The Art of Fades

envatotuts+にて、アルバムの曲順についての考え方とfadeの使い方が、 the Art of Fades の題で解説されています(The Art of Fades, Sequencing and Spacing an Album(https://music.tutsplus.com/tutorials/the-art-of-fades-sequencing-spacing-an-album–cms-29381))。

最近はオーディオデータのトリートメント以外でフェードイン/アウトは使われない(エレクトロニカ系だとトリートメントですら使われなかったりする)のですが、曲中のギミックに用いたり、あと先日終わったM3のようにイベント前の作品宣伝用の音源紹介(クロスフェード)に用いられたりなど、全く機会がなくなったわけではありません。

以前Logic Pro Xのフェードの挙動について取り上げました。

envatotuts+では、先人たちがアルバムの曲順(ソングリスト)が効果的に聞こえるために何を考えてどう行っているかを中心に説明しています。概訳しておくと。

マスタリングの前に曲順を考えておくことが望ましい。

Sequencing (曲順による流れ)

アルバム1曲目はアルバムのカラーを象徴するもの。
本編の並びを数パターン用意するアーティストもいる。大概その締めくくりは穏やかな曲。
最後の曲は、聞き手の次なる購買欲を誘うために力作を置くことが多い。
どうしても流れ上アルバムに収録できなかった曲をシングルカット時のカップリングに使ったりする。

Spacing (曲間)

デフォの2秒に落ち着くことは滅多にない。
遅い曲の次の速い曲は長めの、速い曲の次の遅い曲は短めのインターバルを置く。
クラシック曲は長めの曲間になるし、アナログメディアだとヒスノイズやクラックルノイズのお蔭で曲間が短く感じられるので長めの曲間になる。
個々人のリスニング環境、状況によっても曲間長短の印象は異なる。

Fades (フェード)

聴感を穏やかにするために曲の出だしや終わりに音量変化を与えるのがフェードで、その時間やカーブタイプで幾つかのパターンに分かれる。

  • Linear:直線。DAWはデフォでごく短いフェードをオーディオデータに施すことがあり、これはいきなり大音量のデータが再生されるのを防ぐためだったりする(cf. ゼロクロッシング)。
  • Logarithmic:対数カーブ。最も自然。
  • Exponential:指数カーブ。フェードアウト時のリバーブ感を抑え、フェードイン時の急激なアタック感を作り出すことができる。
  • S-Curve:S字。途中までは指数カーブ、途中からは対数カーブという形式。

フェード時間は好みによるがだいたい2〜5秒。ものによっては1分以上のフェードインにすることも。
ミキシングの段階でフェードを行う利点は、マスタリング時間の短縮、パートごとに異なるフェードイン・アウトを設定するなど独創的な使い方ができること。
マスタリングの段階でフェードを行う利点は、曲が並んだ状態でフェードを調整でき、2曲間のクロスフェードなど曲単体では行えないフェードを設定できること。

クロスフェードの目的は、1つの曲を他の曲にシームレスに移行させたり、2曲があたかも1つの作品のように聞こえさせたりすること。
曲の終わりでドローンサウンドになっている箇所や音がまだ残っている箇所など、薄くなった箇所で行うのが基本だ。

Logic Pro Xで、マスターに対してフェードアウトをかけるいちばんラクな方法は、ミックスメニュー経由でマスターをフェードアウトさせる方法。
自分でカーブを書きたければ、ミキサーのマスターを右クリックしてトラックを作成するか、トラックメニューでマスタートラックを表示してアレンジウィンドウ上でオートメーションを書きます。

ミックスメニューでフェードアウトを適用
ミックスメニューでフェードアウトを適用
ミキサーのマスターを右クリックしてアレンジウィンドウにマスタートラックを表示させるか
ミキサーのマスターを右クリックしてアレンジウィンドウにマスタートラックを表示させるか
トラックメニューでマスタートラックを表示でもOK
トラックメニューでマスタートラックを表示でもOK

ちなみに僕個人は特にフェードアウトについてはLogarithmicとS-Curveを掛け合わせたようなのがいちばん心地いいです。
残念ながら、Logic Pro Xのfadeの設定にはそんな選択肢がないので、いつからだったか備わった絶対と相対を掛け合わせるようにすればそれっぽくなります。

(1)自動で書き込まれるフェードアウト
(1)自動で書き込まれるフェードアウト
(2)絶対と相対でフェードアウトを書く
(2)絶対と相対でフェードアウトを書く
(3)トラックを右クリックして相対と絶対を結合させることができる
(3)トラックを右クリックして相対と絶対を結合させることができる
(4)このようになる
(4)このようになる

Logic Pro Xのインスペクターでのfadeの設定のクロスフェードにはLinearつまりXと、LogarithmicつまりEqPと、S字つまりX Sの3種類があって、これを手っ取り早くCompressorのGraphで示したものがこちら。Compressor自体はThresholdを1:1の設定にしていて、すなわち無加工。
サイクル再生(ループ再生)させながらスクショ撮ったんで、見るべきはギアナ高地…エアーズロックでもいいんだけどガバッとせり出してる箇所。

X(クロスフェード)
X(クロスフェード)
X(クロスフェード)のつなぎ目
X(クロスフェード時)のつなぎ目
Xでカーブ50設定時
Xでカーブ50設定時
EqP(イコールパワー)
EqP(イコールパワー)
EqP(イコールパワー)のつなぎ目
EqP(イコールパワー)のつなぎ目
EqPでカーブ50設定時
EqPでカーブ50設定時
XS(S字)
XS(S字)
XS(S字)のつなぎ目
XS(S字)のつなぎ目
XSでカーブ50設定時
XSでカーブ50設定時

X設定時とX S設定時は2つのオーディオデータが重なってクロスフェードかかる部分で音量が落ちてるのがわかると思います。
ただ、個人的な意見を言わせてもらえば、楽曲のクロスフェードのときは愚直にLinearでクロスフェードかかっているほうが「いったん曲が終わってる」感がハッキリわかっていいと思います。

fadeではカーブの設定もできるんですが、クロスフェードのときはあんまり意味ないかもしれませんね。微調整程度かと。