Sonible “prime:vocal” – Recを高品質化、解析時間は辛抱

Sonible “prime:vocal”

高機能ながら、ハイテクさを前面に押し出すiZotope製品に人気面で今ひとつ競えていないSonibleですが、新作として、ボーカルレコーディング時に生じるさまざまな問題をいちどに解消するという謳い文句のprime:vocalをリリースしました。
いやホント、smart:eqとsmart:comp、pure:unmaskは懐に余裕あるなら持っといたほうがいいです。

PRIME:VOCALの詳細情報ページ
SONIBLE社製 プラグイン・エフェクト 「PRIME:VOCAL」の製品詳細情報ページです。

動作環境がなかなかシビアなので、トライアル版でしっかりチェックしてから導入の検討が必要です。

情報

  • Windows, macOS対応
  • ARA VST3(Beta), ARA AU(Beta), スタンドアローン
  • OpenGL Version 3.2+
  • 定価€179、イントロ価格€119

機能、操作性

AIによるノイズ除去、クロストーク除去、部屋鳴り、ディエッシング、帯域バランス調整、スペクトルバランス調整、レベルライディング(歌唱の音量差を軽減)といった機能を搭載しており、非常に良質な結果を出力します。
ここまでは問題ないのですが、注意を必要とする部分が多々あります。

認証

うちではプラグイン版の認証が通ったのにスタンドアローン版だけなぜか認証が通らない。どうもスタンドアローン版だけiLokを見に行ってくれないんですよね。NFRだから?
これが明確なバグであれば、早急に対処されるでしょう。

241219追記

どうもオーディオファイルをロードするまで、ライセンス未登録状態で表示されるみたい。

241226追記

sonibleによればバグとのことで、次のアップデートで改善されることを待ちたい。
ただ、使用上は今のままでも別に問題なさそう。

解析時間

解析結果は非常によいのですが、なにせ解析時間が長い。おおむねそのオーディオファイルの実時間分の解析時間を必要とし、解析中は解析完了部分だけ音を出すということもなく、終わるまでただじっと待たなければいけないのが少々しんどい。
解析精度の設定がないので現状は仕方ありませんが、たぶん今後何らかのアップデートがされるのではないかと。もしくは、GPU Audioと提携してくれないものか…。

ARA

プラグイン版はARA動作します。VST3の動作は非常に良好ですが、LogicはARA動作させるためにRosettaでの起動を必要とします。そして少々不安定。
Betaが外れればもう少し安定するように思いますが、上述のように解析を待たされた挙げ句に結果が鳴らないって現象がうちでは発生し、ぱっと見、これまでのSonible製品には当然のように備わっていた解析し直し機能が見当たらず、途方に暮れ、そして最終的には断念しました。
これはダメだ、うちじゃ危なくて使えないし、今どきRosetta環境なんて正直勘弁願いたい。

LogicのARA自体がまだ不充分なので、もしも導入するのであれば、スタンドアローンとして使用するか、何らかのVST3対応のDAWを別途用意したほうがいいかもしれません。

241219追記

β版とのことで改善されると思いますが、DAW上のトラックにオーディオファイルを置く前にプラグインをインサートすると、「ARA版を使用せよ」と警告が表示され、以降当該プロジェクトを閉じるまでARA版をロードできなくなるみたいです。

241226追記

また別のバグ(現段階では仕様)になりますが、Studio OneのようにARAプラグインをインライン表示させられるDAWでprime:vocalを使用した際、そのまま終了するとプラグインのウィンドウサイズがインラインのときのまま固定されてしまうようです。つまり、このあとLogic等ARAプラグインをフロート表示させるDAWでprime:vocalを読み込むと、横長になったまま直せない。

ワークアラウンドとしては再度Studio Oneに戻ってインライン表示を解除してウィンドウサイズを調整して終了させるほかありません。この仕様もいずれ修正されるでしょう。
なお、この問題に関してスタンドアローン版を介して解消することはできないみたい。スタンドアローン版はウィンドウサイズを参照するが、スタンドアローン版終了時のウィンドウサイズを保存しないようなので。

コムフィルタ状態の軽減は不可

動作確認に使用したボーカル録音ファイルの一つに、何らかのブース内設備に声が反射したのかコムフィルタ効果が発生しているものがあり、いつしかこの問題を解決するソフトが出てきてくれないもんかと思っていたのですが、残念ながらprime:vocalではダメでした。

レベルライディング機能はありがたい

しばらくボーカル録音と縁遠かったので、機会があればいずれ導入しようと思っていたレベルライディングが搭載されているのはありがたいですね。いくつもプラグインをインサートしなくて済みます。まあ、いちばんありがたいのはMelodyneに搭載されてくれた場合ですが。


最大のネックは解析に要する時間かなと思います。
それを除けば、歌唱時の言語による差もさほどなさそうですし(以前記したように、海外で調教されたAIにボーカルを処理させると、日本語の子音が外国語っぽい発音に補正されてしまう場合がある)、個人的には充分な印象を受けますね。
あとはDAW側がその環境(特にARA)をしっかり整えてくれることを切望します。