きられつつあるタイミングで出すからには、Tone2 なりの何か大きな提言があるのかと思いますが、果たしてどうか。

画面デザインとインターフェイス

散らかってます。
Electra2 も見やすくはないインターフェイスでしたが、そこからさらに艶気を全て取り除いた感じ。 Beta とのことなので改善されるといいのですが。

public betaのモードに入るなら上を選択。
public betaのモードに入るなら上を選択。
メインウィンドウ。黄色の丸囲み数字はは筆者が書き込んだもの。
メインウィンドウ。黄色の丸囲み数字はは筆者が書き込んだもの。
オシレーターのビューは3種類の表示方法がある。
オシレーターのビューは3種類の表示方法がある。

異様に多彩なメニュー

上のスクショに書き込んだ8箇所に、それぞれやたら縦長になるメニューが存在します。

MENU(1)
MENU(1)
MENU(2)
MENU(2)
MENU(3)
MENU(3)
MENU(4)
MENU(4)
MENU(5)
MENU(5)
MENU(6)
MENU(6)
MENU(7)
MENU(7)
MENU(8)
MENU(8)

大は小を兼ねるといいますが、軽く絶望しますね((3)と(4)の箇所に至っては縦長過ぎて見切れてしまったので、編集してつなぎました)。画面の小さなノートPCで使うのは躊躇われますね…。
ただ、Waldorf PPG Wave 2.V(Archive)辺りを思い浮かべても Wavetable シンセっていじれるパラメータが多いともいえないし、かつてFMシンセは重過ぎてPCでエミュレートするのが困難と嘯かれつつも軽快動作が実現してますし、だからIcarusのやたら多彩なメニューも、思いつく全ての提言が反映された結果だと考えれば、投じられた大きな一石と捉えることはできそうです。

音圧を抑えながら厚みを出す

僕がTone2のシンセを非常に高く評価しているのは、 SuperSaw のような分厚い音色を特有のパラメーターを用いて音圧を抑えながら再現できる点。
上掲のメニューでいうと(1)の厚み、加えて(8)の出音コントロール。
Electra2 で厚みは PW という1個のパラメーターでなんとなくしか制御できなかったのですが、(1)のメニューに膨大に増えています。とはいえ、ここには厚みだけでなくハーモニーも加わっているのですが(ここまでやるならダイアトニックも用意すればいいのに…)。
PUNCH はハモンドオルガンみたいにアタックの瞬間にパルスがプツッと加わるだけの単純なものなのですが、この発想はなかった的に面白い。
出音のコントロールはかつてクローズドな機能だったのですが、IcarusではEQのプリセットという形になってますね。

(2)にはさまざまなWavetableが収められていますが実用的なものはそんなに多くなく、Electra2にも入っていたものが多い。
EDIT機能はオリジナルのWavetableを作るもので、これはなかなか使えます。プリセット音色の中には、Wavetableの中でシーケンスフレーズを組んでるものがありました。
FADEのノブはいわゆるインターポレーション。

(3)はいわゆるWaveshaperの各種。
Bit ReduceやSampling Frequency Reduce的なものも混ざっていて非常に楽しいのですが、注意したいのは先ほど記したFADEがWavetableに対してかかるのであってWaveshaperにかかるわけではない、つまりMORPHと書かれているとシームレスな変化を予想するものの実際にはカクカクとした階段状の変化をしてしまうので、テンポシンク的な変化をMORPHに対して行うのは少々厳しいということ。

(4)はフィルター各種で、(5)はディストーション。
グロウル系のプリセットサウンドはIcarusにおいてはWavetableでなくフィルターで作られてるものが多いようで、おそらくそこは弱みなのだろうと思われます。

(6)はエフェクターでパラメーターはマウスのドラッグで設定。
上部のTOOLというところからエフェクターのプリセットが選べます。

(7)はアルペジエイターで、自作もできますがプリセットも多く揃っています。
右下のStraightのメニューは上にドラッグするとShuffle、下にドラッグするとSwingというモードになります。
エフェクターとのコンビネーションをうまく活用していきたいところ。

総合的にいうと、独特なサウンドコントロールを持ち軽量動作するWavetableシンセとしてはかなり面白いものだと思います。いかんせん、プリセットサウンドに新鮮味がイマイチ欠けるのと、作り込み時の視認性や操作性がまどろっこしいのがガンかなという感想です。