Roland Cloud “D-50”

Roland CloudにD-50登場です。真打ち登場。

現在進行形で新製品の発表が行われていたり、PropellerheadのRB-338が短くも長いその生涯を終えたりと、慌ただしいRoland周辺。

Roland D-50 Linear Synthesizer VSTI Now Available Via Roland Cloud

80〜90年代の日本の音楽が一部海外の連中にハマっとるのですが、ひときわ華やかな音を担っていたのがRolandのD-50、そんな印象がありますね。

ちなみにこちら、音色のリスト。実際にはこの6倍。

あの頃のあの音が出るか

FA-06を僕が買ったのは2014年で、地元札幌で妙に海外AORのカバーが流行ってた時期。そう、DX-7もM1もFairlightも特徴的なサウンドを提供してくれるけれどもRolandの音源は曲全体を覆う空気を醸成できる特異な存在だったので、AORカバーやる際には外せなかったんですよね。その折に登場したのが良くも悪くも名機を踏襲した(悪く言えば”代わり映えしない”)FAシリーズ。

思ってたのとは違う響きであることに落胆したその傷が今回ついに癒えるときが訪れたことになります。
Rolandの販売員さんは「76鍵は今どき売れないからFAシリーズでは出さないことになった」と言ってたのに何故かついでにこのタイミングで登場。軽くイラッ…。

サードパーティ製品はヴィンテージ?ジェネリック?

UVIのSynth Anthology 2(Synth Anthology 2 – Hardware Synthesizer Tour de Force)やIK MultimediaのSyntronik(Syntronik 2)も興味深いんですけどね。
Alesis AndromedaとEnsoniq Fizmo、KawaiのKシリーズ、YAMAHAのSY99って名が見えたら、「おっ」ってなるじゃん?
当時のサウンドをあの手この手でポスプロ的に再現できないかと考えたとき、チップチューンもそうだけど、そのハードウェアのスペックも再現されないとなかなかリアリティが得られなくてですね。これ、わかる人だけわかればいいけど。
Anthology 2やSyntronikみたいに、メーカーを跨いだサウンドを収録している場合、十中八九、ただ当時の音をサンプリングしただけであって再現じゃないだろうなと。

Roland Cloud D-50のUIと質感

Roland Cloud Managerを見たら実はいろいろ出てたんで、この機会にいろいろ入れてみました。

Roland Cloud Manager
Roland Cloud Manager
Roland Cloud D-50のエディット画面。
Roland Cloud D-50のエディット画面。
Roland Cloud D-50画面。パッチは6つ。それぞれに64音色。
Roland Cloud D-50画面。パッチは6つ。それぞれに64音色。
Roland Cloud D-50画面。パッチは6つ。それぞれに64音色。
Roland Cloud D-50画面。パッチは6つ。それぞれに64音色。
Roland Cloud D-50のエディット画面。
Roland Cloud D-50のエディット画面。

実機を持っていないのがほとんどなので「ふぅ〜む」としか言えませんが、独特の、低い音域を弾いても腰が浮いてる感じ、80〜90年代のニューウェイブやAORの記憶を蘇らせてきます。 妙に低域に存在感のある濃いめのリバーブも郷愁を誘いますね。

ともあれ、特殊な音源格納/再生方法だったものがソフトシンセとして再生可能になったわけだから、これはいろいろ滾ってきちゃいます。
ついでだから、たしかD-10の最後のほうのパッチに入っていた”Busy Office”だったかな、「何に使うねん」って音もサルベージしてあげてほしいな。なんかね、ああいうのこそ、「…どう料理してやろうか」って気分になるんですよ。

再生される帯域は16kHzが天井で、Anthology(紛らわしいけどUVIのでなくRoland Cloudのほう)がナイキストまで頑張って出力できてたことを考えると「ん?」という気分。
でも、まあこれこそ当時のスペックの再現かもしれないので整音方法を考えることにします。
先日MacをメンテしたときにRolandのフォルダにOggファイルがあったので圧縮ファイルでローカルに保存されているのかなと思ったのだけど、16kHzが天井になる原因はそこではない

アナログ回路を経ていないためか期待ほどのザラザラ感はなく、ややナマクラな印象(初代プレステのインタポレーション手法みたいな)ですが、基本的にお行儀のいい音。
そのぶん、いまどきのミックスに馴染ませようとしてもおそらく埋もれてしまいそうですね。
隠し味や空気担当にうってつけとはいえ、いまどきは隠し味が全然隠れてないくらいビキビキさせるミックスが主流なので、メインストリーム系の音楽を作る人にとっては扱いにくいかもしれない。

余談:もっとLo-Fi

いま関わってるお仕事でやはり90年代の内蔵音源っぽいサウンドに仕立てるのをやってみてます。
今のDAWってある程度のクオリティーの音色で曲が作れてしまうので、先ほど書いたような古めのハードウェアのスペックに寄せて作るのが地味に地味に大変。
単にサンプリングレートやビットレートを下げたところで質感は近づかなくて、場合によっちゃ狂気じみたショートループを作成する必要が生じたりします。
リバーブなんかも処理能力をいかに節約するかって時代の音にする必要があるので、金属板、それこそプレートリバーブの質の悪いものに近づけるべく、タイムの違うディレイをフィードバックさせたり。
いずれ、こうした、あえて質の低いDSPのシミュレーターが草の根に登場しそう。
というか、僕がそれを欲しい。
ついでにいうと、ReaperのJSプラグインのADPCMシミュレーターはとてもよく出来てるので、次回また同様の発注があれば試してみます。
手間はかかるし、あまりにニッチだけど、面白いものできりゃ僕はそれでいい。

今回は結局、いつか故意にやってみようと思ってた、Studio Oneの純正音源で作るってのを試して、イイ感じにLo-Fiになったことをお伝えしておきます。
レンジが狭いのでマスタリングがすげー難しい。

いろいろ余談が過ぎたけど、Roland Cloudは今回も俺得だったというお話。

170625追記
Studio One 3ではD-50のVST3が起動を阻害しているようだ。
急いで仕事しなきゃいけないときに限ってこれだ…。