sonible “pure:deess” – シンプルディエッサー

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sonible “pure:deess”

PURE:DEESSの詳細情報ページ
SONIBLE社製 プラグイン・エフェクト 「PURE:DEESS」の製品詳細情報ページです。

sonibleからpureシリーズの新作、pure:deessが先ほどリリースされました。
sonible製品は基本路線がsmartシリーズで、その言わば簡易版がpureシリーズに当たります。

情報
  • Windows, macOS対応
  • VST, VST3, AU, AAX
  • 定価€49.00、イントロ価格€19.00
  • レイテンシー 約70ms

機能、操作性

なので、摩擦音、歯擦音の聞こえ方に大きなばらつきがある場合や、低域にまで出しゃばるような過剰な破裂音も処理したい場合など、処理対象のバリエーションが広く、細かい設定が必要でならばsmart:deessを使えばよく、細かいこと抜きにしてざっくり処理したいならpure:deessでいい、という捉え方でいいと思います。
本来はその辺りも含めた動画が上がっているとよいのですが、どうもpureシリーズに関しては動画を作成する意欲がないのか、pure:unmaskの動画も今やプライベートモードになっていて視聴できないありさまです。

個人的にはiZotopeのカタめな音よりsonibleの少し遊び(いい意味でも悪い意味でも)のある音のほうが好きなんですよね。聞いてて疲れにくい。

ディエッサーはなぜ必要か

Sonicwireのブログのほうにも軽く記してはいるのですが(寄稿とは違うんだろうな)、ディエッシング周りのことをこのブログでは場当たりでしか書いてきませんでしたね。
ディエッサーはコンプやリミッターなどいわゆるダイナミクスエフェクトの一種で、ざっくりいうと耳障りなサ行の音量を抑えるもの。

目的と進化

なぜ抑える必要があるのかというと、こういうこと。

  • サ行のこいつらは波形で見ると音量小さいくせに充分聞こえる(発音効率が良すぎる)
    • そのくせ、ほかの子音よりも発音時間が長め
    • 良いマイクであるほど、がっつり聞こえる
  • ポップガードは破裂音を抑えるだけで、サ行の抑制にほとんど寄与しない
  • なのでボーカルコンプかけると、がぜん必要以上に持ち上がって耳障りになる
    • ハモリやダブリングが加わるとさらにうるさくなる

ディエッサーのない頃は、DAWのオートメーションを使ったり、波形を直接破壊編集してサ行の子音のみを小さくするってことをしていましたが、膨大な時間と労力を必要としました。なぜかというと、こういうこと。

  1. 実際に聞きながらじゃないと、どの程度サ行の子音の音量を抑えていいかわからない
  2. 箇所によってサ行の抑える度合いを変えないと、理想的な歌(の発音)に仕上がらない

そこでディエッサーが登場し、摩擦音を検出してその箇所だけ音量を抑制できるようになりました。が、典型的なディエッサーは音量を一定量抑える仕組みに過ぎず、上記2には充分に対応できず、理想的な結果を求めるにはやはり多少のオートメーションが必要でした。
改善版の現在標準(とされる)のディエッサーは、音量に対して一定比率で抑える仕組みになっています。
とはいっても、色んな声質やクセを持ったボーカリストがいて、たとえば英語っぽい発音を好む人だとサ行の子音がだいぶ強めに出ますし、逆に調教されすぎてサ行の子音がほとんど聞こえない人もいます。あと日本語の癖が抜けず、英語詞の単語ごとの末尾無声子音がほとんど発音されていない人なんかもいます。英語やフランス語などの外国語ではまた子音の強さが日本の発音とも違います。マイクの特性や、Recコンプの設定状態も影響しますね。
なので、現在標準(とされる)ディエッサーにおいても、ディエッシングの強さや対象帯域の選択などにある程度の自由度が備わっている、ってわけです。

AIによるディエッシングってのは、これらの面倒をなるべく自動でやってもらおうという、正直、コンプやゲートと同じくらい理想OF理想な用途と言えると思います。

対象

ところで、ざっくりと「サ行の子音」と書きましたが、一般に「摩擦音に対して処理」と説明されますね。だけど摩擦音の定義ってわりあい広くて、だいたいこの辺。

  • サ/ザ/シャ/ジャ行およびスィ
  • ハ/ヒャ行およびファ/フィ/フェ/フォ

で、破裂音は、だいたいこの辺。

  • カ/ガ/キャ/ギャ行
  • タ/ダ行
    • チ/ツは除き、ティ/ディ/テュ/デュ/トゥ/ドゥを含む
  • バ/パ行

破擦音(破裂音+摩擦音)は、だいたいこの辺。

  • チ/ツ、チャ/チュ/チェ/チョ

音韻(実際の発音時に起きる現象を含んだもの)としては文字にできないものも含めてたくさんあると思いますし、外国語を含めるともっと増えます。
このうち、ディエッサーがターゲットとしているのは摩擦音の中でも「サ/ザ/シャ/ジャ行およびスィ」および破擦音で、前者を歯擦音と呼ぶこともあります(最近は摩擦音でなく歯擦音と表記されることのほうが多そう)。
要は「摩擦音」と言っちゃうとハ行も入っちゃうけど、これらは対象としない。なので、歯擦音と破擦音がディエッサーの対象となりますよって話ね。
そのハ行も含め、歯擦音と破擦音以外の破裂音や摩擦音も、その発音が極端に強ければ、ある程度ディエッサーには検出され、処理されることにはなります。が、副次的なものなので、たとえば「か」のkの発音を調整したくてもディエッサーでどうにかしようというのは無謀です。

ディエッサーを、個々のボーカル/ナレーショントラックに挿入する必要は必ずしもありません。特に本製品のようにAIを利用したものであれば、もしかすると負荷が多少大きいかもしれないので、複数の個々のボーカル/ナレーショントラックをミックスバスにまとめ、一括でディエッシングさせる手もあります。

ボーカルないしナレーション、つまり人間のボイスでもって学習を進めた、本記事のpure:ess(あるいはTechivationの製品)以外ならば、人間のボイス以外を対象とした使い方もあります。アコースティックギター演奏時のフレットノイズ、少し騒々しいドラムのシンバルなどを対象として、ディエッサーを使用する場合もありますし、サイドチェーンを使用することもあります。ダイナミックEQの類がそうです。


思いの外、本編以外のほうが長くなってしまったので、いずれ単体記事として分離させるかもしれません。