プリセット選びの効率化を考える

基本、プリセット音色を使う機会が少ない自分ではありますが、ベタなものが欲しいタイミングはそれなりにあって、そういった場面ですぐに辿り着けないのはストレスになってます。

暇を見つけて、使える音をふぁぼっていく手法はほんとに妥当だろうかと最近思ってます。みんながそんな暇を持ってるとは限りませんから。
シンセにせよPCMにせよ、「大量のプリセット」はたしかにありがたい。かつて教えていた学生やウェブ教室でも、大量にあってどれを選んでいいかわからん人相手に、「暇を見つけて、使える音をふぁぼっていくほかない」(表現上はこんな否定的な言い回しでなく「〜するのがベスト」と言い換えるが)と伝えてきたのですが、自分でも腑に落ちない感じはあります。
「ほんとに作りたいもののためには時間を惜しむべきでない」という精神論も一理あるとは思うんですが、もっとラクな方法、もっと効率のいい方法があるなら、そのほうがいいですもんね。

タグ、ジャンル、あるいはプリセット名で出音を判断するにも限度があって、たとえば英単語がまったく読めない人だと大量のリストを見た時点で萎えるんですよね。たとえばピアノの音を探したいのに、音色名が「Grand Piano」でライブラリー内に登録されていると、アルファベット順に並んだリストのPの辺りを見て「Pianoがない」って思っちゃう。これをしょうがないで済ませるか、ソリューションを提示できるか。そんな局面を多々見かけてきました。
プリセット名がどれだけ既存のアーティスト名や既存の曲名の秀逸なモジリであっても、知らない人にはわからない;ならばわかる人にわかればいい? それでいいんですかね、と。

Komplete Kontrolのプレビュー
Komplete Kontrolのプレビュー
Ableton Liveのプレビュー
Ableton Liveのプレビュー

Komplete KontrolにPreview機能があります。サードパーティ製の音源のプレビューも自動作成してくれるので(どの音源で鳴るのかは示されていないけれど、そこにこだわらないのであれば)イイ仕組み。
ただ、英単語が苦手な人には圧迫感があるかもしれません。自分の場合は英単語が苦手ではないけど、地味に集中が削がれるのでなるべくなら文字情報として見たくない。

Ableton LiveはDAWレベルで考慮していて、純正音源に限るものの、音色名を選んだときにシンプルなデモフレーズが再生されます。よくある、「複雑な音色プログラムを読み込んだのに求めているものと違う」なんていう興醒めを回避できるよう工夫されています。DAW悉皆がこの機能を備えてほしいとも思います。

ドラムやSEなどのオーディオ素材も探すのが面倒といえば面倒ですが、シンセやサンプラーと違って、たとえばmacOSではquicklookで試聴ができて(ただし極端に短いサンプルは鳴らなかったり、アタックが削れたりする)いくぶんマシではあります。また、AlgonautやSononymなど分析分類機能を持ったソフトを使えば、英単語が苦手でも色で判断できますし、XOやADSR Sample Managerを使えばファイル名で自動判別して色で区別、あるいはサンプルの長さや帯域に従ってマップ上に配置してくれるので、文字を追ってプリセットを選ぶよりずいぶんラク。ユーザーの感覚との相性もあるのでどれが便利とは一概に言えませんが。

AIでドラムキット生成 – Algonaut “ATLAS”

“Sononym”

XLN Audio “XO”

同じようにプリセット音色についても自動カラーリングやマッピングされるようになると、もう少し直感的に探し当てられるようになるんでしょう。ただし、素のオーディオ素材とワケが違うので、カラーリングやマッピングするにしても分析時の指標は変える必要がありそう。
タグを指標にする? それはちょっと怖いな。自分のとこの製品を選ばせたいばかりに、所有するコンテンツすべてに使用頻度の高いタグをあれもこれも貼り付けるメーカーは出てくるでしょうから。

ある程度むかしからこの問題はあって、だけど「そういうもん」として見られてきた、もしくはそこまでプリセットの数が多くなかったから辛抱できました。
今はデフォでプリセットの数が膨大であるほか、有償無償および品質問わずプリセットを作成してバラ撒けるようになったことで、だから、秀逸で何にでも使えるプリセットをチョイスして紹介するだけの動画コンテンツなんてのも成立するとは思うのですが、根本的なソリューションが必要な感じがします。