ステレオ化手法 2019

これもずっと下書きのまま放ったらかしだった記事で、このテーマ、実は10年前にも書いてます。
昨日のTone2 Electra2.7に関する記事で触れたとおりモノラルソースをスピード感維持したまま ステレオ化 するのは地味に難しくて、元素材の状態に依存する面も大きいです。生録りのものはEQと定位とリバーブ(またはそれに準ずるもの)でやるのが順当なんですが、こと打ち込みのものはしんどい。

ソフトウェア自身にモードがあるもの

  • Ample Guitar M , L
  • Heavier7Strings
Ample Sound : Ample Guitar M
Ample Sound : Ample Guitar M

この2つはソフト内でモノラルとステレオが切り替えられます。

Ample GuitarはMS方式で収録されていて、S出力を切ってモノラルにする手法っぽい。面白い。

Heavier7Stringsのほうはダブリングサウンドを簡単に作れますね。
Guitar Rigにもダブリングっぽくできる設定ありますが、一つのソースに対して左右に振り分けるものなのでダイナミックな感じが出にくい。
また今ひとつ音色(ねいろ)のバリエーションが少ないので、自分好みの音を追求しようとしたら非ギタリストはギターアンプについての勉強が必要。

定位

自分なりの定石として、似たパートは左右に分けます。
たとえばシェイカーとハイハット、複数のシーケンスフレーズ、ダブリングの複数のギター。
少し古い曲調で作るなら、昔の録音物のようにドラムやベースを左右に寄せることもあります。

空間系のウィズス(Width)

ステレオ感は曲で何を描きたいかによります。描く対象や目的のある曲であればですが。
パートの重要度や役割で判断して定位やステレオ感を調整するのが理想。

Logic : Direction Mixer
Logic : Direction Mixer

一頃までは、曲に存在するすべてのパートが(たとえ隠し味でも)しっかり聞こえるのが正解と考えてましたが、(”騒々しくて”ではなく)聞こえないという表現もアリと考え始めてからはパート同士の組み立て方がちょっと変わったかもしれません。

完全にステレオ状態を100とした上で150くらいのステレオ感にするいわゆるImagerを使用した処理はマスタリング時以外でほぼやらなくなりました。

MS

iZotope : Ozone 7 Equalizer
iZotope : Ozone 7 Equalizer

レストレーションと演出以外でMSを用いることはまずありません。
ギタリストの作った曲でどうしても左右に振ったギターがデカ過ぎるから修正するってときや、低域に不吉な効果音を入れたいとき。

MとSとで発音タイミングをズラすってのを試したことありましたが、あんまり面白くなかったのでそれっきり。

Stereo Spread, Ensemble, Ring Shifter

Logicに備わってて他のDAWだとなかなか出せない効果群。

ベースの中広域にうっすらStereo Spreadかけることが多いです。Airの代わり。
アコースティック感強い曲調だとアーリーリフレクション使うことも。

Logic : Stereo Spread
Logic : Stereo Spread
UAD : RealVerb-Pro
UAD : RealVerb-Pro
Logic : Ensemble
Logic : Ensemble
Logic : Tape Delay のDiffuseモード
Logic : Tape Delay のDiffuseモード
Logic : Ringshifter
Logic : Ringshifter
Logic : Space Designer のアルゴリズミックモードでのショートリバーブ
Logic : Space Designer のアルゴリズミックモードでのショートリバーブ

EnsembleやChorus, Flangerを超遅周期で浅めにかける、かつてよくやった手法は、ウネらせましたと主張させるとき以外やらなくなりました。
Ring Shifterも最近ほとんど使わないけど、シャドウで流してるループが死にすぎないようにするのに使うことがある…かな。

リバーブ

どうも基本的に極端な考え方を自分はするらしく、がっつりかけるか、超うっすらかけるか。
いろいろ試して、結局先達の仰るようにリバーブはあくまでうっすら、効果を出すならディレイかエコーでって認識に落ち着いてます。
そうなると素の歌も素の楽器も完璧な表現内容である必要があります。これ、ちょっと前までは当然視していたけど、堅物でもいかんと考え直して今は「最終的にどう面白いものにできるか」を起点にして考えるようになりました(つまり、どう加工するかの前に、加工する/しないの選択肢を必ず経るように戒めた)。良いのか悪いのかはわかんないけど、堅物になるよりマシ。

あとここ1年くらいはアンビエンスの与え方、活かし方を考え直してます。

距離感

TDR : Proximity たまに使う
TDR : Proximity たまに使う

リバーブって、世界観形成には貢献するけど距離感には貢献しなくて、使うならせいぜいアーリーリフレクションか、帯域を削ったショートディレイ、もしくは単純にEQ。

Q狭めでポイント狙って穿つような調子で使ってます。
EQブーストするのは、2〜3kHz辺り持ち上げて意図的にうるさく聞こえさせるときくらい。

いま禁じ手にしていること

必然性がなければハース効果やエセ立体音響は使わなくなりました。TooMuchに聞こえるので。
ただ、常時、どうにか面白い使い方できないかは考えてます。


「耳が幸せ」「ヘッドフォン推奨」と言ってくれる人もいれば「耳がくすぐったい」(賛否不明)という人もいて、それなりにお楽しみいただけてるんだろうなと思います。
80年代後半〜90年代の、ステレオ感を活かしたり冒険的なミックスが行われたものを聞いて育ってきたり、あと00年代の立体音響の時代を楽しんできたせいか、ステレオ性に対する意識が自分はやたら強いのかもしれません。

いずれにせよ常時何かしら実験してて、面白いけど使い道がなかった手法など、気がついたらまた書き足すかも。