DAW間のSwing値の咬合について

Logic内の Swing値 がらみの雑多

Logicの Swing値 はこのように決まっていて、Swing Aはスウィングなしと一緒。

Quantize settingSwing Percentage
Swing F70%
Swing E66%
Swing D62%
Swing C58%
Swing B54%
Swing A50%
Logic Pro Quantize parameter values – Apple Support (UK)
メインウィンドウおよび各種エディタ内のクオンタイズメニュー
メインウィンドウおよび各種エディタ内のクオンタイズメニュー
スコア用のクオンタイズメニュー
スコア用のクオンタイズメニュー
スウィング値の反映結果はこんな具合
スウィング値の反映結果はこんな具合

念のため書いておくと、ノリを出すために音符の間隔を調整する手法の1つがスウィング(バウンス、シャッフルとも)。
ほかに強弱や音符の長さだけでノリを出す手法もあります。
このSwing A〜Fのようにキッチリしたものでなく、「ラテン訛り(Latin Feel)」のように、人間の癖を再現しようというのが上の1つ目のスクショのいちばん下にあるグルーブテンプレートというやつ。本記事では省略。
以前雑に調べたようにラテン訛りはテンポによって変わる可能性があるので、テンポ無関係に一様に適用するグルーブテンプレートは今じゃそこまで信用できんなあと思ってます。あくまでリアリティの面では。

スコア用のクオンタイズメニューは少々独特で、「8,12」みたいなカンマの前が8分や16分などの分解能、カンマ後が3連系の分解能を示します。
7連符など割り切れないものは、┌n┐で表示させます。実際に7連符として鳴らすには次に記すタイムハンドルを使うか、「機能」メニューの「表示されているノートの位置を固定」。

1/32 Swingはできないのか、1/4 Swingはできないのかというと、今のLogicだとはじめに倍速で打ち込んでおいてタイムハンドルで調整するのが得策でしょう。

タイムハンドル(Option+Shift+ドラッグ)
タイムハンドル(Option+Shift+ドラッグ)

タイムハンドルの活用場面は色々あると思いますが、ピアノやオルガン、ハープのグリッサンドに使うのが定番。また近年よくあるハイハットやスネアのロールの入力にも活用できます。Option押しながらリージョンの端をドラッグするのも吉。
ついでなので。ピアノロールでのベロシティ調整は、ベロシティのオートメーションウィンドウを表示してマウスドラッグすると早い。Option押しながらのマウスドラッグだとスケーリングになります。

LogicのSwing設定を借りたソフト類

DrummerのSwing値とArpeggiatorのSwing

DrummerにもSwingの設定があり、Drum Kit Designer(つまり生系)を使うものはグルーブの影響を保ちながらスウィングするのでクオンタイズメニューのSwing値とズレが発生し、Drum Machine Designer(つまりマシン系)を使うものはクオンタイズメニューのSwing値とほぼ一致します。
再三記したとおり、Drummerトラックだとリージョンインスペクタにクオンタイズメニューが表示されないので、キツくクオンタイズをかけたいならMIDIリージョンに変換してやる必要があります。

Drummerのスウィング値(右下)
Drummerのスウィング値(右下)
Drummerのスウィング値(右下)
Drummerのスウィング値(右下)

MIDI FXのArpeggiatorのOPTIONSにあるSwing値はクオンタイズメニューのSwing値と一致しません
理由はおそらくコンセプトが異なるからでしょうけど、一致させてくれてもいいですよね。

ArpeggiatorのSwing設定(右下から2つ目)
ArpeggiatorのSwing設定(右下から2つ目)

Stylus RMXのTime Designer

Stylus RMXのTime Designer
Stylus RMXのTime Designer
Stylus RMXのTime Designer
Stylus RMXのTime Designer

今や古めのソフトの部類になったStylus RMXに搭載されているTime DesignerにはLogic由来のSwingがプリセットとして備わっていて、これらはLogicのSwing値と同じ結果になります。
ただしStylusをはじめとしてオーディオデータのトランジェントをMIDI扱いするソフトでは、そのトランジェントの在り方次第ではどんなに正確にクオンタイズをかけても期待したグルーブが得られない場合があります。

トランジェントマーカーがピシッとした位置に入っていなければ、クオンタイズをかけてもピシッとした音にはならない
トランジェントマーカーがピシッとした位置に入っていなければ、クオンタイズをかけてもピシッとした音にはならない

Ableton LiveのGroove

Core Libraryの中にGrooveのテンプレがある
Core Libraryの中にGrooveのテンプレがある
Logicのスウィング値と完全に一致させるにはこっちが正解
Logicのスウィング値と完全に一致させるにはこっちが正解

Ableton LiveにもLogic由来と見られるSwingのリストがCore Libraryの中にあり、リージョンにドラッグ&ドロップすることで適用できます。なおGroove反映済みのMIDIファイルとして書き出すときには各リージョンでcommitボタンをクリックしてやる必要あり。
このSwing値はどうやら実際にはLogicのSwing値と誤差があって、LogicのSwing値に一致させるためには、2つ目のスクショのように値をズラす必要があるようです。

協業時にLiveからMIDIデータを書き出してLogicに渡す、あるいは自己完結環境でLiveで途中まで作ったものを書き出してLogicに渡す、あるいはLiveをReWire状態で使ったとき、この不整合のせいでノリが合わなくなり得ます。
Liveはクオンタイズによってノート位置が移動したときにノートのカブりが発生しない仕組みである一方、Logicでは(スマートクオンタイズの設定になっていないと)クオンタイズによってノートのカブりが発生する仕組みになっているため、うっかりLogicでクオンタイズし直しちゃうとノリどころかフレーズ自体が変わってしまう可能性があります。
なので、LiveのLogic Grooveがいつ誰に作られたものかわかりませんが、なる早で修正してもらえると有り難い。

Logic 16 Swing 54とLogic 16 Swing 56ではたかだか10tickのズレだから大勢に支障なさそうに見えるのですが、Logicの各Swingモードが20tick違うことからするとその半分にも及びますし、BPMが遅いほどtickのズレが音に現れやすいもんですし、場合によっては位相がズレて「似たような音色を鳴らしているのに何か違う」みたいなことが起きちゃうんですよねえ。

Swing値の推奨値

蛇足。

よく上がる話として、Swingは中抜き3連じゃないのかという話題があります。スコラで何年も前に取り上げられてるので詳しくは割愛。
いわゆるジャズのスウィングは曲や演奏者、テンポによって少し異なり、かつ、フィルのときとフィルじゃないときとでも変わります。研究が進めば定量的なデータが示されると思いますが、今のところは感覚ですかね。
演奏者によってスウィング度合いが違うとき、生演奏時、次第に1つのグルーヴに収束していくこともあれば、複雑なズレが独特のウネりを生んで陶酔的になることもあります。このウネりはたぶん一人で打ち込みで生み出そうとしても難しいんじゃないですかね…。なので、そういうウネりを借りるにはループ素材みたいなのを使う。ゆえに、ループ素材がそもそも打ち込みであるってのが僕は好きじゃない。
Hip Hop、R&Bでいっとき流行ったDilla FeelのノリもSwingの一種かもしれません。

かつて僕が作ってた2stepなんかは、リズムを強調したいものであればほぼ3連(なのでフィル箇所に32分3連を使ったりする)、もう少しまったりな曲では60%くらいのSwingで作ってました。
が、DAWによっては細かく設定できないものもあって、結果、3連と60%とが混在したものもあったんじゃないかと思います。