Sampleson “Predictor”

SamplesonからrePEDALに続く(機械)学習系の製品、Predictorが登場。「予測する者」って意味ですね。
実はこれを書いている今は発売前のEA(アーリーアクセス)版の提供を受けてすぐの状況。
機能、操作性
初見で何ができるのかさっぱりわからないビジュアルですが、バブルの浮いた右上領域をマウスポインタでつついてみましょうか。どうも一定のルールに従って気ままに音が鳴らされているようです。
MIDIキーを押してみると、押しているMIDIノートと(ある程度)無関係に音程が鳴らされます。これ、実は同様にPCキーボードでも鳴らせます。

こうした機械学習やAIは「ある種の統計」と考えるのがわかりやすいですかね。もちろん切り口次第で何とでも考えられそうだけど。
Predictorは、基本データと分析アルゴリズムのセットをもとに、音域を横軸として音程の出現頻度(ベロシティも含まれるのかは不明)を分析後にビジュアライズし、マウスのクリックを刺激として受け取るとその一帯に属するノートを鳴らすものと見られます。
オーディオデータだと音程情報やトランジェントの分析に時間がかかってしまうので、本製品でMIDIを学習対象としたのは賢明だと思います。もちろんオーディオデータを対象とした場合にはまた別の用途の新製品を考えられそうですが…コントローラブルなグラニュラーシンセと言えるかな。
予測モデル(アルゴリズム?)は3種類備わっており、おそらく手持ちのMIDIデータを放り込んだときか、分析後、鳴らすタイミングで何らかの重み付けとして機能するのではないかと思います。
ルートノートも調の指定も要らない
ずいぶん褒めるから疑われてしまうかもしれない。お金をもらって書いている提灯記事ではないですよ。
画面下部ではトライアドと単音とを区別して鳴らすこともでき、また気ままに奏でたものを記録してMIDIデータとしてDAWにドラッグ&ドロップすることもできます。
音色はピアノとストリングスとシンセを内蔵。
基本的なアイディアは、”適当な鍵盤を鳴らしてもイイ感じに音楽を奏でてくれる玩具”の考え方に近いのだけど、そこに自由度が加わったお蔭で格段に価値が高まっています。つまり良質なMIDIをデータとして備えさせれば(そして流動性が備われば)、自分の発想にない楽曲がまっさらの状態から生まれるのであって、思いのほか画期的だと思います。
コードの制作支援、メロディの制作支援ソフトがこれまで数多くリリースされてきてますが、本格的な作曲用途への対応を意識するあまり本末転倒に複雑化してしまっているものが最近特に多い。
たとえば同じ音程を繰り返すのを幾つまでに制限するとか、スケール外の音をどこまで許容するか、何小節分作成するか…。これらをユーザーが定義しなくてはいけないとなったら、音楽経験のない人は意気消沈するでしょう。
そうしたパラメータチックなものはPredictorになく、生成は、参照させるMIDIに専ら依存します。生成するフレーズの長さは自分次第でいくらでも長くできます。
ほぼ何の設定も要らないまま、気ままに鳴らしただけでそれっぽくなる、っていうのは理想中の理想ですよね。
なお、参照させるMIDIデータとしては、やはり調性と無関係なリズムパートを取り除いたものを用意したほうがいいでしょう。
MIDIデータ中でリフのように極端に繰り返されるものは、もしかすると重要度を下げるよう細工されているかもしれません。
J-Popのように転調(部分転調を含む)や経過音の多いMIDIが素材として適しているかどうかって問題もあります。
うちで導入するとしたら、やはりざっくりコード進行ができたものに対して、自分の手癖にないようなメロディを生成させてみる(リズム面には手癖が現れるでしょうけど)とか、ある程度調に則ってざっくり演奏したMIDIを放り込んでリミックスのように生成してみるとか、そういった用途になるだろうと思います。
AIなり自動生成なりに作り手がどう介入(指示を含む)していくかって観点からすると、新鮮な考え方の製品だと思いますね。