Thenatan “Vybz” Lo-Fi マルチFX

最近のプラグインエフェクトは希少ハードウェアのシミュレーションやAI(ほんとか?)的な手法を利用したものが割合多かったためか、飛びつけるようなものがあまりなかったんですが、突如Lo-Fiをコンセプトとしたマルチエフェクター Vybz がThenatanというメーカーからリリースされ、「おっ」と思いました。
ADSRの元で少しヒネったソフトをリリースするメーカーのようで、製品一覧を見るとDrake風の音にするUnderwater FXってのを以前リリースしたとこのようですね(“Underwater FX” – makou’s peephole)。

整頓されたルックスと機能の多さが気になってデモ版を探したけど無かったので、思い切って買ってみたという次第。

定価が$79.5でイントロ価格が$29.50。そこそこの値段ですね。
Mac (AU/VST/VST3), Windows(VST/VST3 32/64bit)対応で、AAXには非対応。

購入してから気付いたんですが、デモ版落とせないっぽいのにソフト自体にはデモモードがあります。二次配布を防ぐためかな。

結論としては、Vybzでないと出来ないことは特にないし、Lo-Fiのリアリティもほどほど。
従って、リアリティへのこだわりがそこまで強くないなら便利ツールの一つとして持っててもいいのかもね、という感じです。

操作やUIに関しては、正直言って「良くない」部類に入ると思います。
独特といえば聞こえはいいのですが、

  • パラメーターとラベルの区別がつきにくい
  • ドラッグとクリックとのどちらで値変更すればいいのかが判別できない(Reverbのセレクターに関してはアイコン部分を上にドラッグしてIrまでいくと、下にドラッグしても戻ってこない)
  • バー状のものもメーターかフェーダーか区別できない

と、フラットデザインのダメな部分がラッシュ状態です。独自の略語やアイコンも混乱の元(画面下部のNyはたぶんニューヨークコンプつまりパラレルコンプと思われるがマニュアル見ても定かでない;機能的にはなかなかいいけど)。

あと、LogicだとVybzのオートメーション操作に難あり。

  • 「Readモードでオートメーションパラメーターを自動選択」に非対応
  • Write, Touch, Latchモードでもパラメーター操作はDAWに記録されない

Cubase, Ableton Live, Studio Oneでは記録されるんですけどねえ…。
LogicのSmart Controlや、MIDI FXでのLearn Plug-in ParametersでもVybzのUI上でのパラメーターを認識できていないので、少なくともLogicでのオートメーションでは扱いにくいと考えたほうがいいでしょう。

個々のエフェクト、これ、メーカーサイトのスクショだと選び放題に見えるのですが、メインに表示されている7つの直列とEnvolutionで、マルチFXと謳うわりに並べ替えが不可。
いわゆるLo-Fiの手段としてはLo CutとHi Cut、BitCrush、それとノイズを加えること、Envolutionの5つと考えて差し支えないと思われます。これを充分と取るかは人それぞれかも。

と、不満はけっこう多いのですが、それなりにプリセットが充実していることや、Ir(インパルス・レスポンス)のデータの自由な読み込みに対応していることや、世にあまり多くないEnvolution加工が比較的安価であっさり手に入れられることなど、嬉しい面もあるのでイントロ価格の間に入手するのもアリかと思います。
でも難しいとこですね。使い勝手の向上を待っているとイントロ価格期間は終わるでしょうし、使い勝手が向上するようなバージョンアップがなされる保証もないわけで。

210310追記

1.1のバージョンアップが出たようです。動作の高速化などが行われましたがUIの紛らわしさまでは解消されていません。いずれ慣れるものと考えると、そこまで気にしなくていいのかなとも思いますが。