Sonnox “Drum Gate”

ひっさしぶりに聞くメーカー、Sonnox。
生録のドラムのかぶりの調整に役立つ、エンジニアさん向けツール、Sonnoxの Drum Gate です。

打ち込みの世界だとキック踏んだ時にスネアが共鳴しないのは当たり前、むしろリアリティ重視でスネアがキックに共鳴する設計のソフトがありがた迷惑だったりします。
が、現実には絶妙に調整しない限り共鳴は起きるわドラムセッティング的にどうしてもフロアタムの音をマイクで拾っちゃうわで腕が試されます。

たとえばBFDなんかだとカブリをOFFれる
たとえばBFDなんかだとカブリをOFFれる

キックを踏んだことによってスネアのボトム用マイクに入り込んだスナッピーのじゃらじゃらやら、スネアを叩くことによって共鳴してしまったタムやらを、熟練のエンジニアであればもしかしたらツールなど使わず経験則を元にちゃっちゃか処理しちゃいます。
いわば、それをソフトの力でやってしまうのがDrum Gateです。
ただ、まあ、エンジニアの手による「処理」ってのは適正な値を見抜くってだけではなくて、場合によってはそうしたエラーを味わいとして活かしたり、そもそも余計な鳴り方しないようにテクニシャン(職名)を呼んでチューニングしたりと、このツールじゃ出来ないことも含まれてます。
ソフトが不出来って意味じゃなくて、ツールは従えてこそですよって話。

さてDrum Gateは最初から、キック、スネア、タムの音の響き方をデータの蓄積として持っていて、ユーザーは音源に対してまずキックなのかスネアなのか…を指定し、残す余韻を適宜調整し、音の強弱を設定すれば、完全にではないけど求める音に近い結果をあっさり得ることができます。
Gateとはいうものの、スペクトラル・トランジェント・エンベローパーみたいな解釈で、パーフェクトにできるツールってよりも時間節約用のものと考えたほうがよさそう。

本来はスネアのマイクのみとかでデモするべきでしょうけど、Sonnoxのデモ見ても聞いてもなんだかわかりにくい。
ここではドラムのミックスバスに対してDrum Gateをかけてみました。
1つ目がプラグイン自体をオフったもの、2つ目はプラグインをただオンにしただけのもの、3つ目は対象をスネアに絞ったもの、4つ目はディケイを調整したもの、最後はLevellerをオートでセットしたもの。
画面はわかりにくいけど機能はそれだけ。細かく設定するとなるとちょっと難しいかもしれません。
で、これをプラグイン内でMIDIデータとしてキャプチャーしてDAWにドラッグして貼り付け、トリガー信号として使うこともできます。

このソフトが踏み込んだのはたしかに未踏の領域で、変態的ドラムセッティングに仮に対応し切れないとしても、機能の提案としては大きな価値があると思います。
ただ、あくまで個人的な印象として、ドラムに限定せず「望まない音を省くツール」といったツールは今後他社からもっと安価でリリースされるかもしれないので、それを待ってもいいのかもなと。
既にRXでは、ボーカルマイクが拾うオケのヘッドフォンリーク音を除去する仕組みを備えてますよね。
昔からある、オケを逆相で混ぜてアカペラを抜き出すような手法と違って、さすがにこうしたBleedやLeakは逆相云々でどうこうできるものではないので、AIやらがもっと活用される場面と思われます。
RXもそうですが、スペクトラムを利用した処理は設定が過剰だとやっぱりヘロヘロに聞こえるので、ソフトウェアの出来、そのプリセットの出来、レコーディング状態、技術者の耳の感度が試されることになりそう。