この間のライブで評判がよかったやつ

急きょアレンジすることになってざっと作ったのが妙に評判よかったので、オケデータなどお見せします。ライブ見てない方には何のことやら…でしょうけど。

全体像
全体像

まず、こちら全体像。
深めのリバーブをかけたピアノと、トーンをまとめるパッド音色と、拍頭の目印になるベルと、電子系のパーカッション、ディストーションをかけたエフェクティブな音、という構成。

テンポ出し

テンポや拍を歌唱者と演奏者の間でどう共有するか。アレンジ上、必ず考えなくてはいけないポイントです。

この曲はAメロとBメロで歌が先に入り、サビでは歌とバッキングが同時に入ります。歌がイニシアチブを持ち、バッキングは歌に付いていけばいい。つまり本来オケなしで演奏できます。
ですが歌唱者がベストパフォーマンスを発揮することを考えるならば少し話が違って、充分な空気を醸成することでベストパフォーマンスが得られるならオケを用意したほうがいい場合もあると思います。
言うまでもなくオケはプレイヤーの感覚を無視して奏でられ、勝手に進行していきますんで、テンポや拍の目印はオケに埋め込んであげなきゃいけない。
根本的な話として、そのライブが歌唱者の名義での出演であるならば、カッコよく歌う歌唱者に聴衆の視線を誘導するにはどうすればよいか/何をしたらダメかを伴奏者は考えるべき。だからこそ、入るタイミングを確認するために歌唱者が目線を動かさなきゃいけないような編曲や演奏は望ましくない(イヤモニのみにクリックを返すなど目線を動かさず済む方法が使えるなら、むしろやるべき)。
※ちなみに目印なしで歌えるかどうかは、どちらかというと技術より性格次第。

今どきは前奏なしの曲が主流なのでクリックなしなら次の手法が有効かな。

  • BPM60にしたので腕時計の秒針の音でテンポを把握できる(BPM120, 90などもこれを応用できる)
  • PAにディレイを設定してもらって、マイクに小さく舌打ちでもすればディレイ音でテンポを把握できる
  • 曲冒頭に効果音を付けてカウントを紛れ込ませとく
  • フィル的なものを冒頭に付ける(いちばん安全)
  • 音を切るタイミングを目印として使い、たとえば4分のディレイをかけた逆再生音を3拍目で切ると4拍目が得られる。結果2拍分のカウントを見つけられる

今回は不測の事態に備えて4つ目の手法取りました。
カウント恐怖症のドラマーの人も読んでるかもしれないので一応書いておくと、サビを思い出すのがテンポ出しには最適。

それから曲中。
ベルのパートにも4分音符のディレイかけてて、でも露骨にしたくないので自家製のボヤけたベルの音を使ってサブリミナル的に働くようにしてます。
ただ曲に抑揚つけるにはずっとベルが鳴ってると邪魔なので、曲中、他のパートにクリック役をバトンタッチさせてます。

パッド音色とベル音色は自家製
パッド音色とベル音色は自家製

レコーディング予定曲であるなら、クリック代わりのパートなどないほうがせせこましくならず僕は好きです。ライブでベストパフォーマンスを得るために今回はこうした、って話。
だいぶ昔、BPM連動でLEDが光る再生マシンを使ってたときは、再生ボタン押してLEDを横目で見ながら「せーの」でオケと一緒にイントロ弾いたりしました。

ノイズ音

手法的に新しくはないんですが、これが役に立つ人もいるかもってことで、トランシーバー的なノイズ音パートの作り方。

Icarusの音色設定
Icarusの音色設定
ノイズパートはこんな感じ
ノイズパートはこんな感じ
前に出てこないように削る
前に出てこないように削る

Icarusの中でノイズにバンドパスかけてサンプルレートを8kHzまで落として帯域を狭め、Speakerphoneでフィルタかけたついでに少しエラーを発生させ、さらにEQで帯域削って後ろに引っ込めました。
Icarusの音色は少し音程感が残るノイズ音。クリック役なので、前に出過ぎず、かといって拍の目印が必要ってことでEnveloperでアタックを強めにつけてあります。

ディストーションをかけたエフェクティブな音

断線したケーブルで鳴らしたようなシンセ音は、こんな設計。

グラニュライズして、Speakerphoneのディストーション(Waveshaper)使った
グラニュライズして、Speakerphoneのディストーション(Waveshaper)使った

音色作り込んでる時間があまり無かったので、他の曲で使った音色を少し加工して、Speakerphoneのディストーションを使ってます。要はWaveshaperなので、Melda Production辺りのを使ったり、いっそAlchemyで作っても似たような感じになるのではないかと。

それで、これに加えて、”このフレーズを逆順にMIDIで打ち込んだもの(MIDIトランスフォームを使う)に対してショートリバーブをかけたものをいったんバウンスしてもう1回逆再生させたもの”を一緒に鳴らします。
そうすると、よくホラー映画の怖いセリフで見られるような、フレーズの前に逆再生リバーブが付くってのができるわけですね。手間はかかるけどオーソドックスな手法です。
元がオーディオデータの場合は逆再生してリバーブかけてもう1回逆再生すればOK。

和声

ブリティッシュ系やアイスランディックな、ドミナントを避けるコード進行なので最初の段階で提案されていたドミナントコードは排除しました。
結果、ピアノパートは僕が近年よく使う9th、11th(マイナーコードで)、#11th(メジャーコードで)、♭13th(マイナーコードで)、13th(メジャーコードで)で飾り付けしたオープンヴォイシングを基調にしています。
今さら別段珍しくもないか。

最初手弾きで録ったがタッチのバラつきが気になったので全部一定にした
最初手弾きで録ったがタッチのバラつきが気になったので全部一定にした

ピアノは曲のカナメで、この日使ったRoland FA-06のタッチが僕は好きではない。それは僕がピアノを習ってきてないのが最大の理由なんですが、タッチのバラつきで曲が台無しになるのは避けたいので潔く打ち込みで鳴らしてしまうことにして、空気を作るのに徹したのが当日。
オケのピアノ音色はKeyscapeで、「ピアノの森」みたいなポートレイトが表示されるやつ。

残念なことに、こういった、歌唱者のベストパフォーマンスを意図した演奏形式に「演奏者が楽をしてる」となじられることはいまだにあって、純粋に歌唱を堪能しに来てくれてる人の前だと「どうやったら歌唱者のベストパフォーマンスを聴衆に提供できるか」だけ考えられてだいぶ気持ちが楽ですね。
面倒くさそうな客がいるときは、個人的には抵抗あるけど陶酔してるような所作でパッド音色弾くようにします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください