BTのSoundLabsとUMGによるAIプロジェクト “MicDrop”
また何ぞボイスの置き換えを行うAIですかと思ってたら、このSoundLabsって、BTのプロジェクトじゃないですか。BTについてはもう説明は要らないでしょう、長年、能力の高さを見せつけてきたアーティストでありクリエイターです。
そしてまた、AIに関して堅牢なポリシーを持つUMGとの共同プロジェクトとなっています。
今わかってる限りでは、ほかの競合サービスと内容が大きく変わるものではないのですが、大事なのは当然、これを音楽業界側がリリースしたものであること。
AI業界側が作るサービスと既存作品との摩擦がこれまでたびたび問題になってきましたが、音楽業界側が作ったものとなると「特定のアーティストの声を”無断で”使う」なんて問題が十中八九ありえないわけですね。
とはいえ、揺れる天秤の両皿に乗っているのがそれぞれ名誉とお金であると言えないこともない。
となると、お金を支払わなきゃならないなら、仮にアーティストが困ろうが無償のツールを使うと宣うユーザーがいても、まあ不思議ではありません。
しかしながら、ある種陰謀論的に考えると、上にも記したように音楽業界側がリリースしたこと、それもアーティスト(とパブリッシャー)自身が率いて、かつデータ提供を承諾した仲間に名誉以外のメリットを提示して同意に漕ぎ着けたであろうところに非常に大きな意味があるように思えます。早い話、AIであることが免罪符であると嘯く業界側に対する牽制になっている、と。
そしてもちろんデータ提供を承諾した仲間に提示した、名誉以外のメリットの部分にも関心が集まるわけです。
冴えたやり方だと思いますが、牽制するサービスを提供するにあたって当然コストは発生するわけで、それを背負ったBTの株も必然的に上がるというもの。あくまで音楽に携わる側からの株だとはいえ。
ノブレス・オブリージュ的なものなのかしらと思わなくもない(言い過ぎ)。
ユーザーにとっても、このサービスを通じて楽曲を作成したところでとやかく言われようがない、ってのは大きいと思いますね。スリルを味わう目的や敢えて挑発的なことをやる目的でAI音声を使う人にとっては当然物足りないだろうとは思いますけども。